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たまたま隣り合わせたおばあちゃんに心が救われた話
心が疲れ果てて、何も考えたくない日が続いていた。
同棲中の彼とはうまくいかず、数日家出をしている。
地元の父は体調が良くなく、母がその介護で神経をひとり擦り減らしている様子を毎日電話で聞いている。
私自身も、もうアラサー。
元々ポジティブシンキングではないけれど、
一向に進まない結婚の話や、積み上げている実感のないキャリアなど、自分の将来のことは先の見えない闇の中にあるような気がしていたし、
もちろん年々年老いていく両親のことも心配だ。
おまけに私自身の体にも病気が見つかった。
現在は飲み薬で治療中だが、
副作用の胃のムカムカで大好きなコーヒーも飲みたくない。
私を取り巻く何もかもに心が疲れ果てて、何も考えたくなかった。
そんな中、両親の様子を見に帰省することになった。
地元までは新幹線で2時間。
仕事終わりでもギリギリ帰れる距離だ。
木曜の夜、新幹線の自由席は比較的混んでいて、
2人がけの窓側に座ってすぐ、隣に大荷物のおばあちゃんが座ってきた。
ハイキング帰りかのような大荷物で、
座るより前に、持っていた大きな手荷物2つを座席に置いて、
狭くなったスペースには、座るというより
ちょこんとお尻を乗せるだけ。
上の荷物棚に手荷物を載せましょうかと声をかけようと思ったけれど、やっぱりやめた。
気力がある時は人に親切にできるけれど、今は正直そんな余裕はない。
私はイヤホンをして、何も考えずにぼんやり
見続けられる動画をひたすら漁った。
そういえば、最近無表情でいることが増えたな、と
ふと思う。
隣のおばあちゃんは、各席に備え付けの車内誌を読んでいた。
1時間くらいすると、おばあちゃんは次の駅で降車するようで、荷物をまとめて席を立った。
すると、私に向かって何か話しかけてきた。
イヤホンを取ると、おばあちゃんはにっこりと
お気をつけてね。
と微笑みながら伝えてくれた。
びっくりしたけれど、私は反射的に、そちらもお気をつけて、と言った。
それを聞いたおばあちゃんは凄く嬉しそうな顔になって、
お身体に気をつけるのよ、と言って、新幹線を降りていった。
それだけのことなのに、気づいたら涙が出てきた。
よっぽど私から負のオーラが出ていて気を遣ってくれたのかもしれないが、
見ず知らずにもかかわらず優しい言葉をくれる人がいることが、今の私にはあまりにもありがたかった。
涙を拭って窓を見たら、ホームでおばあちゃんが手を振っていた。
一緒だった様子のご友人たちを先に行かせて、
1人ホームに残って新幹線が発車するまで手を振ってくれていた。
私も負けじと見えなくなるまで手を振りかえした。
たったそれだけのことだけど、あまりにも、温かかった。
急いでnoteに書き残したくなるくらい、嬉しかった。
私もやっぱり、大きな手荷物を荷物棚に載せましょうか?って聞いてあげたらよかった。
ああやって、少しの優しさのかけらを渡せる人になれるように歳をとっていきたいな。
さっきまで、将来が真っ暗闇で、時間が過ぎていくのが怖くて、時間が止まればいいのになんて思っていたのに。
見ず知らずのおばあちゃん、今日の私の心はあなたに救われました。
ありがとう。