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スーツを着た奴隷



歩いている。

カーテンを閉めて部屋の隅で膝を抱えていた僕はもういない。

しっかり歩いているんだ。随分遠くまで来た。

そう思って振り返ってみると、まだ全くと言っていいほど進めていなかったことに気づく。
進んでいないのに、片足を引き摺っているみたいだ。


・・・


前にもどこかで書いたが、相変わらず上司がしんどい。
僕の相談は聞かない。詳しく話そうとしても遮られて結論以外は聞かない。自分の発言を覚えていない。『現場責任者に責任は全部来るよ?君、問題になったら返金するの?』が口癖。
僕はとことん上司というものに運が無いらしい。ここまで来ると、僕の方に問題があるんだろうなあ、なんて思ったり。

いつの間にか、客のことなど頭から吹っ飛んでいる自分がいる。
『如何にして上司に怒られないで済むか』
『如何にして自分に責任の矛先が向かないようにするか』
その2点にのみ集中して業務に携わる自分がいる。こんな自分が大嫌いだ。
世の中の部下と呼ばれる人達はみんなそうだよ、と言われると返す言葉は無いが、とにかく僕は嫌いだ。

上司の思い通りになるようにだけ動く。思い通りにならなければ怒られる。客のことに頭が回らない。でも毎日降ってくる膨大な仕事。嫌気がさす。でもやめられない。経歴が大きく作用するこの国で半年も経ってない状態で辞めたら大きな傷にしかならないし、次やりたいこともないし。

奴隷だよ。でもボロボロの布を身体にまいてるわけじゃない。スーツを身に纏って、見た目だけはピシッとしている。でも首輪が付いている気がするんだ。

何のためにこの仕事を始めたんだっけ。大した理由はない。人に関わる仕事をしてみたかった。営業職以外の仕事をしたかった。それだけ。
なのに、『人と関わる』の部分を心の中では疎かにしている。
早く終わらせようとする。問題なく終わらせようとする。めんどくさいことにならないように仕向ける。
だって、考えて行った行動は全て否定されるから。
いつの間にか、会社の為に頑張ろうという気も失せた。このご時世、運営がかなり辛い状況になっているけれど、心の何処かで他人事のように捉えている。むしろ今の混乱に乗じて解放されたいとまで考えてしまった。

いっそ何も考えないマシーンにでもなってしまえば。
残してしまった仕事や明日に積まれた仕事を気に病むこともなく、浴びせられる説教もどこ吹く風、淡々と仕事をこなすだけでいい。

でも僕らは残念ながら人間で
仕事も説教もストレスも喜怒哀楽も、全て受信してエラーを起こす。
どうせ今日も仕事が溜まる。説教を受ける。ストレスが溜まる。そう知りながら、ネクタイという名の首輪をキュッと絞め、家を出る。


・・・


体力と心を削り、帰ってベッドに倒れ込むと、嫌でも自分と向き合ってしまう。向き合いたくない。向き合えば苦しくなるから。周りと比べてしまうから。生きてるだけで充分頑張ってるとかそんな文言を信じられなくなったのはずいぶん昔。生きる意味を問われて答えられない自分に価値なんて無いと思ってしまう。

でも、やめられない。

奴隷のように思えても、その方がまだ人として価値はあるから。

少し前の、なんの価値もない状態には戻りたくない。
今のクソみたいな状況にしがみつくしか、今は生きる術がない。
弱い。弱いから。弱い人間ほど、自分が弱くなる場所にしか居られないというのは、悲しい話だ。

強くなりたい。強くなって、自分の思うように生きたい。
解放してあげたい。自分を。
その為に、自分を知りたい。
自分と乖離し、自分と対話してみたい。
『君の好きな食べ物は?』から。

とりあえずまずは上司に対して強くなりたい。
間違ったことをはっきりと間違っているよと言えるようになりたい。
そんでもって、いつか上司の顔面に辞表を叩きつけて、
『そのままじゃアンタに付いていこうと思う人いないよ?一生1人でやってれば?』
って言ってやりたい。
それが今の目標です。

ただただじわじわとやられていた前よりは、ちょっとは強くなれたんだろうか。




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