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「猫追堂」 クロネコと電脳の城〜プロローグ〜

古びた本の匂いが好きだ。

紙からほのかに感じられる木の香りに、ややカビ臭さが混じったような独特な匂いが、心を安らかに落ち着かせてくれる。

そんな本たちがここにはたくさんある。

ここの主人はいつもどこかに出かけてしまって留守にしている。

ある時店主から、本が好きなら店番をしてほしいと頼まれ、ここで店番をするようになった。

しかし店番を始めてから今までお客さんが来たためしがない。

まあその方が邪魔されずにゆっくり本が読めるからいいのだけれども、一応本屋なんだからお客さんが来たら本を売らなきゃいけない。

でもこちらの世界に人間はほとんどいないのだから、お客なんて来ないし本なんて売れるわけがない。

店番中あまりにも退屈なので片っ端から本を読んでいたが、もう全ての本を読み尽くしてしまったような気がする。

昨日手に取った本は、2年くらい前に読んだことがある悪書だった。

良書は何度読んでもいいが、悪書は退屈である。

どれが良書でどれが悪書だったか、いちいち覚えていないので、意図して手に取ることもしなくなった。

本を読むことにも飽きてしまったらいよいよ退屈だ。

あまりに退屈なので日記でも書くことにする。

退屈な毎日を綴った退屈な日記だ。

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