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持病があるとビザの取得が少し大変な話
多くの国で、長期滞在のビザを申請する時には健康診断が必要になります。1年であればX線だけでいい場合もありますが、ニュージーランドのビザの申請では2年を超える滞在になる場合は身長・体重・血圧・視力・血液・尿・医者の問診が含まれるフルメディカルチェックが必要になります。今回は持病がある場合のワークビザの取得と、長期ビザ取得のためのメディカルチェックに関するお話です。持病がある場合の参考になればと思います。病気によって違うのでもっとシンプルにいく場合もあると思います。
また、需要があるか分かりませんが、健康診断・専門家の診察を含め、オープンワークビザ申請に際してかかった総額についてもお話します。
ポストスタディワークビザ(どの雇用主のもとでも働けるビザ)の申請準備
ニュージーランドでは、ディプロマや大学のレベルや所在地に応じて、卒業後にポストスタディワークビザという、どの雇用主のもとでも働けるオープンビザの申請の権利がもらえます。わたしの通っていたDiploma in Computing Level7は通常1年のようですが、2021年までの特別対応で、オークランドの外で勉強した場合は2年のビザがもらえます。
ビザの申請は至ってシンプルで、自分のパスポート情報や犯罪歴、職歴などをウェブフォームで入力して、最後にディプロマ修了証明と銀行の残高証明、健康診断でクリニックからもらった健康診断IDを入力して提出可能です。銀行の残高は4,200NZD以上、健康診断の内容は前回のビザ提出時に何を提出したかによって個人差があります。
すべての情報を入力し、どの書類が必要かを申請フォームの最後のページでチェックして、健康診断が必要な場合はクリニックに予約をして、受診後にクリニックから健康診断のIDが発行された時点でビザを申請します。
健康診断の申込み
学生ビザを取得した際には、X線だけの提出で良かったのですが、今回ディプロマ卒業後にはX線を含めた健康診断の提出が必要であるとオンラインフォームに表示されたので、健康診断を受けました。費用はオークランドのクリニックで280NZD。
ちなみに、元々クライストチャーチに住んでいたので、その当時健康診断の価格を調べたら、どのクリニックも495NZDでした。彼がオークランドに住んでいたので、オークランドは行く機会が多いこともあり、オークランドでの価格を調べてみたら、クリニックによりばらつきがあることがわかりました。
X線込みで280NZDは、ニュージーランド最安値だと思います。
このクリニックには、この後長くお世話(詳細はこの話の後半で)になったのですが、値段が安くてもとても良いクリニックなのでおすすめです。
予約については、2週間先であれば予約を取ることができましたが、クリニックによってはかなり先でないと予約できない場所もあるようです。
健康診断当日
当日は時間通りに到着し、予めオンラインで送信しておいた情報を元に、検査がスタート。身長・体重・血圧・視力検査・尿検査・血液検査・心音チェック(?)・問診だったと思います。
普通に次から次へと診察を受けていくと、途中で書面を渡され、様々な病歴の有無などを申告するようになっていたので、素直に応えていったら出てきました。ちょっと恐れていた質問。
「今までの人生で手術を受けた経験はあるか?」
素直に記入しました。
「はい、4回」
わたしには「先天性小耳症」という7000人に一人くらいの割合で生まれるという生まれつきの病気があります。この病気はだいたい難聴を併発するんですが、わたしの場合も右耳は難聴でほぼ聴こえません。
お医者さんとの問診で、上記の質問について結構詳しく聞かれ、英語でしどろもどろ。医療用英単語って難しいですよね。とは言え、日本での大学も仕事も病気の影響なくこなしていたこと、ディプロマも問題なく終えたことなどを説明し、お医者さんも病気の詳細(わたしからの説明)を健康診断に記載しつつ「実生活に影響は見られない」とも書いてくれ、移民局もここまで書けば大丈夫だと思う!とかなり親身に応援してくれてる感じでした。
ただし、移民局から専門家のレポートを出してねと言われる可能性もある、とは言われました。
ビザ申請完了
健康診断は、基本的に問題がなければクリニックから直接移民局のメディカルシステムにアップロードされるので、私たちはメディカルIDをクリニックからメールで受け取り、そのIDをビザの申請画面に入力することでビザの申請を完了することができます。
血液検査や尿検査などでもし結果が思わしくない場合は、移民局に送信する前に連絡をくれ、再検査などを相談できるみたいです。
わたしは、血液検査・尿検査どちらも問題なかったので、移民局のメディカルシステムに送信したよという連絡と同時にメディカルIDをもらいました。
ビザの申請画面にIDを入力して、申請を完了しました。
ちなみに、ポストスタディワークビザの申請手数料は495NZD。わたしはこのことを知らなかったので、申請ボタンを押した後に支払いページへ飛び、オンラインペイメントしてねと出てきたときに軽くショックを受けました。
専門家のレポートの必要性
健康診断で病気について説明しなければならなかった時は、ビザに影響したらどうしようと思っていたけど、お医者さんも大丈夫だろうって言ってくれたし、大丈夫だろうと楽観的に考えていたら、申請後1週間くらいでメディカルシステムからメールが届きました。
実際のメールの冒頭はこちら。
We need some more health information from you
You have had a health examination as a requirement for your New Zealand visa application. Immigration New Zealand (INZ) now needs some extra health information to complete our assessment.
How to provide your extra health information
Please contact an INZ panel physician to find out what extra information we need and how to provide the information.
上記、簡単に訳すと、
あたなの健康の情報がもっと必要です。あなたはビザ申請の必要事項にしたがって健康診断を受ました。移民局はこのビザの審査を完了させるため、さらなる健康情報が必要です。
どうやって追加の健康情報を提供するか。移民局の認める医者(パネルフィジシャン)に連絡をとり、なんの情報が必要でどうやって情報を追加提供するか確認してください。
移民局からではなくメディカルシステムからのメールだったこと、内容が不明瞭だったので、まずどうしていいのかわかりませんでした。とりあえず、健康診断を受けたクリニック(上記で言うパネルフィジシャン)に連絡を取り、こういうメールをもらった、と伝えたところ、どういった内容の追加リクエストがメディカルシステムから来ているのかを教えてくれました。
この、パネルフィジシャンに連絡してみないとわからない仕組み、どうなんでしょう。
ともあれ、パネルフィジシャン側で確認してくれた内容は以下の通り。
Please provide an audiologist report regarding the applicants congenital right ear microtia and previous reconstruction with significant hearing loss. This should include - history, diagnosis, clinical examination findings, the results of any additional investigations performed, management needs and long term prognosis. Please comment on the applicant’s functional and work capacity.
簡単に訳すと
この応募者の先天性小耳症における難聴や再建出術などについて聴覚学者の報告書が必要です。手術歴・症状・医学的な知見や長期的な見通しなどを含め、この応募者の労働能力についてもコメントしてください。
パネルフィジシャンとしては、過去の診察歴・診断書を日本の病院に問い合わせて取得できるならそれをメディカルシステムにアップロードすることも可能とのこと。でも、日本の病院はもう10年以上通ってないし、英語の診断書を出してもらえるのかわからないし、どれくらいかかるかもわからないし、とりあえず、こちらの専門医に診てもらうことにしました。
ちなみに、専門医への健康診断の結果の連携・専門医からの結果の連携・メディカルシステムへの反映に関しては、パネルフィジシャンへ追加料金を支払う必要がありました。実際に色々していただくので当たり前ですが、プラスの出費となりました。専門医の予約のアレンジなどは含まれていません。
専門医探し
専門医への予約へ漕ぎ着けるまでが本当に辛く、かなり精神的に不安定になりました。
まず、自分の病気のこと、専門医のレポートがビザのために必要なことを英語で説明するのが難しい。そして、ビザが取れないかも、という思いが常に頭によぎっていました。
わたしの病気は難聴+外科手術の経験を含むので聴覚の専門家(audiologist)だけでなく、外科手術に関する専門家の意見も必要です。こちらの専門医の受付に電話で移民局からの要請を説明しても、「うちでは手術に関することは診れない」「うちには聴覚士はいない」で済まされることもあり、誰に何を依頼すればいいのかがよくわからなかったのが辛かったです。
最終的に予約が取れた耳の専門医(otolaryngologist)の秘書にも、手術歴はうちで手術してないから診れないと最初の電話で言われました。さらに最短の予約は2ヶ月後。一旦保留にして、他の専門医に連絡してみても、だいたい予約が取れるのが2ヶ月後とのこと。
そのため、日本の病院に国際電話をかけ、診断書を英文でお願いできるか聞来ました。3回の手術と、最後1回の手術が違う病院だったため、最後に手術をした病院に電話をしたところ、最後の受診が10年ほど前なので診断書を出せるかわからない、とにかく直接病院に来てもらわないと、過去の診断書を出せるかどうか答えられない、とのこと。
いや、個人情報保護のことは理解できるけど、直接窓口行かないと診断書もらえるかどうか教えてもらうことすら無理って日本国内住んでてもなかなか難しい人いると思う…と、いうことで、最後の手術の診断書は諦めました。
幸い、最初の3回の手術をした病院は、郵送での申請を受け付けてくれており、実家の母にお願いして英文での診断書をお願いしました。生後半年くらいから21歳まで定期的にお世話になった病院、神対応ですごく嬉しかった。
とはいえ、最後の手術の診断書は手に入れられなかったので、どちらにしてもニュージーランドの専門家に診てもらう必要がありそうなので、専門家の予約の前に、移民局へ電話しました。
移民局へ電話(1回目)
移民局への電話ってビザに不利に働いたらどうしよう、みたいな思いから少し緊張するんですが、電話口の男性はいい人そうでした。
状況を説明(メディカルシステムからメッセージを受け、健康診断を受けたパネルフィジシャンと連携して専門医を探しているところ)し、日本からの手術歴は提出できなそうなんだけどどうすればいいかな?と聞いたところ、提出できる範囲で、現在の症状や予後など医師の見立て(Work capability含む)など出せばOKと言われました。
そしてこの電話の後、移民局から健康診断の追加書類の提出について、期限及びなんの情報が必要なのかが記載された公式レターが発行されました。
専門医の予約
移民局から、出せる範囲の情報を出せばいいというお墨付き(?)をもらったので、耳の専門医(otolaryngologist)へ再度連絡をし、手術歴は含まなくてもいいから現在の見立て、仕事能力、予後などを診てもらえないか伝えたところ、予約へ漕ぎ着けました。そして、移民局からのレターに期限が記載されていることを伝えると、最短予約日を1ヶ月半まで縮めてくれました。
聴力検査も必要だったので、隣接する聴覚士(audiologist)にも予約を一緒に入れてもらい、聴力検査の翌日、専門医とのコンサルテーション(診察)という流れに。
専門医の予約ができたこと、とはいえ移民局からのレターにある期限内の予約はできなかったことをパネルフィジシャンへ伝えたところ、移民局に追加書類が送れる旨のレターを書くよと言ってくれました。そして、専門医には健康診断の結果及びメディカルシステムから何が必要とされているのかの情報連携をしてくれました。この辺りは、全て追加料金に含まれている模様。
わたし自身も耳の専門医(otolaryngologist)の秘書に、移民局からの公式レターを送付しました。
移民局からのレターと移民局への電話(2回目)
専門医の手配が終わったら、あとは1ヶ月半、診察の日を待つのみだったわけですが、当初の移民局のレターに記載されている追加書類の提出期限がすぎた数日後、移民局からレターが届きました。
We wrote to you on 10 June 2020 requesting you to provide further medical tests/reports by 24 June 2020. We have not received the requested further medical tests/reports to date.
6月10日に、追加情報を6月24日までに提出してとリクエストした件、こちらは何も受け取っていません。
Your physician or specialist must submit this information in the eMedical system by 22 July 2020.
パネルフィジシャンか専門医はこの情報を7月22日までに提出しなければなりません。
もう、ヒヤッとしました。
移民局とトラブルは避けたいところです。
パネルフィジシャン、レター書くって言ってたのに送ってくれてないのかな?と思いパネルフィジシャンに電話。
パネルフィジシャン側で送信メールを確認してくれ、ちゃんと送ったはずだとのことだったので今度は移民局に電話。
移民局の電話サポートに現状を説明し、パネルフィジシャンが送ったメールの日付や送付先メールアドレスまで伝えたのですが、システム上特にそういったメールを受け取ったことにはなっていない、とのこと。
こちらとしては、期限に間に合わないので遅れる旨の連絡を事前に入れていること、次に設定されている期限も専門医との予約の前の日程であることを伝えたところ、電話口の女性から一言。
「あなたのビザの担当者にメールしてくれる?」
電話の方が早いと思ってるから電話しているのに。
文句を言っても仕方ないので、OKと答えて電話を切り、電話で説明した内容をビザの担当者にメールしたら、こちらも一言。
Thanks for your reply. Dateline extended to 30 July 2020.
期限は延長されたよ、と返信が。Datelineは、多分deadlineですね。
聴力検査と専門医の診断
さて、待ちに待った聴力検査と専門医の診断。
昔、日本で2回ほど病院で聴力検査(一般的な健康診断で行うものよりも精密なもの)を受けたことがありますが、ニュージーランドの聴力検査はもっと細かいものでした。鼓膜への圧力を測ったり、ビープ音だけでなく、どの音(a, b, hなどアルファベット)が聞こえているか、骨伝導でのテストなど。
そして専門医の診察は、聴力検査の結果を下に、ビザに必要な診断だけでなく、わたしが興味のあった骨伝導の補聴器の話なども色々聞くことができました。
ビザに関する診断に関しては、「予後良好」、「仕事能力にも問題があるとは思えない」、「ニュージーランドの医療システムに影響を与えるような症状はない」といった情報を盛り込んだ診断書を書いてくれました。
追加書類提出とビザ申請の承認
専門医からの診断書をパネルフィジシャンが連携してメディカルシステムにアップロードしてくれました。そして、メディカルシステム更新後2週間以内に、無事にビザがおりました。
2ヶ月間、かなり気を揉んだりしましたが、結果的に、ビザも降りたし、ニュージーランドで信頼できる専門医を見つけられた点は良かったなと思いました。
ビザ申請全体でかかった金額と利用したクリニック・耳鼻科について
全体的にポストスタディワークビザの申請にいくらかかったのかを計算してみました。交通費は除きます。
・X線込みの健康診断:280NZD
・ビザ申請料:495NZD
・クリニックへの追加対応費用:75NZD
・日本の病院への通話料:16.75NZD
・日本の病院への診断書作成依頼料:¥3,420
・聴力検査:105NZD
・耳鼻科専門医の診察:300NZD
合計:1271.75NZD + ¥3,420
合計10万円ほどかかった計算になります。
健康診断で利用したクリニックは、オークランドシティの西側にあるVictoria Park Medical Suites
耳の病気のスペシャリストはオークランド・レムエラの
Dr.Michel Neeff
聴力検査は、Dr.Michelのオフィスと隣接している
Boutique Audiology
とても親身になってくれる良いサービスだったのでおすすめです。
そして、日本でわたしが幼少より小耳症でお世話になった神奈川県にある病院は神奈川県立こども医療センターです。先生や看護師さんはすでに多くが替わってると思うけど、アットホームで素敵な病院でした。
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