備忘録📝　「日本の仮面」展から考える現代における匿名性の役割

2024年5月4日 23:13

楽しみにしていた、
国立民族学博物館にて開催中の
『日本の仮面展』に行ってまいりました！

日本の仮面――芸能と祭りの世界
会期：2024年3月28日～6月11日
会場：国立民族学博物館

上記のリンクは
展覧会構成についても
展示物の説明についても
かなり具体に掲載されているため、

事前情報0で行きたい！
という方は、ご覧にならない方が
いいかもしれません。
(また、ここから先も同じレベルの
ネタバレがあるので、ご留意くださいませ。)

_____

⬛︎日本の仮面の歴史とその役割

聴覚優位タイプなので
・前半の時代に沿っての展示とキャプション
・後半のカテゴリ毎の再整理とキャプション
が大変心地よいです。

仮面とは、
日本の祀り事•祭り文化や芸能に多く登場し、
その祭り自体は多種に至りますが、

仮面自体の用途には共通する要素も多い。

・能の文化が生まれる前と後の仮面
・江戸時代以降の獅子舞の厄払いとしての仮面
・現代に繋がるヒーローとしての仮面

など、歴史上での役割の変化も
とても面白く。

日本各地の受け継がれる祭りとともにある
仮面の意味とそのビジュアルの違いも
とても興味深いです。

また、
神社仏閣と距離の近い祭りもあれば、
そのエリアならではの文化として残る祭りもあり、

仮面をつける演者は
必ずしも選ばれし特別な人ではなく、
市政の人々が演じるケースもある。

後者の場合は特に、仮面と衣装が
ケとハレの境目となる。

⬛︎エリア毎で異なる祭り文化と仮面

エリア毎で異なる
祭りの例をいくつか。

硫黄島のメンドンは、
仮面をつけた島の男性達が祭りの中で
太鼓踊りを妨害したり、
女性を襲ったり。

それが祭りでは"縁起のいいこと"とされる
けれど、
正直いまの現実社会では
「なんで女性だけ」も疑問にもたらたり
喜ばれる行為ではないかもしれない。
(わたし自身は参加は控えたい)

その他のエリアでは
仮面の顔がユーモラスな地域もあり、
気になりました。

鎌倉の御霊神社の面掛行事の仮面など、特に。

なんとなく、さくらももこ漫画で
出てきそうな表情ばかりで

仮面のつくり手がつくる途中で
「ねぇ、みて」と、見せ合って
ぷぷっと笑ったりしたのでは、と
勝手に妄想。

話を、仮面の歴史の話に戻します。

⬛︎現代の仮面の役割とは？

個人的には、
ヒーロー(戦隊ものやプロレスラー含む)
の次の仮面の存在も気になっています。

「個人の表現の盾」としての仮面
もあるのかなと。

そう言うと、
仮面舞踏会もそれに当たるのでは？

確かに、当時のヨーロッパ貴族女性たちが、
身分を隠して自由に舞踏会に参加するために
流行したと言われています。

※16世紀のヨーロッパでは、貴族女性が日焼け防止で着けていたという史実もあるそうですが。

周りからのバッシングを恐れて、
自由に活動するための仮面、という面では
近しいかもしれません。

今回の展覧会に限っては、
『日本の仮面展』ということなので、
ヨーロッパ貴族女性達の
"表現活動のための匿名性"は対象外かと思います。

ただし、

アバター。
Vtuberとしての仮面。

というと、
日本にも現れていると思います。

日本発祥の仮面かというと
外来混じりかもしれませんが。

表現活動のための仮面・匿名性でいうと、

BEAT CRUSADERS、
GReeeeN、Adoにもその流れがありますね。

yamaさんも、実際に仮面をされていますね。

匿名での表現活動をされる理由に、
「普通の暮らしを大事にしたい」
とあげられていますが、痛いほど共感します。

⬛︎普通の日常を守る、盾としての匿名性と仮面

昨今の有名人の結婚でも
相手の方を明かさないのは、
プライベートを守るためという理由は
大きいでしょう。

卑近な例でいうと、
転職の際にトラブルを防ぐために
転職先を言えない環境もあります。

現状の日本文化において、

人が集団から外に出る行為、或いは
普通の人が何か抜きん出て目立つ行為は

必要以上の注目を誘い、好奇の目に晒し
妬み嫉み等をうむリスクがあります。

SNSの発達で、垣根を越えやすくなり
他人に無関心でいられない人が
隙を見つけては、

踏み込むべきでないところまで
侵入してしまう
なんてことも往々にしてあります。

それを防ぐための匿名性として
仮面が役に立つこともあります。

裏アカウントもその一種でしょう。

Vtuberやアバターで活躍することで
信頼できる人同士の取引をして
身を守りながら表現活動をする
こともできます。

女性であるだけで、
つけ込まれやすくなることに疲弊して
アカウントの性別をわからないようにする
人もいるでしょう。
(わたしもなるべくはアカウントの性別ははっきりさせたくないな、と思う派でした。)

もともとの
歴史上の仮面の役割の話に戻ると、

神や精霊、鬼、動物、神話や
作品の登場人物になりきる、
人格変化させるものとして
仮面が存在してきました。
(折口信夫の、マレビト的な神霊とも)

それはもしかしたら、仮面をつけることで
特別な人格になるものだったかもしれない。
日常生活の中にハレを生じさせるものとして。

現在は対照的に、

仮面をつけることで特別であることを
隠そうとする行為なのかもしれない。
日常生活をケのまま安全に暮らすために。

日常生活を脅かせたくない面では
戦隊ヒーローも近い部分もあるものの、

みんなのために被る仮面と
自己実現のための仮面と少し色が違う
ように思えるのです。

仮面を
自己表現のためのツール(盾)としているのが
現代的なのではないかと思いました。

⬛︎仮面をつける行為をしての感想

わたしはいま
お婆さん👵🏻のアバターで
ラジオ活動をしているわけですが、

なんとなくお婆さんの時の方が
マイペースでオープンな振る舞いを
しているように思える時があります。

歳をとって、
度胸がついたお婆さんの自分の方が
(ある意味恥じらいを捨てて)
自由に好き勝手にお喋りしている
ように感じます。

これがもし、少年のアバターであれば
もっといろんなことを質問しまくったり、
やんちゃになるかったりするかもしれません。

別人格を得て、
それになりきる免罪符のようなものを
アバター及び仮面は与えてくれる
ように思います。

それがジョーカーのような使い方だと
危うくなってしまうのですが、
自分の躊躇をとっぱらって
表現するためならば、

仮面は大いに利用してしまえばいい、
とわたしは思います。

或いは、
文化人類学や民俗学の側面として

あえて仮面を被って演技・振る舞うことでの
他者理解・エスノグラフィー

のようなことができても
面白いのかなと思いました。

おままごとの大人verのような。

そんな他者理解の仕方も
現代的かもしれませんね。