死神の精度:詩
「死神の精度」を見たので
剣崎克彦
波打ち際に
初老人の死体が打ち上げられた
事故か
はたまた自殺か
体に傷はない
安らかな
まるで微笑んでいるような
顔から見ると
それは
苦しんで死んではいない
月光に照らされて
神々しくさえ見える
一生を精一杯生きて
満足してこの世を去った顔だ
ベートーベンのピアノソナタが
どこからか響き渡り
波がさざめき
再び老人を海へ引き戻す
微かな光の海に沈んで行った
死神はそれを見届け
深いため息をついた
1枚目
ウィリアム・ターナー「月光、ミルバンクより眺めた習作」(1797年)
2枚目
ヴィンセント・ファン・ゴッホ「星月夜」(1889年)
標題
パウル・クレー「月光」(1919年)
これも大好きな絵3枚。
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