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2024年の読書を振り返り / ポッドキャスト『投資家の日常は、いとをかし。』 #24 2024年12月 後編テキスト版

以下はこちらのポッドキャストのテキスト版です。

前編はこちら



2024年の読書を振り返り

renny:このポッドキャストでは前編での吉田さんのグルメのお話とか、投資以外の話題もいろいろ散りばめながらやってまして、たびたび取り上げているテーマが読書です。吉田さん、2024年のご自身の読書という意味では、どんな振り返りをされますか?

吉田:投資と関係したところだと、今年は年明けから6月、7月ぐらいまで、ものすごい勢いで資産が増えていったっていうこともあり…

renny:毎日それは為替の影響もあってっていうことで?

吉田:そうですね。円安と株高で金額ベースだと過去最高ぐらいの感じで。でも前編でお話した通り、自分は何にも投資で動いていなかったので、なんか不気味で。そんな状態が続いたので、そういうときってなんか古典を無性に読みたくなるのが私の習性でして。やっぱりそういうのが響くのかな。

renny:例えばどういう古典ですか?

吉田:どれがはまるか分からないので、いろんなものを読み返していって、今年はモンテーニュの「エセー」が一番良かったかな。

renny:それはどういう部分が、フィットしたというふうにご覧になってますか。

吉田:ちょうど当時の心境にフィットした部分を紹介しますね。

「しょせんは偶発的な、自己の外部にある幸福は、われわれにとって快適であるかぎりにおいて利用すべきではあるとはいえ、それを自分の主要な土台にしてはいけない。」

モンテーニュ「エセー」孤独について

吉田:自分の外部の幸福っていうのは、どんどん株価が上がって資産が増えていってるように見える。それはお金を使う分にはいいけど、それが自分の幸福の土台だと思っちゃいけないよ、みたいな言葉ですね。

renny:そうですね。証券会社の口座にある数字が増えたところで、それが幸福に繋がるかはまた別問題ですからね。

吉田:そうなんですよ。

renny:そういう意味では数字が増えること自体は悪いことではないと思いますし、ただ上がりすぎてるというような、怖さみたいところっていうのはあったりしません?

吉田:増えすぎて怖いけれども、そこから減っちゃってもマイナスにはならないかな、ぐらいの感じですかね。

renny:怖いから現金に戻すかって言ったら、それもちょっと違うかな、っていうぐらいの居心地感ですかね。

吉田:そうですね。

renny:僕はその投資の本でいくと、このポッドキャストでも取り上げたかと思うんですけど、清原さんの本です。あれが印象的だったかなと。本屋さんに行くと、NISAの関連本がうじゃうじゃ並んでる中で、異彩を放ってた印象です。なんかすごい極端な投資やってらしたんだなっていうのと、これは他の方とのポッドキャストでもお話したんですけれども、ショート、空売りは儲からないんだなっていうのがよくわかりました。他にもいろんなジャンルの本を吉田さんお読みかと思うんですけれども、他にどういった本が2024年に印象に残ってらっしゃいますか。

吉田:これは10月のポッドキャストで紹介した本なんですけど、本村凌二教養としての世界史の読み方」。2017年に出版された本が今年文庫化された本です。今年、200冊ぐらい本を読んで、その中から1冊おすすめを選ぶとしたら、この本をおすすめしたいです。

renny:10月のポッドキャストでもお話していただいてますけど、すいません、僕まだその本読めてないです。改めてここを読んどけ、みたいなお話をお聞かせいただければ嬉しいんですけれども。

吉田:やっぱり歴史は全て現在起きていることによって評価が変わり続けるものだよ、っていうのが一番印象的な話でしたかね。

renny:同じ時代に生きていても、その評価は将来的にどうなるのかわからないっていうことなんですかね。

吉田:そうですね。

renny:そういう意味では今のいろんな紛争とか、プーチンがやってることとか、100年後にどういうふうに見られるのかは、そのときどういう世界になってるか次第なのかもしれないですよね。歴史の評価ってたぶん何年か先になってみないと、どういう評価になるかわからないっていうようなところはあるんでしょうね。

吉田:そうですね。日本史でも結構コロコロ変わっていて、最近一番変わったのは、鎌倉時代の北条氏に対する評価っていうのが最も変わったかなと。

renny:それは大河ドラマとかの影響もあるのかもしれない。

吉田:大河ドラマの直前、2、3年ぐらい前から急に承久の乱の再評価みたいな本がたくさん出版されはじめて。それ以前は天皇に歯向かった一族ということで、明治時代頃からかな、悪の象徴みたいに扱われていたのが、21世紀になってから研究され直して、武士が天皇に勝ったのが日本の転換点だったみたいな言われ方をされるようになったんですよね。(補足…2018年出版の坂井孝一「承久の乱 真の武者の世を告げる大乱」が印象的、北条氏と同じ用に近年、蘇我氏に対する見方も変わっている)

renny:鎌倉時代が終わる頃も、後醍醐天皇が出てきて朝廷が復権していたから、そういう背景を受けて、いろいろ歴史の評価が変わるんでしょうね。歴史ってやっぱりどこか脚色というか、誰かの目線から捉えてるところがあるので、本当にどうだったのかは分かりづらいのかなと思ったりはしますけどね。

吉田:そうですね。その時々の時代の空気によって捉え方が変わっていくので、全ての歴史は現代史であるみたいなところに結びつくのかな。

renny:なるほど。今年の正月休みは長くなりそうなんで、本はちょっと読めるかなとは思っているので、何とか時間を見つけて本村さんの本も手に取ってみようかなとは思っております。

本屋経営の実践

renny:僕が最近読んだ本で印象出来だったのは、10年近く前に出た本の続編みたいな一冊です。西国分寺でクルミドコーヒーってお店をやってらっしゃる影山知明さんが、2015年に出された「ゆっくり、いそげ」の続編で、「大きなシステムと小さなファンタジー」がこの12月に出版されました。僕は2015年にその「ゆっくり、いそげ」を読んで、だいぶ投資に対する考え方って変わった自覚があって、続編を読ませてもらって、これからどうしようかとか考えてみるきっかけになりましたね。そういう本を扱うような本屋さんを、今年3月ぐらいから神保町と蔵前の両方で一棚本屋さんのスペースをお借りして、自分が読んでもらいたい本を販売するっていうような試みを始めました。そういう試みって吉田さんどういうふうに思われます。

吉田:家の近くにあったらやりたいなと思います。rennyさんの記事を読んでると、本が売れたら棚に補充したりするのは、自分でやられてるんですか。

renny:蔵前の方は基本的に自分で補充に行ってます。そもそも本をどう仕入れるかという問題がありまして、いろいろ調べていて、鎌倉投信の鎌田さんが今年本を書かれたじゃないですか、あそこの出版社がたしかにニュースピックスパブリッシングさんだったと思うんでけど、そこのページを見ていると、すごい小口でその卸売りをしてくださる取次さんがあることを知りまして。楽天のグループ会社なんですけれども、そこに口座を作ってもらうことができたんで、小売価格ではなくて卸値で本を仕入れることができるようになったんですね。

吉田:仕入れから自分でやんないと駄目なんですね。

renny:蔵前は自前でやってるんです。一方で神保町は注文をして本が届いたら並べてもらえます。神保町のお店は非常にシステムが行き届いてるというか、売上情報もほぼリアルタイムでわかるんですよ。だから本が売れて在庫がなくなったら新しく注文を入れるというような感じでやってて、もちろん自分で並べることもできるんですよね。神保町の方で並べてる本の一部に自費出版みたいな形で出されてる本があって、それは実際作られてる方から買わせていただいて、神保町まで持っていって並べに行くみたいなことをやってます。

吉田:そういう仕組みなんですね。たぶんその代わり、神保町の方が手数料が高くて赤字になりやすい感じですか。

renny:そうですね。全く儲からないです。そもそも本は1500円とか2000円弱の本を1冊売って、手元に残るのは100円、200円。それに対して月に数千円~1万円近くの棚チンがかかってるんで、損益トントンにしようと思うと、月に100冊近く売らないといけない。僕の棚は基本的には投資をする上で勉強になった本を並べてはいて、でも投資の本は売れないですね。蔵前も神保町も一般の書店とは違って、尖った本が置かれてる棚が多くて、そういう本を求めて来店されてる方が多いんですよ。だから投資の本を買いに来る方はここを目指して来ないんだろうなと。ただそれは最初から僕も想定してたことではあります。一応、販売している本にカード貼り付けて、買ってくださった方への限定のサービスを付けていて、それがあるがために神保町の本屋さんでも、本が入荷したらカード貼りに行かなきゃいけないっていう作業があります。神保町の場合だと、1日店長とか、そういうような仕組みとかもあって、お店の店長をやって、好きな本を並べるたり、1人フェアみたいなこともやろうと思ったらできたりします。また蔵前のお店は追加料金がかかりますが、少しいい場所を借りて、そこにたくさん本を並べることもできます。何かしらその他やり方をして、少し粗利を増やす余地っていうのはあるのかな、って思ってるのが一つと、あとやっぱり本屋さんやってますって言えるのは、それだけでもいいかなと。

吉田:いいですよね。なんかカッコいい趣味ですよ。

renny:趣味といえばそうですね。あとはやっぱりやってみてわかることが、投資の本って売れないかなと思ってたらやっぱり売れないな、っていうのはありますね。僕の読書のところでご紹介した影山さんの「ゆっくり、いそげ」も並べてるんですけど、それは1ヶ月に1冊ぐらいのペースで売れますね。あとは自費出版されてた本もすごく売れてたりしますし、あと僕がたまにお邪魔してるバーのオーナーさんが書かれてる小説なんかも結構売れています。投資の本よりも神保町のお店のしつらえや立地にあった本が売れてるのかなって感じはします。投資の本を売るには、ちょっとひねりを入れなきゃいけないな、って思ってたりはするんですよね。

吉田:なかなか難しいですね。いろんな投資家の方たちが棚を固めて、それぞれ本を紹介してたらそれを目当てにお客さんが来る可能性はあるんでしょうけどね。

renny:吉田さんもこういう本屋をやるとしたら、どういう本を並べたいですか?

吉田:自分が面白いと思った本ばっかり並べちゃうから、何て紹介して売ったらいいのか、分からないですね。投資の本なんて1冊も並ばなそうだし。

renny:投資の本は並べなくてもいい。むしろ普通の本屋だったら見つからないような本が並んでる方が、きっと面白いんだと思うんですよね。そこに1本テーマがあると、なるほど!ってなると思います。たとえばさっきご紹介してくださった「教養としての世界史」のような歴史の本って確かに結構並んでたりするのは多いのかな。ちょっとお試しでこの本並べてみたらどうとか、っていうようなアドバイスがあったら、こちらで仕入れて並べてみようかなと想うんですけど。

吉田:投資に近そうな本で、今、本屋にあんまり置いてない本だと、昔のチェスの世界王者だったカスパロフさんの本かな。昔のAI(IBMのディープ・ブルー)とチェスで戦ったのがニュースになったりした方の「決定力を鍛える」という本があって、勝負に対する考え方や心構えがいろいろ書いてあって、投資に役に立ちそうな感じの本ではあります。

renny:吉田さんは、羽生さんの本といい、そっち方面の方に投資とのリンクを感じられることが多いんですね。

吉田:そうですね。最後は自分自身の判断力をどう保つか、みたいなところが大事かなっていうのがあるから。

renny:それは言い換えると周りに流されない、っていうような感じなんですかね。

吉田:そうですね。周囲に流されちゃうとどうしても1ヶ月先ぐらいのことしか考えなくなっちゃったりするので。そういうのに引きずられないで、どうやって意思決定をするかみたいな本を探していくと、そういう勝負の世界にいる人に辿り着いちゃう感じですね。

renny:しかもチーム戦というより個人戦っていうような感じですよね。たとえば企業でM&Aとかをやるときは大きな会社だと、みんなで判断することが多いと思うんですよね。もちろん買った後の事業運営は当然チームプレーじゃないと、当初の計画通り進むということはままならないと思います。でも一方で、買うか買わないか、投資するかしないか、っていうのはもしかしたら本当に個人戦みたいな側面あるのかもしれないですね。日本の会社のM&Aとかで、うまいこといかない理由とかって、もしかしたらそういうとこにあるのかもしれないですよね。

吉田:そうですね。確かにそうかも知れない。

renny:やっぱり説明責任と言われると、どうしても意思決定のプロセス上、デューデリジェンスを含めて、すごくいろんな人が関わらないと投資の意思決定できないのは、特に上場企業はそういう要素がどんどん強くなってると思います。だから非公開化っていうかMBOされる会社が増えてるようなところもあります。そのあたりって結構関係あることなのかな、とかって今お話してて、ふっと思いつきましたね。その本を仕入れられるようだったら、ちょっと探してみようかなと思います。

吉田:2007年に発売された本です。

renny:本屋さんがどんどんなくなっている中で、こういう試みっていうのは、たぶん増えていくんじゃないかと思います。東京の西の方にも増えてきてるみたいですよ。:

吉田:そうなんですね。

renny:僕もちゃんと把握はしてないですが、ちょうど蔵前の本屋さんで独立系の本屋さんを集めたイベントにお邪魔したこともあるので。繰り返しますけれども、全然儲からないですが、本屋さんをやってますというか、そういうことを体験するにはすごく面白い、良いことかなというふうには感じてます。

吉田:本を読むのが好きな人には面白い体験だと思います。

renny:永続的にやるんじゃなくて、期間限定でやるのでも全然いいのかなと思いますし、むしろその方が盛り上がるかもしれませんね。ということで、2024年12月の「投資家の日常は、いとをかし」はそろそろ終わりです。吉田さん、年末年始はどうされる予定なんですか?

吉田:年末年始は予定が特にないですが、今月入院したりしていて運動不足だったので、たくさん散歩しないといけないなと思ってます。

renny:インフルエンザも流行ってると思いますんで、僕も気をつけなきゃいけないんですけれども、みなさんも良いお年をお迎えください。

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