名はこうして付けられた。
うちの両親は娘たちの名付けに時間をかけない人たちだった。めちゃくちゃ雑である。
まず第一子、姉。
従姉妹が「おばちゃんのお腹の中の赤ちゃん、女の子で◯◯ちゃんや!」と突然言い始めたそうだ。
この子は何を言ってるんだろうね〜女の子ならそうしようかね〜なんてみんなで微笑ましく聞き流していたらしい。
うちの両親は、出生前に性別は聞かないと決めていて、病院にも伝えていたそうだ。
それにも関わらずお医者さんが「女の子ですね〜」と口を滑らせてしまった。
従姉妹の予想は大当たり。よって、お腹の中にいるうちから◯◯という名前でみんなが呼ぶようになり、出生届もそのまま出された。
大人になってから姓名判断で画数が最悪だということを知った姉は、両親にブチギレて、何かと画数のせいにしていた。
こんなこともあるから、大きなお世話かもしれないが、友達が妊娠した時には画数大事らしいよ!ととりあえず言って回っている。
続いて第二子、私。
病院には性別を聞かないことを念押しした両親。
お医者さんもやらかした感があったので、今度は成功。
父は昭和の頑固親父なので、後継だ!男の子だ!と男児の誕生しか信じていなかったらしい。
自分の名前から一文字取って、「ケイスケ」「カズキ」という名前も用意していた。
ところが生まれた私は女。
父は落胆して名付けに関する全てを母に委ねた。
出生届は明日までに出さなきゃいけない。
そんな日に母は、臨月でできていなかった年賀状の整理していた。
そこで知り合いの奥さんの名前が目についた。長女と同じひらがなの名前だったから。
これいいじゃん!とピンときて決定。
無事に出生届は出された。
最後に第三子、妹。
やはり性別は聞かないと決めていた。3人目ともなれば、病院ともツーカーである。
しかし平成初期、まだまだ社会は男性優位、出産にだって男の子の誕生が期待される。
母方のくそお堅い家からも次は男の子だろう。父も男の子がいい。そう言われる母はどれだけプレッシャーだったことか。
(書きながらもほんと胸くそ悪い)
長女は某国民的アニメから
「男の子なら●●、女の子なら△△」と無邪気にリクエスト。
生まれたのは女の子。あっさり△△に名前が決まった。国民的モテ女と同じ名前である。
男の子に産まれていたら、どうしていたのだろう。本当に、あの丸メガネの少年の名前で一生を過ごすことになったのだろうか。
私がネット上で使う「ぴぴこ」の名前は、本名に若干被せている。
甥っ子たちは、私のことを「ぴっぴ」と呼ぶからだ。超おばバカなので、甥っ子たちに呼ばれるこの名前は尊い。
なぜ「ぴっぴ」なのか。
私の記憶では、甥っ子1号の母親である妹が、息子を私に抱っこさせる度に「ぴっぴだよー」と仕込んでいたのが始まり。
いや、二十数年間、姉をそんな名前で呼んだことはないではないか。
赤ちゃんは繰り返しの音を習得しやすいと勉強した記憶がある。(ママ、ブーブ、ワンワン等)
愛する甥っ子に早く名前を呼ばれたい一心で、私もぴっぴを名乗るようになった。
やたら言語の習得が早かった1号。
私のことを「ちっち」と呼び始め、気づいた時には「ぴっぴ」とちゃんと発音していた。
初孫を中心に実家の世界は回っている。
今では家族全員が私のことを「ぴっぴ」と呼ぶようになったし、私も甥っ子の前じゃ一人称が「ぴっぴ」になる。それをすんなり受け入れている私にも結構驚きだ。
その後、姉も出産。やはり息子には私をぴっぴと呼ばせている。ちなみに甥っ子2号の当初の発音は「ぷっぴー」だった。可愛い。
昨年生まれたのは3番目の甥っ子も、きっとぴっぴと呼ぶのだろう。
ぴっぴをそのままネット上で使うと、困ることが起きる。
英語でもフランス語でも、「ぴっぴ」もしくはそれに近い発音でのスラングが存在する。
意味は「おしっこ」、小さい子が使う言葉だ。
このままでは私は尿を名乗ることになってしまう。
協力隊のためのアカウント。これから英語だって勉強していく。ぴっぴのままではいかん。
そんなわけで、まずは「っ」を抜いた。
そして昭和生まれは「子」を付けると可愛いと思っているところがあるので、それをくっつけた。
これにより「ぴぴこ」が誕生した。
私の好きなアイス、パピコと音が似ているところもいい。
ネットで名乗る用の名前だけど、何人かは私のことをぴぴこと呼んでくれる。
どんな呼ばれ方だろうと、名前を呼んでもらえることは嬉しい。
おばバカの極みなので、甥っ子たちの話は教え子たちにも散々してきた。
1号が誕生したことを報告したときには「これでおばさんですね!!!!」盛大に祝われた。
私の誕生日は甥っ子と1日違いなので、黒板に書かれた誕生日の祝いのメッセージには、おばさんという単語がやたら並んでいた
ぴっぴと呼ばれてると話した日には、「それディスられてるだけです!」と返された。
丸いって言いたいんだろ。
「先生!手足も短いです!」
おい、余計な一言だ。
よく読んでくれよ。
メロメロボディだぜ?小学生にはまだ早いだけだ。
高1と高2になった彼ら。そろそろメロメロボディの意味も分かるようになっただろう。
今はみんな小さいから、何の疑いもなく「ぴっぴ」と呼んでくれる甥っ子たち。
思春期が来れば「ぴっぴ」なんて呼ばなくなるかもしれない。考えただけで寂しい。とはいえ彼らが成人したときに、還暦近いおばさんを「ぴっぴ」と呼ぶことに違和感は確かにある。
どんな形でもいいや。名前で呼んでもらえるおばちゃんでいよう。