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2021筑波大国語/第二問/解答速報
【21筑波大国語/第二問/解答速報】
出典は内田百閒の小説「冥途」
問一「しめやかな団欒を私は羨ましく思う」(傍線部分(1))とあるが、これは「私」のどのような状況を表しているか、述べよ。
〈GV解答例〉
隣りの腰掛で身を寄せ面白そうに話しあっている一連れの客の声が、私に悲しみを伴うなつかしさを感じさせながらも、その様子や話の内容が分からず、孤独でもどかしい状況。(80)
〈参考 S台解答例〉
一人でめし屋にいる自分の隣席の、自分と関わりのあるらしい人と連れとの穏やかな親密さに羨望と疎外感を覚え、もの悲しい思いを抱えて自席で身を固くしている状況。(77)
〈参考 K塾解答例〉
土手の下の一ぜんめし屋で、隣の連れの中にいる年寄りの声を聞き、たまらなく悲しくなるが、そのわけもわからないまま、ただ一人でじっと身をひそめている状況。(75)
問二「私は、日のあたっている舟の形をした庭石を、まざまざと見るような気がした」(傍線部分(2))とあるが、どうしてか、述べよ。
〈GV解答例〉
隣りの客の話に出た庭石は、私の記憶の中にある、蜂の入ったビードロの筒を父が打ちつけて砕いた、当時の住まいの庭にあった舟の形をした庭石と重なるように思われたから。(80)
〈参考 S台解答例〉
不可解ななつかしさのなかで隣りの人の話を聞いていたが、話の内容からその人が自分との過去の思い出を語る父であるように思われ、当時の情景が鮮明に思い起こされたから。(80)
〈参考 K塾解答例〉
気になる人の声がはっきりしてくるにつれ、なつかしさがあふれ、その人物が語る蜂と「子供」の話が、「私」自身の幼児の記憶として鮮明に蘇ってきたから。(72)
問三「私は、その声を、もうさっきに聞いていたのである」(傍線部分(3))とあるが、この一文は、どのような表現効果を持っているか、述べよ。
〈GV解答例〉
亡き父の声と確信させる人物に出会い、なつかしくもその姿がはっきりと見えず、私の前から去っていく場面で、物事の時間的な前後が混乱する様子を描くことで、私の気の動転と現実離れした場の雰囲気を醸し出す効果。(100)
〈参考 S台解答例〉
父の声が時間的な遅れをもって「私」の耳に浮かび上がってくるさまを描くことで、父と「私」がそれぞれに身を置く世界が異質なものとして隔てられていることを示しながら、全体が夢の中の話のように描かれた物語の幻想性を強めている。(109)
〈参考 K塾解答例〉
すぐ隣にいるのに、「私」の声は向こうに通じず、父の声は時間差で聞こえてくるという、「私」と父たちとの間の不思議な隔たりを表すとともに、この小説がリアルな世界ではなく、「私」の心象によって構築されていることを示す効果。(108)
問四「私はその影を眺めながら、長い間泣いていた」(傍線部分(4))とあるが、どうしてか、説明せよ。
〈GV解答例〉
私は幻想の中で亡き父と確信させる人物に出会いながら、父は私に気づくことなく、また私にはっきりと姿を見せることなく立ち去っていった。そこに取り残され涙するうちに我に返り、失った父を今も求めている自分の孤独な姿を思い、改めて悲しさが増したから。(120)
〈参考 S台解答例〉
人なつかしい思いで孤独に過ごしていためし屋で、隣りの一団の中に父を見いだしたと思ったが、呼びかける自分の声は届かず、去っていく一団を追うこともできぬまま、父の存在が遠く失われていくのを感じ、一人残された自分の影を見ながら、父との再会は願ってもかなわなくなっていることを思わされ、こみあげる孤独感と寂寥感をこらえることができなかったから。
(168)
〈参考 K塾解答例〉
人なつかしさが身に沁むような孤独な思いでいたところ、はしなくも父に再会したと思ったが、連れと語り合う父の声は聞こえるものの、「私」が泣きながら呼びかけた声は父に通じず、そのまま別れ別れになり、一人取り残されたことで、さびしさがいっそう胸に迫ってきたから。(127)
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