道
僕が立っている場所。放射状に伸びる足跡。何度もここに戻ってきた。転んで、転がって、擦りむいて、唇を切って、血を流して。もうだめだと思ったら、此処に戻ってくる。ふらつき肩をぶつけた壁に、矢印のような血が付いている。嫌だ。もう嫌だ。そう思う。どれだけ苦しくても、泣いても、登ってくる陽はいつも同じ顔。夜という闇に守られて震えていても、傷を抑えて屈んでいても、朝は来る。朝が迫ってくる。
陽は毎日、僕から闇を引き剥がす。包んでくれていた、暖かい、闇。ああ、また歩かなくちゃならない。白い地面に目を落とし歩く。後ろから灰色の風に殴られる。黒いつららが左胸に突き刺さる。ドスドスと、次々に刺さる。つららを伝って赤い血が白い地面に落ちる。大切に抱えたジョウロには涙が溜まっている。道端で花を見つけた。ジョウロに溜まった涙をかけてやった。すると花は言う。『あなたの悲しみなんていらない』と。そのままスウッと消えてしまい。寂しそうな水溜りだけが残る。僕は肩を落とし、血を辿り来た道を戻る。
足を止めたい。歩かなければ、傷つくことはない。でも僕は知っている。無限に広く、手を幾ら伸ばしても届くはずのないあの空は、歩くことをやめた途端、ぐんぐんと迫ってくる。ぐんぐん、ぐんぐんと迫ってくる。綺麗に見えた星空は、ただの覗き穴だったことに気づく。みんな、僕を見ているのだ。足を止めた僕を、軽蔑や憐みの混じった視線で。まっすぐ立てなくなる。かがむ。しゃがむ。這いつくばる。潰される。だから歩かなければならない。正解を見つけなければならない。
可能性という道がいくつも伸びているせいで、僕達は何処へでも行くことができてしまう。何処かに行かなくてはならなくなってしまう。丁寧に切り取った日常を押し入れにしまいこむ。ボロボロになりながら、何度も歩き、その度に此処に戻る。次こそは、次こそは。明日は何処を向いて歩こうか。そうやって僕らは道を決める。道の正しさを祈りながら。
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