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映画パンフレット感想#12 『π<パイ> デジタルリマスター』
公式サイト
公式X(Twitter)アカウントによる紹介ポスト
『#π <パイ>デジタルリマスター』パンフレット
— SHOCHIKU シネマ ブックス (@S_CINEMA_BOOKS) March 13, 2024
■□■3.14 発売■□■
90sカルト映画の傑作。
モノクロ映像をそのまま封じ込めたようなデザインです。
~寄稿~
■#春日武彦(精神科医)
□#鈴木創士(フランス文学者)
■#山口雅司(数学講師)
□#森直人(映画評論家) pic.twitter.com/SJaVXmkR41
さらに、
— SHOCHIKU シネマ ブックス (@S_CINEMA_BOOKS) March 13, 2024
■日本公開&来日時(99年)のアロノフスキー監督の初々しいインタビュー再掲
□キーワード紹介(by#森直人)
■フィルモグラフィー
などなど、監督のこれまでの活動も振り返ることのできる内容となっています。
【B5縦変形/44頁/税込1,500円】#π pic.twitter.com/YI1o4yZn3M
前置き
例外的ではあるが、感想の前に触れておきたいことがある。上記に引用した公式のXアカウントによるパンフレット紹介ポストについてだ。見ての通り、掲載記事の詳細や、特記すべき特長、冊子の仕様や外観など、細部まで明らかにした非常に丁寧な紹介である。さらに今回調べて知ったのだが、このポストは『π<パイ>』専用のアカウントでなく、パンフの制作を手がけた松竹の「SHOCHIKU シネマ ブックス」アカウントによるものだった。どうやら自社で制作したパンフの紹介は、同アカウント上で全て網羅しているようだ。
SNS上でパンフレットの情報をアナウンスするのは今や珍しくないが、映画作品ごとのアカウントで投稿されることが多く、その情報の質にはバラツキが見受けられる。ところが同アカウントでの紹介ポストは、どの作品のパンフレットにおいてもこの『π<パイ>』のように詳細な情報が明記され、購入の検討材料になるし、何より魅力が伝わってくる。このように、確実に十分な情報が得られる信頼できる発信元があると安心できて良いと思う。
また、これらの取り組みは、時間と手間とお金をかけて大切に作り上げたパンフレットを、ユーザーにしっかり届けようという気持ちが伝わり、非常に好感が持てる。すでに同アカウントやその取り組みを認識されていた方にとってはもはや当たり前に感じておられるかもしれないが、私は今回はじめて知り得たため、どうしても書き記しておきたかった。
感想
公式の紹介ポストにもあるとおり、44ページの大ボリュームで、記事も多方面で充実しており、実際、読後感も「たらふく食った!」と満腹気分に浸るようなものだった。記事ごとのテキスト量もしっかりあり、読み応えもある。また、ほぼ全ページに劇中のビジュアルが散りばめられており、かつ白黒(および中間色)以外の色は一切使用されていないため、モノクロの映像が特徴的な本作の雰囲気に再び浸るような体験ができる。
紹介ポストに「監督のこれまでの活動も振り返ることのできる」とあるが、内容はそれ以上のものだった。監督のこれまでの作品(『ブラック・スワン』『ザ・ホエール』など)を引きながら監督の作家性を見出したり、監督作品に見られる共通の傾向を分析するなど、森直人氏が踏み込んだ論考を展開させている。ある種、“『π<パイ>』のパンフレット”の枠組みを超え、“ダーレン・アロノフスキー監督作品解説集”にも近い域に達しているといっていいかもしれない。
以上のとおり、パンフレットとしてのクオリティは群を抜いて良い!のだけれど、どうしても気になってしまうのが1,500円という価格である。正直第一印象では「映画1本のパンフレットに1,500円……??」とたじろいでしまった。装丁を簡素化してでもせめて1,000円〜1,200円に抑えてほしかったというのが本音である。難解気味な映画で、カルト風味でもあるが故、強気にいけたのかな?と邪推してみたくもなったりするが、この記事数とクオリティならば納得するしかないか……。とはいえモノは太鼓判を押せるので、お財布と相談しながらぜひ検討を。