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脱・情報格差による「最軽量のマネジメント」

【要約】

・従来の「ピラミッド型」の組織図は、経営者が効率的に情報収集するためのものだった。情報共有手法が向上した現代においては非効率的になってきている。

・新しい組織図として提案されているものは「キャンプファイアー型」。情報を全てオープンにした上で、案件(=火)を中心に据えて、その火に興味のある人たちが自由に集うことで成り立つ組織。

・マネジメントはスーパーマンを諦めて、頼るのがうまい人になるべき。

【感想】

所々に理想論・机上の空論の匂いは感じるが、組織や上層部に抱いている言語化できない不満へのひとつの解を提示されており、モヤモヤが晴れたような、少しすっきりした気持ちになった。

根底にある思想は「情報」というものの扱い方をアップデートするべき、という話。情報の希少性が高かった時代は、社内の情報を”知っていること”に価値があった。そのため、上層部がピラミッド式に情報を吸い上げるための組織図が出来上がり、"知っていること"が多いことそれ自体が権威に直結していた。しかし現代は情報を共有・把握する手段は数多あり、”知っていること”の価値は下がっている。情報が均一になると、上司と部下の権威に差は無くなり、上司の判断に納得できない部下からの突き上げが発生する。一方それを恐れる上司は、「部長間で話して決まったことだ」など、敢えて意思決定の経緯など一部情報を隠すという、権威を守る行動に出る。そのことを感じる部下からは不満が噴出する…。

こうした負のスパイラルは多くの現場で発生していると思う。私の職場でもあるあるだ(と認識できた)。そこで本書で提案されている思想は「透明になること」。どんな情報でも可能な限りオープンにすることで、誰もがフラットに議論する土壌を作る。上司と部下も対等に議論する。最終的な判断は上司が行うことが多いが、そこに正当な議論の跡が見られれば部下は納得できる。勝手に決まっている、という状況が最も良くない、という思想だ。ただ本書の表題「最軽量」という割には、楽な方法ではないと感じる。部下からの突き上げを誘発するし、上層部でしっかり議論されているかを部下に監視されているようなものだ。「最軽量」ではないが、組織のあるべき論という意味では理解できる。

その上で、案件(を火に見立て)を中心に据えて、その案件に興味のある人たちが自由に集う「キャンプファイア型」の組織図が推奨されている。部下のモチベーションアップの観点で言えば、この組織図は”自主性のある人にとっては”理想的なものだと思う。ただ部下の能力・自主性にかなり依存するような気がするため、キャンプファイアを見守る先生=マネジメントの負荷もそれなりに発生する印象を持った。またしても「最軽量」ではない。

こうした「最軽量」ではない理想的な組織のために、マネジメントは全ての領域に精通し、適切な指示・判断が出来る”スーパーマン”になるのを諦め、頼るのがうまい人になることが推奨されている。ようやく「最軽量」らしくなってきた。本書で提案されている組織ではマネジメントに求められる能力は、自身が良いアウトプットを出すことではなく、「チーム員にいかに協力してもらうか・やる気にさせるか」「判断をスピーディーに行えるか」に寄せるべき(というかスーパーマンはムリゲー)。

マーケティングテクノロジーがとめどなくアップデートされ続けている中で、常に部下よりも秀でた"プレイヤー"になることは諦めて、①情報の透明化を徹底しチーム員の自走を促すこと ②だれが何のプロフェッショナルなのかを把握してうまく頼っていく”マネジメントスキル”に長けた存在になることが、「最軽量(?)」の道らしい。

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