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大腸内視鏡のリアル体験:疑惑の腫物との遭遇

前回、健康診断でバリウム検査を受けたが、検査前日に酔っぱらってしまい、翌日の検査で苦戦。バリウムが体から出なくて不安と苦痛が続き、下剤を使っても効果がなく、病院に行ったところ、レントゲンでバリウムが残ってると判明。さらに下剤を処方されるが、なかなか出なくて腸閉塞の恐怖に怯える。最終的には大半のバリウムは出たものの、一部が残ってしまい、腸の異常の可能性が示唆されて内視鏡検査を予約。健康診断が思わぬ健康問題の発見につながる。

前回の話はこちら ↓


大腸内視鏡検査の前夜

前回のレントゲン検査で、「腸の一部が狭くなっているかもしれない」と言われ、さらに「何かできているかもしれない」とも指摘された。少し不安になりながらも、大腸内視鏡検査を予約した。

検査の前日、渡された注意事項を確認する。そこには「検査前日は、指定の検査食のみで過ごし、夕食後は何も食べてはいけない」とあった。しかし、検査食は驚くほど少なく、ほとんどお粥ばかりだ。会社を定時で終え、空腹を抱えたまま家に帰った。

空腹の中、日課の散歩へ

食べる気がしないほどの空腹ではあったが、とりあえず気分転換に散歩に出かけた。歩きながら、頭の中でさまざまなことが浮かんでは消える。「いったい何ができているのだろう?」と、不安がつのる。家に戻り、夕食の時間となった。指示通り、検査食を食べるつもりではあったが、私には譲れないルールが一つある。

「生の野菜や果物を食べることで、そこに宿る生命のエネルギーを体に取り込む」という信念だ。特に科学的根拠はないが、加熱食品では得られない栄養を摂ることができると信じている。今回は、そのルールを守るために柿を二つ食べ、検査食のポタージュスープを飲んだ。しかし、これで食事が終わりとは…。朝も昼もお粥だけで、夕食がポタージュスープ一杯だなんて、さすがに少ない。

禁酒と誘惑

「何かできているかもしれない」という恐怖感から、今回は絶食をしっかり守ることに決めた。それだけでなく、今回は酒も断つことにした。何度か「まあ一杯くらい」と心の中で葛藤があったものの、強い意志で誘惑に打ち勝った。

シャワーを浴び、居間でくつろぐ。普段なら一杯飲みながらのんびりするところだが、酒がないとなんだか手持ち無沙汰である。私は普段テレビを見ないので、PCを使ってネットを少し覗く程度。ユーチューブを見ながら、ふとまた「いったい何ができているのだろう?」と考え込んでしまう。ネットで調べたり、AIに先日の診察内容を入力して聞いてみたりした。

腸の狭窄の原因

腸が狭くなっている原因には、いくつかの可能性があるようだ。

  • 良性腫瘍: 腸管内によくできるポリープや筋肉層にできる腫瘍が考えられる。これらは早期発見すれば、簡単な手術で切除できることが多い。

  • 悪性腫瘍: 腸がんの可能性もある。早期発見できれば、手術や治療で回復が期待できる。

  • 炎症性腸疾患: クローン病や潰瘍性大腸炎などが狭窄を引き起こすことがある。

  • 腸の癒着: 過去の手術や炎症により、腸がくっついて狭窄を引き起こすこともある。

結局、いくつかの可能性をリストアップされたが、自分の中では「やはり癌の可能性があるよな…」と分かっていた。ただ、その現実から目を背け、他の可能性を無理やり信じようとしていただけだ。

父の大腸がんと私の不安

実は、私の父は大腸がんだった。発見が遅く、見つかったときには既に肝臓に転移しており、ステージ4だった。最終的には肝不全で亡くなった。まだ60代という若さだった。

だからこそ、大腸がんの恐ろしさは身に染みて知っている。そして今、検査を控えた自分も「ひょっとして大腸がんではないか」という不安が心を支配し始めている。負の連鎖のように、「もう駄目だ」「終わった」などという思いが次々と浮かんでくる。「ああ、死ぬんだな…」と、まだ何も確定していないのに、頭の中ではもう最悪の結末に向かっている。

財産と治療への考え

気づけば、財産をどうするか、投資や土地のこと、子供にどう伝えるか、そんなことばかり考えている。そして治療についても、暗澹たる思い出がよぎる。抗がん治療がどれほど過酷か、父の姿を通して目の当たりにしてきたからだ。

父が受けた抗がん治療は、1サイクルごとに3週間の休薬期間を挟んで、何度も繰り返されるものだった。抗がん剤を投与した直後の3~4日間は特に辛そうで、動くこともままならず、ずっと寝たきりだった。その苦しさに耐えきれず、父は途中で抗がん治療をやめてしまった。その後、がん病棟に入院し、終わりの時が近づいていく。がん病棟や緩和ケア病棟にも何度も足を運び、目にした光景はまさにトラウマとして心に刻まれている。

フラッシュバックと恐怖

今、そのすべてがフラッシュバックする。今度は自分の番かもしれない。そう思うと、何も手につかず、ただ気力がどんどん萎えていく。布団に入っても、考えるのはそんなことばかりだ。どうせ逃れられない運命だと、頭の中ではもう結末が描かれている。

しかし、気づけばそのまま眠りについていた。そんな夜だった。

下剤との朝の攻防

翌朝、下剤の力を借りて目覚め、真っ先にトイレへ駆け込んだ。その後、PCをつけてニュースとメールをチェックする、いつもの日課だ。しかし、今回は絶食中。だけど不思議なもので、もう腹も減らない。病院からもらった注意事項と内視鏡検査の同意書を持って、いざ病院へ向かう。この病院は、総合病院ほどの大きさはないが、内視鏡検査では評判がいい。特に「下」に関しては強いらしい。

下剤マラソン開始

ナースステーションで受付を済ませ、病室へ案内される。そこで1.8リットルの下剤を手渡され、200mlを10分ごとに飲むように指示される。さらに、腸の動きを促すため、院内の散歩もOKとのこと。まずは下剤を飲むと、ポカリスエットのような味がして飲みやすい。私はどうやら下剤が効きにくい体質らしく、指示よりも早いペースでどんどん飲み進めた。

1時間後、診察室前に呼ばれる。そこには今日同じく内視鏡検査を受ける他の5人がすでに座っていた。私は1.8リットルをすべて飲み切ったが、どうやら飲み切れずに残している人もいた。その2人は小柄な女性と小柄な男性だった。うーん、体の大きさに関係なく一律で1.8リットルって、なんだか不公平な気もするが…そんなことをふと思ってしまった。

トイレ儀式の幕開け

さて、ここからが本番だ。トイレが終わったらナースを呼び、自分の便をチェックしてもらう儀式が始まる。正直、自分のウンチを女性に見せるなんて、普段なら絶対にあり得ない状況だ。しかし今回は、これで3度目の内視鏡検査。初めてのときは、便を見せるのにものすごく抵抗があったが、3回目ともなると慣れたものだ。「ほら見てくれ、俺の大作を!」という気分である。

透明便への道のりは遠い

通常、便が透明になれば検査ができるのだが、どうも私の腸の一部が狭くなっていて、何かが詰まっているような感じがする。下っ腹も張っていて、完全に出し切った感がない。何度かナースに便を見せるたびに「もう少しですね」と言われ、気づけば他の患者たちは全員終了。最後に残ったのは私一人だ。

ナースのプロ魂

トイレに行き、ナースを呼んで便を見せる。するとナースが何のためらいもなく便器に手を突っ込み、便の状態をチェックし始めた。いや、ゴム手袋はしているけどさ…!その潔いプロ根性には、思わず感心せざるを得なかった。「先生に確認しますね」とナースは言い残し、出て行った。

少しして「検査しましょう」と声がかかった。気分はまるで死刑台へ向かう罪人。しかし、もうガンだろうが何だろうが、ここで真実を突き止めるしかない。そう決意し、検査室へ向かう。

検査パンツ、そして戦いの始まり

検査パンツに履き替え、診察台に横たわる。いよいよ検査開始だ。内視鏡が勢いよくけつにぶち込まれ、ぐんぐんと奥へと進んでいく。麻酔なんて甘えはなし!腹の中を異物が這いずり回る感覚がリアルタイムで伝わってくる。いい気分?もちろんそんなわけがない。モニターを睨みつけながら、私は覚悟を決める。

途中で鈍い痛みが走り、思わず「ウッ…」とうめき声が漏れる。S状結腸や横行結腸のカーブで特に痛みが強いらしい。医師がナースに腹を押さえるよう指示を出すと、ナースが私の腹をぎゅっと押さえる。だが、腹の中を異物が這っているのが手に伝わっているんだろうな…と思うと、なんとも気まずい気分だ。

ポリープ発見!でも…

途中でポリープが1つ見つかり、その場で内視鏡で切除される。おっと、やるじゃないか。どうやら時間をかけてしっかり見てくれているようだ。「ここが一番奥です」と医師が言ったが…何もない?それとも終わった後にサプライズ発表でもあるのか?

少しずつ内視鏡が引き抜かれ、モニターにはいくつかの画像が貼られていく。素人目には、ちょっとした出っ張りが全部ガンに見えてしまうのだ。突然、その中の一枚に不気味な腫物が…えっ、これか!?冷や汗がダラダラ流れる。

そして平穏な終わり

結局、無事に検査は終わったが、医師からは特にコメントなし。どうやら本当に何もなかったらしい。ただ、「大腸の奥に張りがないですね」とだけ2回言われた。「フーッ、助かった…ガンじゃなくて本当に良かった」とホッとする私。

ナースからの説明も終わり、運動禁止、消化の良い食べ物を食べる、そして禁酒1週間というお達しを受ける。切除したポリープの検査結果の日程を確認し、会計を済ませ、ようやく家へ帰還。

散歩に出る、戦地から生還した気分で

何かまるで戦地から生還したかのような気分だ。運動は禁止されているけど、散歩くらいはいいだろうと自己判断。激しい運動は、切除したポリープの傷口が開く原因になるのだろうな、なんて思いながら、そそくさと散歩に出かけた。

散歩から帰り、家で休んでいると、だんだん腹が減ってきた。消化のいい食べ物が思い浮かばないけど、まあ暴飲暴食しなければいいだろう、と軽く考える。昨日から検査食、今日は絶食だったので、そろそろ本気で腹が鳴り出した。

一瞬「酒飲んじゃおうかな…」と思ったが、今日はさすがにやめておこう。でも、明日はどうなるかわからないな。



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