親孝行と私の人生
大人になったいま、小さい頃には予想していなかった未来を私は今生きている。
何を予想してなかったかというと、私の両親は意外と手がかかるってこと。
実家を出て、一人暮らしを始め、仕事をバリバリしている20代というのは、「あの子は実家に滅多に帰らないのよ」なんて文句を言いながら、両親は実家でのんびり暮らしている。
みたいなのが一般的なのかなと思っていた。
そんな親に構わず、子供は都合良く、帰りたい時に実家に帰って、実家に帰ったら洗濯も料理も何もせんで、「まったくあの子はウチに帰ればなんーもしないんだから」と母親に呆れられながら、ダラダラと慣れ親しんだソファで昼寝をする。
みたいなことをしてみたいなあと思っていた。
だけど、私の家族はそれを許されていない。
やろうと思えばできるかもしれないけれど、そうしようにも、まず実家がない。
小さい頃、母が「解散!」とふざけて言っていたんだけれど、まさか本当に解散しちゃうなんて。あんまりじゃないか。
解散した私の両親は、手がかかって仕方がない。まあみんなもそんなもんだろうか?とも思ったりするんだけれど。
子供が大きくなるまで親に育ててもらったように、私たち子供も、親の命が尽きるまで面倒を見るものなのかもしれない。お互い様なのかもしれないな。と最近思う。
ただ、それが早すぎやしないか?
私はまだ20代なのだけれど。
▶︎かまってちゃんな父
超絶インドアだった父親は、母親と離婚してから急にアウトドアになった。
今まではどうだったかって?
自宅でゴロゴロとテレビの前を陣取って、ゴルフばっかりみてたのに。信じられない。「行こうよ」と誘ったところで「俺はいいや。」が決まり文句。それがウチの父。だった、今まではね。
今はどうかって?
しょっちゅう「焼肉食べ行くか!」「ボウリングいくか!いつ行くか決めとけ!」
なんて調子で、こちらの予定なんて考慮してはくれない。
それでも私の兄弟は優しいもんで、ちゃんと日にちを合わせて焼肉もボウリングもきっちり行くもんだから、感心してしまう。
まあだけど、それが私は重いんだ。
私1人が「親に時間を使わない娘」だと思われるのが、苦しい。
本音を言ってもいいだろうか。
言うのも苦しい。うまく言えるだろうか。
本当ならば、仕事、趣味、遊び、恋愛、やりたいことがいっぱいで私は毎日忙しい。
両親は好きだ。でも、今、明日、明後日、心から躍ることをしていたいと、親を後回しにするのは汚い心だろうか。親不孝だろうか。
そんなことを言っていたらいつか親が死んでしまって、親孝行できなかったことに後悔するって?そんな声が聞こえてくる。わかっている。わかっている。だから苦しいんじゃないか。
やりたいことに毎日浸っていたい。
別に今ただ楽しんでいるだけじゃない。
私は私で、未来を良くしようと毎日必死なんだ。
将来店をやりたい。そのために情報発信をし、お金を稼ぎ、技術を身につけ、パートナーを探し、メンターを探し、同志を探し、
趣味だってただの時間の浪費じゃない。
それがいつか、私の望む未来像に必要な出会いなのだとわかっているから、必死で走り続けているんだ。
やりたいことをやって、親のことを放っておいたら、親不孝だろうか。
それがやりたいことじゃなくて、仕事や育児だったら、親不孝ではないのだろうか。
やりたいことを、何よりも優先することが、どうしてこんなに後ろめたいんだろう。
「自分勝手」という言葉はどうして悪く思われるんだろう。
必死に今日を生きようと思ったら、自分勝手になってしまう。それはいけないことだろうか。
▶︎母親は病
母親が意外と私は冷静だった。
母親が病気になって悲しくないわけじゃない。ただ、あの元気な母親が、死ぬなんて、全く実感が湧かない。
そんな時もやっぱ私の兄弟は完璧すぎる。
仕事も育児も忙しくても、母を助ける。それが正義で当たり前なんだって、思わさせられるね。
母に会いに行く。私も会いには行く。
だけど頭がせっかちなんだ。
早く未来へ走れ!こんなところで足を止めるな。とうるさい。
介護なんかが始まったら、きっとみんなそうだろうか。
親は手がかかるものなのだろう。
▶︎みんな必死で繋がり続ける
解散したウチの家族は、バラバラになりきれずに、細い糸で繋がろうとみんな努力している。
くっつくことも、離れることもできずにただフワフワとつながり続けているのだ。
それがいいこととも悪いこととも別に思っていない。
ただ、生きたことがないから、困惑しているだけだ。
親孝行をすることが、正しいことなのだろうか。
今親に向き合わなければ、私はいつか後悔するだろうか。
そう思う反面、こうも思う。
今、親を優先して、好きなことをしなかったら、いつか「親のせいで」って言ってしまいそうな自分がいる。
それはもっと親不孝じゃないか。
ここまでこんなふうに言ってきたから、誤解させてしまったかもしれないが、私の両親はうんと優しいのだ。
もしこの記事を目にしたのならば、
「気にしなくていい。無理なんてしなくていい。好きなことをしなさい。好きなことをしているあなたは素敵なのだから。」ときっとそういうだろうなと思う。
だから、なおさら苦しいのだ。
そんな両親のことが、私は大好きなのだから。