実は今、春だし。
夫は、朝から自宅でウェブ会議。先日のウェブ会議では、上司のバーチャル背景が“宇宙”だったと言っていた。真っ暗な宇宙の中に漂う上司。どこを見て話したらよいのか、きっと視線が定まらなかったことだろう。しかし、自分でも試してみたくなったのか、今日、夫は初めてバーチャル壁紙を設定してみたらしい。昨年、京都で撮った桜の写真。会議参加者から、「お花見、いいなあー!」と言ってもらったらしい。満足げな顔で報告してくれた。よかった。次はぜひ、おもしろ背景に挑戦してみてもらいたい。
夫や友人など、在宅勤務中にウェブ会議をしている人たちの話を聞いていると、「何それ、わたしもやってみたい!」という気持ちがむくむくと湧いてきてしまう。もう完全にアナログな人っぽいことをいえば、「ウェブ会議」という言葉のもつ「仕事ができる人」感はすごい。どうしたって憧れてしまう。世間では、「オンライン飲み会」なるものも広まりつつあるらしい。まずはそこからか。
午後は、東京にいる古巣時代の先輩宛てに、発送の準備。仕上げに、手持ちのポストカードの中から1枚を選んで、さらさらと一筆書く。水彩で、赤い花が大きく描かれたカード。封を開けたときに、少しでも明るい気持ちになるといい。実は今、春だし。あまり満喫はできていないけれども。最後に、「お互いに、元気でまた会える日を楽しみにしています」と添える。今はもう、これしか言うことはない。
郵便局に出かけるついでに、街の様子を観察。いつものパン屋は短縮営業。いつもの花屋は店舗休業で配達のみの対応。あの割烹は来週からテイクアウトを始めるようだ。焼肉屋はシャッターが下りて、定休日なのか休業なのかわからない。小さな店の店主たちは、速やかに判断を下し、対応に移っていた。いつもの店の扉が次々に閉まっていくのは、それがたとえ期間限定を前提としたものだったとしても悲しい。
郵便局は普段どおりに混んでいて、窓口には列ができ、人がせわしなく行き交う。道を歩く人の数も、これまでとそう変わらない。緊急事態宣言の対象地域となったのだから、わたしを含めてみんな、買い物や散歩など必要最低限の外出しかしていないのだろうけれど、昨日までと何が変わったのかよくわからない光景だ。この時間に出歩くことができる人たちは、もうすでに外出時間をそうとう切り詰めている人たちなのかもしれない。この人たちにとっては、ここからさらに人との接触を8割減らすことはかなりの難題になるにちがいない。これで本当に大丈夫なのだろうか……。
帰宅した夫とそんな話をする。もうだいぶ引きこもりの生活を贈っているのに、ここからさらに8割減って、どうやったら実現できるんだろう。名案は浮かばなかった。しかたがないから、二人でワインを飲む。グレープフルーツとはちみつの香りがする。香りがわかるから、まだ嗅覚障害ではないねなどと、わりに真剣な顔で言い合う。毎日、何かしら「香りテスト」をしなければ。
就寝前、寝ぼけていたら飛び込んできたニュース。サンダース氏が、撤退を表明。
(2020年4月8日)
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