「インフルエンス」読書感想文
近藤史恵さんの「インフルエンス」を読みました。
近藤史恵さんの本を読むのは2冊目です。
数ヶ月前にたまたま「私の命はあなたの命より軽い」という本を見つけて、
タイトルに惹かれて、裏表紙のあらすじを読んでも面白そうだったのでとりあえず読んでみました。
これがすごい面白くて読みやすくてサクサク読めたので
この人の本を他にも読んでみよう!と思って色々調べたところ、1番気になったのが今回読んだ「インフルエンス」でした。
こちらもまたすごく面白くて、先が気になってしまい2日で読み終わりました。
ずっと不穏で暗くて、複雑な感情が描かれたミステリー小説でした。
団地に住む女の子3人がメインの話です。
彼女達の小学生〜中年期までを描いたお話。
友梨は、同じ団地に住む友達の里子がお祖父さんから性的な虐待を受けていることを察したものの、気付かなかったフリをし、その罪悪感を抱えたまま中学生になります。
そして同じ中学で、憧れの存在であり友達の真帆が暴漢に連れられそうになるのを助けようとして、友梨は男を刺してしまう。
しかし何故か翌日、捕まったのは里子だった。
あらすじはこんなところです。
この3人が同じ団地に住む3人ですがそれぞれ全然違う育ち方をしていて
友梨は地味でクラスでも目立たないタイプ、
真帆は美人で育ちも良く、人気者なタイプ、
里子はヤンキー的な、悪い意味で目立っていたタイプ。
この本は友梨の目線で物語が進んでいくのですが、
私は友梨に自分がすごく似ていると感じました。
弱者をいじめたり馬鹿にしたりする人に対して嫌悪感を持つし、加担はしないし普通には仲良くするけど、
必要以上に仲良くするほどは優しくないみたいな、悪い奴でも良い奴でもない感じ。
で、バカにされる立場にたまに自分もなるみたいな。
共感したのは、当時同じクラスだっただけのいわゆる一軍女子的な子との、とあるやりとりを思い出した時の友梨が
"優しくしてくれた人のことより彼女達の冷たい目線の方がよく覚えている"
みたいなことを言っていて、すごくわかるなと思いました。
ここは読んでいて胸がギュッとなる描写でした。
また、大学生かなんかのときの友梨の気持ちとして、
"これから自分が美しくなることも、たくさんの人から愛されることもないということをわかっている"
みたいなことを言うのですが、ここも胸が苦しくなる共感ポイントでした。
そこに対してある程度諦めはついているのですが、こんな悲しい自覚はないなと客観的に思いました。
共感ポイントはここまでにして物語の感想としては
3人の関係や感情が複雑すぎて難しいと思いました。
友情が硬いっていうのも多分合ってはいるけど
罪悪感の悪用が連鎖しているのもなんか酷いなって。
でもこの複雑さがこの物語の面白さだと思います。
上手く言えないけど、なんか気持ちはわかる気がするみたいな感覚はありました。
"自分よりも大事な友達がいることにムカつく"みたいな感覚って私も持ったことは多分あるし、
でもそれってめちゃくちゃだし、思春期って本当に難しいなと思いました。
子どもの頃の感覚ってまともじゃないし複雑なので、周りの大人が大事だと思いますが
この3人の周りにいる大人(というか親)が良い人ばかりじゃないのも、こじれた要員だよなーと思いました。
そして何より、この物語の中で起きることはすべて男性の欲からくる加害性がきっかけです。
そこに憤りを感じてしまいました。
だからこそ女性の結託みたいなものが生まれたと思うし。
「わたしの命はあなたの命より軽い」もそうなのですが、
女性の作家によって作られた作品だなと感じられる描写が散りばめられていて、
それが個人的に刺さるポイントのひとつかなと思っています。
途中、友梨がお付き合いしている男性から、自分は正しいことを話しているのに
相手の知識が浅いせいで馬鹿にされて笑われ、
さらにそれを他の人の前でネタにされみんなに笑われる。
でもそれを、バカなフリをしておく方が楽、ノリが悪いと思われたくないから正しい知識でわざわざ説明しないというような描写がありました。
私は、"女性はバカな方が可愛い"みたいな価値観が大嫌いですし、
こういう時、どんどん理詰めして論破してほしいと思います。
ですが自分自身がそういう立場に立っている時
マジレスして空気壊すのもだるいし、こんな奴らに頑張って喋るのめんどくせーからもういいわ、ってなるんです。
結局自分もこの圧力に負けてしまっているなって思います。
そのあたりもまた友梨と重なってしまって嫌でした。
全体的に個人的すぎる感想を色々書いてしまいすみませんでした。
読み終わってすごく悲しい気持ちになりましたが、
先が気になりサクサク読み進めました。面白かったです。