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“ことばの力”って、なんなのだろう。
「ハーイ、ヨギーズ! ハッピーチューズデイ!」。今日もヨガだ、と思い、day2 の動画を再生すると、いきなり女性がこちらに向かって挨拶をしてきたので驚いた。え、この人、昨日もいたっけ?と、よくよく思い出してみれば、昨日は生徒役っぽい感じで背景に同化するように映っていた女性だと気がついた。昨日の彼はどこに行ったのかと思えば、今日は女性の後ろで生徒役っぽく座っている。なるほど、見えてきたぞ。このヨガレッスンには、インストラクターが二人いたのだな。そして、インストラクター役と生徒役が、毎日入れ替わるのだな。
ともかく、ヨガを始める。女性の声はソフトさにさらに磨きがかかり、それはもうささやき声といってもよいくらいであり、男性のときですら聞き取りに苦労した指示は、よりいっそう聞き取りにくくなった。英語のもつ歯切れのよい部分が、すべてしゅわしゅわした感じに変換された話し方とでもいえばよいだろうか。リラックスするにはよいことだが、難易度は上がってしまった。まあ、これもまた鍛錬ということで、心の耳を澄ましていこうと思う。
ニュースを見た。各国の首相や大統領の、ウイルス感染対策の手腕を紹介したものだ。なかでも、今のところの成功例の一つとしてニュージーランドを取り上げ、ジャシンダ・アーダーン首相の施策とそれを象徴する言葉を伝えていた。それは、“Please be strong, and be kind.” という言葉だ。
ニュージーランドは、早い段階から外国人の入国を禁止し、3月下旬の非常事態宣言とともに、全土の封鎖を行っていたと聞く。日本と比べれば、これはかなり厳しい措置だというのがわかる。にもかかわらず、国全体でその封鎖生活に耐え抜き、結果、4月27日深夜から封鎖の段階的な解除が始まったのだそうだ。
人の心を動かす“ことばの力”って、なんなのだろうと、ここ数か月ずっと考えている。それはただ単に、賢そうな、しゃれた言葉を使うということではないのだろう。約1か月にわたる外出規制という厳しい政府の決断を、それでも受け入れようと市民に決意させたのには、もちろんその決断が適切であると評価されたからでもあるのだろうが、アーダーン首相の“ことばの力”によるところが大きかったのではないかと思えてしかたないのだ。人は、正論だけでは説得できないものだから。
「この危機をみんなで乗り越えるために、どうか強く、そして優しくあってください」と、人々の不安な心にも思いをはせることのできるリーダーだということが伝わったから、市民は「この人を信じて、協力しよう」と心を決めたのではないか。だとすると、“ことば”とは、その人が真剣に誠実に物事と対峙し、相手に向けて伝えたいという必死の思いで、心の底から発せられたときに“力”をもつものなのかもしれない。まだ、はっきりとした答えは出ないけれど。
ボリス・ジョンソン首相の鬼気迫る“ことば”、アンゲラ・メルケル首相の真摯で温かみのある“ことば”。他国の人間ながら自分が心を動かされたリーダーの“ことば”を、しばらくはしっかりと追いかけてみたい。
ラジオ体操は、なし。
(2020年4月28日)