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2009.11.3→→→→→→→→→→

 2009年11月3日。

 ぴらにやカフェがオープンした日。

 カウンター4席とテーブル席2つの小さなお店だった。


 一番最初のお客さんは、友達でも知り合いでもなく、迷い込んで入ったかのような中年男性だった。


 ホットコーヒーの注文で、おそろしく緊張した震える手つきで豆を削り、お湯を注いだのを覚えている。

 こちらの緊張が伝わったのか、中年男性のお客さんはものの5分ほどで逃げるように退店した。コーヒーカップの底を見に行くのが怖かった。


「今日オープンなんです」「ああ、それはおめでとうございます」

 そんな会話をかわした。

 それは、決して準備万端とはいえないお店の状況に対する言い訳めいた、免罪符を求めるようなトーンで言ったのを覚えている。

 その1回の接客でひどく消耗した。

 辞めたいとは思わなかったが、とにかくひどく消耗した。

 

 あと10日ほどで、10周年。

 10年たった今でも、コーヒーカップの底を見に行くのが怖い。



 


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