エデュケーション/タラ・ウェストーバー
ひっさしぶりに本が面白くて隙間時間を見つけては本を読みそしてページをめくる手が止まらないという体験をしました。
親の信念によって出生届を9年出されず、公共教育を受けずに育ったタラ。
そんなタラが自力で大学へ行き学者になり、家族との引き裂かれるような決別のために精神を崩壊させそれでも別の道を選ぶという決断に至るまでの壮大な人生を綴った一冊。
環境や家族の今にでも不安で押し潰されるのではないかという狭い箱庭で閉塞感とありもしない物事への不安に対するの焦燥感。
ありもしない世界を作り上げること、ありもしない不安を信じること。
さういう出来事を「思い出す」ことができる人はこの本を読みながら同じように息苦しさを取り戻すことになると思う。
激しい暴力と事故はにわかには信じ難いかもしれないけど、このような出来事はあり得ると知っているから、怒りしかわかなかった。
精神的だけではなく肉体的にも追い詰められ家族という愛を人質に奴隷を作り上げていくおぞましさ。
そう、今ならそれが「おぞましいこと」だとわかる。
そしてそこから決して出ていかないと信じきっていた幼少期、その信じた愛を疑うことへの恐怖と教育をうけることによって成長していく心に比例して
置き去りにされていく故郷と家族への苦悩。
これは見たことのある感じたことのある空気だと思ったし、宗教とか国とか関係なくこれが隣の家で行われているということなんだと改めて思い出した。
少しでも、この本がたくさんの人に届いてほしい。
翻訳本だけどさすがの村井先生のお仕事できちんと日本語の本として読めます。
オーバーリアクションではない、イメージだけの言葉ではなく、きちんと作者に寄り添った言葉が、この一冊をより現実的なものにしていました。
この本を書いたという結論を 知っているから希望を持って読めてよかったです。