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ニセコの地域に根差す 日本酒の作り手がウイスキーとジンづくりに挑戦 北海道

 新潟県で日本酒の八海山などを長年、製造している作り手がグループ会社・株式会社ニセコ蒸溜所を2019年に設立。ジンやウイスキーづくりに取り組んでいます。同蒸留所では見学ツアーを行っており、蒸留酒づくりについて学ぶことができます。

木材と人工物がマッチしたモダンなデザインの建物


ニセコ蒸溜所の外観

 木々に囲まれるニセコ蒸溜所。コンクリート打ちっぱなしの外壁と大きな黒い三角屋根がなんともモダンで、まるで現代絵画のギャラリーのようです。建物の中に入ると、木材をふんだんに使った空間が広がります。地元の後志(しりべし)のカラマツを使用していて、「2000本ほど使っている」と話すのは伏原光花さん(ニセコ蒸溜所)。


蒸溜所の室内

 そして室内でひと際目立つのが、2台の背の高いウイスキーの蒸留器です。銅製のため暖色寄りの室内光を反射し、赤色の金属光沢がやさしく輝きます。

 興味深いのがその形。底部に大きな膨らみがあり、上にいくとくびれています。最上部では直角に折れ曲がり、他方の蒸留器と連結。2台の蒸留器の形が全く同じでないのも面白いです。

 さらに同蒸留所にはショップとバーも併設。バーではここでつくられているジンや、そのジンを使ったカクテル、ノンアルコールのカクテルなどを楽しめます。またショップには、酒類や食品などに加え、日本全国の伝統工芸品が並んでいます。「海外から来るお客さんも多いので、日本の良さを発信できる場にできたら」と伏原さんは意気込みます。


蒸留所内のショップ

ツアーに参加 蒸留・熟成過程を見学

 記者も見学ツアーに参加。ウイスキーとジンの製造過程を見せてもらいました。


ジンの蒸留器

 まず最初に目に入ったのがジンの蒸留器。ニセコ連峰の主峰のニセコアンヌプリの伏流水を使い、「ohoro GIN」を製造します。オホロとはアイヌ語で「続く」を意味する単語。ニセコで生まれたジンがこれから先、長い間愛されて欲しいという願いが込められています。

 材料には北海道ニセコ町産のヤチヤナギや二ホンハッカ、そしてジュニパーベリー、コリアンダーといった13種類の植物を使用。そのうちの6種類は一晩、ベースのスピリッツに漬けこんだ上で、翌日、蒸留すると言います。

 さらに蒸留所内でひときわ目立っていたのがウイスキーに使う器具や材料。その量や大きさには目を見張ります。伏原さんはウイスキーづくりの工程について語ります。


粒の大きさによって違った呼び名がついている

 まず初めは粉砕。蒸留所の一か所に大麦が1トンほど詰まった大きな袋がずらりとならんでいます。この大麦はグリッツや小麦粉サイズまで細粉されます。 

 2つ目の工程が仕込み。細かく砕かれた大麦と温めた仕込み水と一緒に混ぜ合わせます。この過程で起こるのが糖化。麦芽の酵素が大麦のデンプンを分解し、麦汁ができます。


木製の発酵槽

 3つ目が発酵です。ニセコ蒸溜所で使っているのが木製の発酵槽。これに麦汁と酵母を投入し4日ほど発酵させることで、もろみ(ウオッシュ)ができあがります。


ウイスキーの蒸留器

 4つ目が蒸留。スコットランドのフォーサイス社製の蒸留器を用いて、2段階に分けて行います。

 1回目の蒸留で使われるのがスコットランド伝統のストレート型のポットスチル。もろみをこのポットスチルに入れ、6時間かけて蒸留します。

 そして翌日、2回目の蒸留に進みます。この蒸留ではネックの部分に球状の部分があるバルジ型のポットスチルを使用。アルコール度数を高め、ウイスキーの原酒(ニューポット)ができあがります。

 5つ目が樽詰め。蒸留によってできたニューポットは貯蔵庫で樽詰めされ、熟成の過程に移ります。


貯蔵庫内に保存されているウイスキー樽

 貯蔵庫に一歩足を踏み入れてみると、部屋いっぱいに広がるアルコールと豊かな木の香り。ここの空気を吸っているだけで酔ってしまいそうです。ウイスキーの樽が所狭しと積み上げられており、その数は約460個。また、さまざまな種類の樽を使用しています。

 ジャパニーズ・ウイスキーと呼ばれるには3年以上の熟成期間が必要。ニセコ蒸溜所で初めて樽詰めしたウイスキーは今年の5月で3年経ちましたが、「長い年月をかけて熟成させてゆくので、発売は未定だ」と伏原さんは話します。

ツアーの最後に「試飲」! ニセコ・ウイスキーの発売が待ち遠しい

 見学ツアーの最後は念願の試飲の時間。蒸留所に併設されているバーで、ohoro GINやグループ会社・八海醸造がつくる魚沼ウイスキー、生ビール、ノンアルコールカクテルをいただけます。魚沼ウイスキーを試飲できるのはここだけだと言います。

左:ニューポット 右:魚沼ウイスキー

 記者が飲んだのは、ニューポットのウイスキーと魚沼ウイスキー。まずはどちらもストレートで試飲しました。

 ニューポットをほんの少し口に含むとガツンと強いアルコールの衝撃。荒々しい印象でまだまだ香りも薄かったです。

 次に待ちに待った魚沼ウイスキー。コメを主原料につくられており、一風変わっています。こちらも少量ずつ口に運んでみます。するとアルコールの力強い口当たりの後に、甘く芳醇な花のような香りが広がります。

 「水を入れてみよう」。グラスの中に数滴水を落としてみます。するとウイスキーと水の化学変化を起こします。飲んでみたら繊細な香りまで感じ取れるようになり、より一層香りの深みが増しました。

 「ニセコ蒸溜所のウイスキーはいつ出来上がるのか」。ウイスキー愛好家たちは、首を長くして待っているでしょう。

ニセコ蒸溜所
住所は北海道ニセコ町ニセコ 478-15。見学ツアーは1日に3回実施。料金は税込み1000円で事前予約が必要。

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