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五十のおばはんバタフライ2泳ぎ

無職になったのでジムに毎日通っている。

しかし、「何かしなければならない」と言う思いから通っているだけなので「今日のノルマはこれ!」とか「極限まで追い込む!」とかいった本格的な肉体改造をおこなっている訳ではない。

ただ、惰性で通っている。

私は毎日、惰性のジムでプールに入る。

ちょろっと歩いて、ちょろっと平泳ぎ、ちょろっとクロール。そしてまた歩く。

今日もプールで歩いていると、横のレーンがバシャバシャと騒がしい。

私が通っているジムのプールは3レーンしかなく、1レーンはウォーキング専用。残り2レーンで自由に泳いだり有料で水泳の個人指導を受けている方もいるので割と普段からみんなバシャバシャとしており、静かなことは今まであまりなかった。

しかし、私がウォーキングをしていると、今日は人が少ないにも関わらず隣のレーンから尋常じゃないくらいのバシャバシャが聞こえてくる。

「え?この人溺れてる??」

監視員のスタッフに目配せをしてみるも特にノーリアクション。

その人は溺れてはいなかった。
その常軌を逸したバシャバシャの人はスクッと立った。ぱっと見五十路に見える。あたしンちの母のようなトドみたいな、アンコ体型のおばさん。

そして間髪入れずに超バシャバシャ。立つ。2回バシャバシャ。立つ。二回バシャバシャ。

私はウォーキングをしながらそのアンコ体型の五十路を観察していると尋常じゃないバシャバシャの原因が分かった。

五十路は「バタフライ」の練習をしていたのだ。


いや、五十路でバタフライ?


しかも一人で練習?


どういう意味?


きしょ。


いやいや、別に五十路の人が水泳の練習をしていることを非難しているわけではない。

前述の通り、このジムは有料の水泳講習を実施しているし、五十、六十くらいのおじさんやおばさんが参加しているのを見たことがある。

その歳になってまでも、新しいことを体を使って学ぼうとするその心意気、素敵だと思う。微笑ましい。

しかし、


五十路の人がバシャバシャ水飛沫を飛ばし散らかし人に迷惑をかけながら独学でバタフライをしているのはキショいだろう。


そもそもなぜバタフライを会得したいのか。


ダイナミックな動きをして痩せたいのか?


いや、そもそも痩せたいだけならクロールでいい。だいたい痩せたいけどデブすぎてランニングできないからプールに入ってるであろうに、その体型でその動きは余計に腰を痛めるぞ。


「泳いでいる姿がただなんとなくカッコいい。」というだけのバタフライになぜこだわるのだ。


なるほど、かっこよく泳いでいる姿を孫か誰かに見せたいのか?


いや、アンコ五十路のバタフライほどカッコよくないものは無い。必死な顔して。肉が波及して。鼻水垂らして。滑稽だ。孫が泣くぞ。他人が笑うぞ。


バタフライを会得したいならまず痩せろ。バシャバシャバシャバシャと周りに迷惑だ。


私は、別に泳げない人を非難しているわけではない。ジムで泳いでいる人の中には25mを泳ぎ切らずに途中で立ってしまう人もいる。


しかし、彼らは決して泳ぎの練習をしているわけではない。


だが、この五十路アンコは「泳ぎの練習をしている」のだ。しかも、トレーナーをつけるわけでもなく独学で。

お前はまだ歩けない子供にウォーキングマシーンで歩く練習をさせるのか。歩けるようになってからウォーキングマシーンを利用するのが筋ってもんだろ。


はっきり言って迷惑だ。バシャバシャとうるさいし、ウォーキングをしてても泳いでいても水しぶきが顔に飛んでくる。あんたのことみんな嫌いだ。


みんなからそんなにヘイトをためて、そこまでしてなぜバタフライを泳ぎたいのか。

全くわからない。

五十路のおばはんはバタフライの他に何かすることがないのか。

独学のバタフライはおばはんがすることなのか。

「五十のおばはんバタフライ2泳ぎ」
とは、「無駄なことをして周囲から嫌われる様。」を意することわざだ。今作った。同じような状況の時に、みなさんもこのことわざを是非使っていただきたい。



とにかく、その日から私はトドとあたしンちの母が無性に嫌いになった。

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