ドミニク・ミラーの「痛み」と「闇」
ドミニク・ミラーのECM移籍後の2作について纏めていたのですが、教授がお亡くなりになったりで、心が落ち着かず。そうこうしてたらドミニク・ミラーについても私は頭が混乱する事態に陥ってしまいました。
皆さんにとって、ドミニク・ミラーってどんな人でしょうか?
やっぱり大抵の人にとっては「スティングの横で長く彼の右腕になっているサイドマンのギタリスト」で「穏やかで静かな佇まいで”Shape of My Heart”を弾く紳士」ですかね?
はい。そのイメージを壊したくない、とか余計な事考えたくない人はここから先は読まない方が吉、です。私は今、これから”Shape of My Heart”をどういう気持ちで聴けばいいか、非常に悩んでいます。いや、「すました顔して弾いてんじゃないよ!」って感じかな…。
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読みたい方は以下どうぞ。
今の彼の音楽は非常に洗練されている、と言ってもいい美しい世界観の音楽です。
しかしこれはとてつもない彼の「痛み」と「闇」の部分と引き換えにして作られたものだと解りました。これはYouTubeで見る彼や、SNSで見る彼では恐らく想像がつかない部分だと思いますが、私は彼に関するネタ探しでとある事を調べているうちに、そういったものと触れる事になりました。
色んな所で目にするドミニクは非常に紳士的な人です。そういうエピソードも溢れてるし、そしてそれは実際そうなんだと思います。
ただ、私に言わせると彼は、
「音楽の神様と悪魔の契約を結んだ人」で「音楽と引き換えに他の物を悪魔に売った人」ですね。
そして「あの音」の代わりに、深い孤独と永遠の旅を与えられた人です。そして40年以上の彼の音楽生活で、彼は見る必要のない、いろんな物を見過ぎてる気が私はしました。
まあ、音楽以外のものを悪魔に売ったために生じた色んな「痛み」を一応彼は自分の中で引き受けてはいます。しかしやはり相当にそれは苦しみとして襲ってくる事があるように見受けられました。
私にとって、彼の「Absinthe」というアルバムは「完璧な1枚」に近いものです。
だけど私はあの音楽と、世間一般に溢れている彼のイメージとは少しだけ乖離している部分を感じていました。しかしこれでなんとなく理解できた気がしています。彼の中にある多面性と「抱えている闇」の部分が無ければ確かにあの「Absinthe」の複雑な音楽は作れないと思ったんで。
彼は旅を辞められない。1年のうち10~11月も音楽の為に世界を飛び回っている人です。同じところに長く居られない。長く居ると不安になって落ち着かないから「そこから逃げる為」と彼は言っています。
あと基本的に「音楽が介在していない他人との関係は持続させる事が難しい、悲しい事にそういうものは自分で壊してしまうんだ」とも言っています。これは家族も例外ではなさそうです。
今非常に仲が良さそうに見えますが、息子のギタリスト、ルーファスなどとの関係でも相当な悩みがあったようです。
というか、彼の語っている内容から推察するに、ミラー家の子供達がほとんど彼と同じ音楽の道に進んでいるのは、「音楽を介在させないと父親・ドミニクとの関係を築く事が難しかったのではないか」と感じました。今はもうルーファスも音楽をやっていい歳なので、父親の苦悩も理解して解決してるのかもしませんが。
基本的にドミニク・ミラーは「ナルシストの芸術家」の典型です。本人も認めてます。だから距離を置いて眺めている分にはどうって事ないでしょうが、近しい人には結構大変な「困ったちゃん」だと思います。対ファンには無いでしょうが、「温厚で紳士な人」だと思って近づいたら痛い目みさせられるでしょう。
彼が昔から周囲に発している、あの「色気」の正体はこれでしょうね。
しかし対・音楽については非常に誠実な人ですから、音楽の話をして居るときは基本的に真剣でそれには嘘はありませんし、いつも大抵同じ趣旨の内容を筋を通して言ってます。これは非常に参考になる。ただ、一方で製作した曲の内容などに関して聴かれると、結構そのまま額面通り受け取れない事言ってる事も多いです。ECM移籍後の物はそんな事はないですが。
言えるのは、とにかく「一つのイメージに縛られたくない」という思いと、「求められて居る事を欺きたい」という強い思いですね。まあこれはアーティストなら誰でもそう思う部分かもしれませんけど。
ドミニク・ミラー「本物の男、真面目な男を聴きたいなら、パット・メセニーやマイク・スターンを聴けばいいんだ。」
これ、私はお腹よじれました。大爆笑です。この人、メセニーは尊敬してます。メセニーグループの「Offramp」とかかなり影響受けたようです。ですが、上の言葉を意訳しますと、「自分は勉強不足の俗人でムラがある人間で、未完成の悪い男だから、完璧なものを求めるならあっちを聴け。(でも自分の音楽には彼らにはない不完全で悪い部分があるから面白いんだよ!優等生な奴はあっち聴いてろ、うるせーよ!)」って事です(笑)
どうしてもメセニーとは比較される事があるんでしょう。しかし私は常々メセニーよりドミニクの音の方がとにかく「人間臭い」と思ってましたが本人もその辺自覚はしてるようです。
しかし完璧に近い美しい世界を作る人だし、彼も63歳です。だから色んな事にもう少し「達観している人」だと私は思っていたけど実はそうじゃないみたいで、現在進行形でまだまだ彼は何かを探してもがいているようだし、旅は終わらないんだろうと思います。そして「孤独」も変わらないようです。(少なくともAbsintheの頃はそうだった様子なのでもうこれは無理でしょう。諦めろ!!!)
でも私は彼のそういう葛藤している姿や人間味溢れる部分がとても好きですね。
あんなに洗練された音楽を作って居るのに、ここまで生々しい人間臭い部分があるというのは。まあだからドミニク・ミラーの音はいつも美しさの中に影の感じと感情ダダ漏れの所があります。
新作「Vagabond」がもうすぐ出ます(4/21)。彼は今度は何を見せてくれるんですかね。とても楽しみです。
追記:非常に曖昧な記述が多くて申し訳ないです。しかし、具体的に書くと「一般的な彼のイメージ」をかなり破壊してしまう部分が多いので、伏せました。そこは普通のリスナーにとっては不必要な事だと思うからです。すみません。
まあ、私は今後もまだ彼がグズグズ言ってたら世界のどこでも行って背中蹴り飛ばすかもしれません。「あんたには音楽しかないだろ!諦めろ!」って(笑)
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