拠所

からっぽの肉体に薄煙のようなたましいが宿り、「おんな」であって「こども」であった

恐ろしかった ひとがひとであること たしかにわたしを見ていること
からっぽの肉体を揺らす ゆらゆらと揺らす からからと音が鳴る けらけらと笑う
わたしは笑っていた わたしは幸せだった

日が落ちるとわたしは皮を剥ぎ肉体を抜け出して街へ出た
裸足のたましいがアスファルトを踏みしめた
わたしはつつしんで不真面目な夜を享楽した
朝日が差し込む頃わたしはいつもここに還った

満月の光が降りそそぐ夜、わたしはひどく不安定だった
おまえが手をにぎっている間だけが呼吸であって、酸素は毛布の中だけに満ちていた
おまえがわたしを抱きしめる間だけが平穏であって、震えが治るまで目をつむった

おまえがいない空間がひどく億劫で、曖昧にぼやけた希死念慮
しにたいこと・しんでいるのかもしれないことは穏やかな深海だった

わたしの部屋はひどく高い場所にあって、ここからはおまえが見えない
わたしはおまえが見たい まだ見ていたい おまえだけがたしかにわたしの螺旋だった

おんがくが耳に満ちる こころはまだ欠けている
クローゼットの奥底で美しい紙切れが身体をひしゃげて眠っている

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