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中検一級「不合格」体験記(後編:実際の学習〜反省)

中検一級「不合格」体験記、後編です。前編では主に勉強を始める前までにどのようなことを考えたかを中心に書いていきました。

後編では、前編で紹介した各種「戦略」(といったらだいぶ大袈裟ながら、、)をどのように具体的な行動に移したかを書いた上で、結果を受けての反省の弁を述べていきます。

筆記の記号対策

前編では、中検一級の語彙問題をクリアするために語彙力を増強させる「ボリュームアップ」(戦略V)と、知っている言葉の用法やニュアンスを理解する「ブラッシュアップ」(戦略B)を掲げたことを書きました。

戦略B:トレーニングブックの解説を作る

対策の時系列に沿って、戦略Bから書いていきます。戦略Bとは、つまり「言葉の使い方を理解する」ことを目的としています。量より質の学習で、ゆっくり考えながら覚えることが特徴的です。

一級の対策をしようと思うとやはりトレーニングブックを使わない手はありませんから、とりあえず問題集を開きました。すると知らないものが多すぎてこのまま解いてもなんの意味もないと思い、そっと閉じました。(ちなみに2年ぶりに準一級の問題を解いてみたら正答数がSTEP1は162/190、STEP2は152/195で、一級との間にレベルの差があると感じました。)

そこで、解答を見る前に辞書を引きながらiPadを使って選択肢や問題文の知らない単語の意味を書き、よくある言葉の組み合わせや例文を書き写して、自分なりの解説を作ろうと考えました。

イメージ図

STEP1とSTEP2について、とにかく辞書を引いて用法を確認し、青でメモを取りました。見開き2ページほど進んだら解答を見て丸つけをし、追加で気になった箇所は赤で追記しました。

この勉強をして気づいたのですが、中検一級の問題とはいえ、流石に辞書持ち込み可であれば8割強は正解します。残り2割は言葉の組み合わせや日本語ではわからないニュアンスの違いですが、それも現代漢語詞典の意味を読めばだいたいわかります。

こうして出来上がった解答の書き込まれた問題は、電車の中でも目を通しやすく復習がしやすかったです。答えを当てるのではなく、一個一個の言葉の意味を確認して、辞書になんて書いてあったかを思い出す作業で、一周目に時間は相当にかかりますがいい勉強になりました。

戦略V:過去問に出てきた問題を片っ端から覚える

上述の学習が一通り終わった頃、また新たに過去問を解き始めました。すると早速記号部分は見たことある言葉も増え、40点に到達することもありました。

こうして解いた問題のうち、大問2と大問3はすべてエクセルに移してAnkiというフラッシュカード作成アプリに落とし込み、スマホに自分だけの問題集を作りました。


表面


裏面(スクロールしたら解説がどんどん続きます)

このように過去に解いた全ての大問2と3の問題、計504題について、毎日数十題、一題あたり数秒〜数十秒かけて電車の中で復習しました。最初の段階では問題文と解答しか載っていませんが、解くたびにスマホに入れている辞書で単語の意味を確認し、裏面にどんどん追加していきました。物によっては20回くらい目の前を流れ、すでに各問題について非常にボリューミーな解説がついてるので、いつでもどこでも参考書より詳しい過去問演習ができるようになりました。

このデッキを作成するのも大変で、向き不向きがあるので解説はしませんが、僕はこのオリジナルの問題集を作成して毎日30分〜1時間スマホと向き合ったことで「とりあえずざっくりと意味がわかる」単語が相当増えました。成語はまだまだ分からないものも多かったものの、慣用句やことわざはかなり抑えることができ、初見でも56点中常に40〜44 程度取れようになりました

こんな感じで電子化しながらデータを集めて下記の記事も書きましたので、暇だったら読んでみてください!(何回も宣伝してごめんなさい)

その他の対策

「筆記の記号」ときた次が「その他」なんて雑すぎるだろ!というツッコミが聞こえてきそうですが、僕は今回の中検一級対策で時間の9割を語彙に使いました。。まずは56点中46点取る、これが現実的に追いかけられる目標だったからです。

和訳中訳

準一級と一級は試験時間がリスニング込みで120分あります。リスニングが大体45分ほど使うので、筆記にかけられる時間は70分程度です。これが意外と少なくて、準一級を受けた時最後焦って雑な答案を書いたという反省がありました。

そこで、和訳中訳の質もさることながら、それぞれ20分程度で満足いく作文を書き切る訓練をする必要があると考えました。そのため5回分の問題をとりあえず20分以内に解いて、中訳についてはその後も1〜2回同じ問題を解いて時間感覚だけは身につけておきました。

中訳はトレーニングブックのSTEP3、71〜80についても、特に時間は意識せずに解きました。意外と一級の作文は普段自分では使わない固有名詞が出てくるので、「あ〜、、なんていうんだろう」となりそうな語彙を潰す意識を持っていました。

リスニング

大問3の書き取りは、書き取る時間が比較的短く手が痺れるくらい速く書く必要があるので、その練習をと思い何回か過去問を解きました。104回だけは全く書けず、漢字や句読点の間違い、空白を-1点としたときに17点しか取れず絶望しました。やばい回に当たると開始30分で落ちるとは、なんて素敵な試験だと思いました。

試験結果と反省

こんな感じで勉強をして、帰ってきた結果がこちらです。

◯リスニング:77
大問1、2(長文聞き取り):35/50
大問3(書き取り):42/50

◯筆記:74
大問1〜3(記号):42/56
大問4(和訳):14/20
大問5(中訳):18/24

筆記の記号問題

開いた瞬間、「し、し、知らね〜〜〜」と心の中で叫びました。成語も見たことないのが多く、大問2に至っては前半3問が皆目見当も付かないという具合。結果は16/20 12/20 14/16で合計42点。事実上唯一の目標であった46点すら超えることができませんでした

語彙問題を分析した記事でも書いたのですが、中検一級の本当に難しいところは、まさにこの大問2の冒頭3問にあるような、二字熟語の問題です。こればかりは、いかに問題集や過去問を頑張っても歯が立たないと思います。

第110回中検一級大問2

おそらく、僕が見たことのないと思った各種熟語も、分かる人にとってはとっくの昔から知っている言葉なのでしょう。というか、覚えたことも忘れるくらい、それぞれの言葉と接しないといけないのでしょう。付け焼き刃で短期記憶に数百の単語を入れても、85%には決して到達できません。

初めて107回の過去問を解いた時、あまりに分からないので中国人の友達複数名に解いてもらいました。すると、当たり前に56点。「中学生か高校生くらいなら出来ると思う」と言われました。

つまり、学習者目線でいかに難しいと感じようと、長く中国語に触れていれば間違いなく知っている言葉たちが出題されているんです。普通の中国人が、普通にわかるレベル。この「大いなる普通」を、我々中国語学習者は「神のレベル」と呼んでいるわけです。「普通」がいかに得難いのか、今回の試験でよくわかりました。

和訳中訳

和訳中訳は、記号問題ほどの絶望感はなく、実力を出し切った結果の点数だったと思います。

和訳の問題

この2題に対して、以下のような答案を書きました。(括弧内は模範解答)

  1. 少なくない数の十分にはやっている流行語は、各分野を一定の間騒がせたのち、すぐに大波に淘汰されてしまい、ほんのわずかな数しか残らなくなる。(かなり広がった流行語でもその多くは、それぞれがしばしの間注目を集めてから、アッという間に大波にさらわれ、淘汰され、極めて少数しか生き残ることができない。)

  2. ネットの流行語の大きな特徴は、自由で、気軽で、ユーモアがあり、自虐的であることだ。そのため正式で、厳かな場面では使わない方がいい。(ネットの流行語の大きな特徴は、気ままで、気楽で、諧謔的で、ふざけてさえいて、そのため正式で、厳かな場で使用するのはふさわしくないというものである。)

失点した6点は、「十分にはやっている」「騒がせた」「自虐的」でそれぞれ-2点でしょうか。それとも、単語のミスにつき-1点、言い回しのぎこちなさに-1点が積み重なっての-6点でしょうか。採点方法はわかりませんが、もう少し日本語らしさを重視しても良かったかもしれません。

中訳については「ランキング」を、何を血迷ったか「排榜」と書いてしました。他にも、日本語独特の単語を説明口調の中国語にしたりと、勉強不足が否めない結果となりました。それでも18/24というのはむしろ若干高くて、訓練次第でもっと高みを目指せるかな、と感じました。

リスニング

今回の試験で一番ボロが出たのがリスニングだったと思います。僕は普段中国語を聴く練習をしておらず、完全に留学の時の貯金で戦っていました。準一級を受けた時の記号問題で40以下はないと思っていて、一級も最低40だと意気込んでいました。

しかし、実際は過去問1回解いて35点で、思っていたより自分の耳が良くないことにショックを受けつつ、結局本番も35点止まり。解いている最中も、多分これかな、という思考で選んでおり、全く中身をわかっていませんでした。

書き取りは、一番最初の「想必」が聞き取れず、初っ端から「想意」と書いたり、「双刃剑」が全く何かわからなかったり、「:」を使わなかったり、書きながら泣きそうでした。40いってないと思っていたので、42は正直嬉しいです。

日本にいて中国語を普段使っていないので、どうしても聞き取りは疎かになりがちです。听写も月に数本くらいやりますが、それだけでは全く足りないでしょう。ドラマや動画を見続けるのは苦痛で実践できない身としては、今後どうやって耳を鍛えるかがなんだかんだ最大の課題だと多います。

最後に

今回、中検一級を受けてみて、やはり自分の現在の実力では全く合格には届かないと感じました。ですが、届かなかったにせよどっちも10点アップすれば受かるレベルなので、世間で言われているような「神のレベル」ではないこともよくわかりました。

先ほども書いた通り、一級に出てくる語彙は「大いなる普通」の語彙ですし、和文中訳に出てくる日本語は小学生でも確実に理解でいる平凡な文章です。同じ文章を日本語で読んで難しいと感じることは絶対にないので、やはりこれも「大いなる普通」なのだと思います。

日常で遭遇する出来事の全てを、中国語で受け取り、発信できること、これが中検一級のシンプルな要求なんだと思います。テクニカルかつ小手先の効率を高める術をたくさん書いてきましたが、明日できなくなることを今日形だけやっても仕方ありませんから、焦らずに一歩ずつ普通の中国人を目指してまた頑張り直したいと思いました。

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