今村翔吾先生ファン倶楽部北海道支部結成秘話
モノローグ
いつもより肌寒く、小雨の勢いが強くなりそうな予感を覚える秋の朝。一見すると旅行客のように、小柄なキャリーケースをガラガラと引っ張りながら、雨から逃げるように古びたマンションへと急いだ。
薄暗い廊下とやけに大きな音のエレベーターに若干の恐怖を覚えながらも、心は弾み、これからの事を想像するだけで思わず頬が緩んだ。
レンタルスペースで借りたマンションの一室。
ここが、兼ねてより念願だったオフ会が開催される場所だ。
初めてファン倶楽部メンバー全員が集まる。
今回はメンバーの都合もあるが、思い切って1日まるっと24時間貸切った。
ほぼ初対面同士なのに、そこまでして大丈夫か、なんて微塵も思わない。
愛と熱量なら、日本トップクラスのファン倶楽部だと自負している。
今村翔吾のまつり旅
そもそも作家今村翔吾先生のファン倶楽部は、事務所にもファンにも公認として広く認知されているものがある。山形県新庄市に在住されている会長さんが率いる『羽州ぼろ鳶組(今村翔吾)ファン倶楽部』だ。主にTwitterで活動されていて、今村先生ファンで会長さんの名を知らぬ人はいないだろう。
今村先生のデビュー当時から、ファンとして市をも巻き込んで支えていた会長さんと、今村先生の絆は強い。
その縁で、今村先生の代表作である”ぼろ鳶組シリーズ”の聖地でもある新庄市では、頻繁に今村先生の講演会が開催されたり、市立図書館では今村先生関連のイベントも行われる。
ファンにとっても新庄市とは聖地であり、いつかは訪れたいと願う地である。
さて、そんな素晴らしいファン倶楽部がありながら、何故北海道支部を立ち上げたかについての本題に入ろう。
それは、今村先生への愛故に、が一番的確な言葉だろう。
きっかけは今村翔吾先生が自ら発案し、先日見事ゴールされた「今村翔吾のまつり旅」だ。
これは5月30日に滋賀県守山市をスタートし、118泊119日間の日程で全国47都道府県の書店や学校を巡るという壮大な企画だ。
その間一度も家に帰らず、『たび丸』と名付けられたワゴン車で旅をし、実に270か所の書店や学校を訪れた。
しかもその間今村先生は、たび丸の後部座席に特注で設置した机で、旅の間もずっと執筆を続けられた。正に驚愕の一言である。
この普通では考えられない今村先生の情熱と行動力のおかげで、北海道という海を越えた地に、直木賞作家である今村翔吾先生が降り立ったのである。
今村翔吾のまつり旅・47都道府県まわりきるまで帰りません! (zusyu.co.jp)
まつり旅で、北海道には9か所に来て頂いた(内1つは、本屋さんと図書館の合同講演会)。
私はその内6か所に駆け付けた。
実際に今村先生とお会いし、今村先生とお話し、今村先生の著書に自分の名前と共にサインを書いて頂ける。
こんな僥倖がまさか自分に訪れるなんて…!!
2日間に渡り参加させて頂いたまつり旅は、ずっと興奮と感動の嵐で、身に余る幸せに身体も心も震えていた。
しかも今村先生は実に気さくで、ファンに対してのサービス精神が凄すぎるのだ。
これは声を大にして伝えたい!
おそらくある界隈ではこういうだろう。
『今村先生はファンサ神だ』と。
緊張で声が震え頭が真っ白になっている私に、今村先生は優しく声を掛けてくれた。
「いつからファンになってくれたん?」
「どこから来たん?」
「『童の神』とは珍しいなぁ」
「おいで、一緒に写真撮ろうや」
「ありがとうな」
今でも思い出すだけで、膝から崩れ落ちそうになる。
小説が最高に面白いのはもちろんのこと、今村先生自身も、小説の登場人物に負けずとも劣らない程優しく人情に溢れ、熱くかっこいい漢なのだ。
いや、寧ろこんな先生だからこそ、あれだけ魅力的な登場人物達を描けるのだろう。
こんなの、惚れるなという方が無理な話ではないか!!
類は友を呼ぶ
…話を戻そう。
まつり旅で来て頂いたうちの1つ、『江別 蔦屋書店』様で開催されたサイン会に、時間前から多くのファンが集まっていた。
サイン会は今村先生に「北海道熱いな」と言って頂けるほど大いに盛り上がった。その様子の一部はおそらくまつり旅の公式Youtubeで流して頂けると信じているのでここでは触れないでおく。(Jさん・Aさんよろしくお願いいたします!m(_ _)m))
(※2022/11/9 追記 北海道編もYoutubeに公開になりました♪)
(6) 【今村翔吾のまつり旅】#57 北海道はでっかいどー!訪問も見どころも盛りだくさん!#今村翔吾 #直木賞 #読書 - YouTube
サイン会終了後も、その場でファン同士の交流が始まった。
誰もが初対面同士。私は人見知りなので、知らない人と話すなど普段なら絶対に有り得ない。
だが今村先生と会えた喜びを共有したい、興奮冷めやらぬ熱を発散したい。その想いが圧倒的過ぎたのだろう。気付いた時には私も近くにいた女性と話し始めていた。
今村先生をべたべたに褒め称え、『八本目の槍』や『ぼろ鳶シリーズ』への愛を、お互い興奮気味に語り合った。
先生が本屋さん用のサイン本を書き終わるまでそれは続き、はっと気付いた時には、今村先生がそろそろ次の訪問先へ向かおうと席を立たれた時だった。私達以外のファンもそれに気づき、ファン同士が視線を交し合う。言葉を交わさずとも、心は一つだった。
「今村先生をお見送りに行こう!」
今村先生と秘書さんの後ろにぞろぞろと続き、たび丸が待つ駐車場までくると、ファンサ神である今村先生はたび丸の写真を快く撮らせて頂いた。
またその場でもお疲れかと思うのに色々とお話をさせて頂き、最終的に残ったファン4人で、たび丸が見えなくなるまで手を振って見送った。
この日は北海道1日目。
また明日も、今村先生に会える。
そんな奇跡のような出来事を未だ信じられない心地でいながら、遠い場所へ旅立つたび丸が見えなくなると、寂しさと興奮が渦巻いたような不思議な気持ちになった。
その場に残った他のファンの方も、似たような思いだったのだろうか。
しばらく立ち尽くしていたが、誰からともなく今村先生についてまた話を始めた。
そこでも大いに盛り上がった後、誰かが口火を切りようやく自己紹介。(今更な展開であるが、きっとどの会場でもこういう光景はあったに違いない)
連絡先も交換し、また明日の会場でも会おうと再会を誓った。
今村先生ファン歴が短い自分ではあるが、これまで今村先生が好きという人に巡り合えたことはない。
ここで初めて、同じ作家さんを好きな”仲間”ができたのである。
仲間との決意
そして2日目の『大垣書店 マルヤマクラス店』様。
昨日の仲間と再会することができ、更には新たな仲間も増えた。
1人は、ここの1つ前の訪問先である『大垣書店 行啓通店』様で出会ったファンの方。この方はマルヤマクラス店に行く予定ではなく、その場で一度連絡先を交換して別れていた。
だがなんと、私が行くと言ってたから、とマルヤマクラス店にも来てくれたのだ!思わぬ再会に、驚きと共に心は喜びに満ち溢れた。
もう1人は、まだ作品は読んでいないが今村先生がずっと気になっていたから訪れたという新規ファンの方。
ファン歴や年齢、ましてや出会った時間などは全く関係なく、すっかり意気投合した私達はこの日も今村先生談義で盛り上がった。
その盛り上がりように今村先生は半ば照れ、半ば呆れたような笑いを浮かべていたが、道産子ファンの熱さは十二分に伝わったと思う。
だがしかし、ここで知らなかった事実が今村先生の口から告げられる。
「北海道の売り上げ部数は全国で一番低い。
なんなら半分以下の時もある」
衝撃である。
北海道の人口は約540万人、全国の中でも上位に君臨する人数である。
それなのに、売り上げ部数が他県よりも低い…。
今村先生を応援している私たちにとって、由々しき事態を認識すると共に、新しい炎が燃え上がった。
「もっと今村翔吾先生を知って欲しい!
もっと今村先生の作品を読んで欲しい!」
「北海道の本屋さんでも、今村翔吾先生をもっともっと推して欲しい!」
そうして、共通の目標ができた私達はその場で決意を固めた。
もちろん、本家のファン倶楽部の存在は知っている。でも、北海道にも熱いファンがいることを知ってもらわないといけない。
どこかに隠れている道産子今村翔吾先生ファンと手を取り、北海道からも今村翔吾先生を盛り上げていきたい。
欲を言えば、今村翔吾先生推しの書店さんが出来て、新刊発売時には手作りポップと平積みを!
北海道にも今村翔吾先生のサイン本を!
そして今村作品の北海道売り上げ部数倍増へ!
その為に我らは
団結して今村翔吾先生を応援する!!!
これが、今村翔吾先生ファン倶楽部北海道支部ができた経緯である。
最後に
何の力も伝手もない1読書が、身の程知らずな大見えを切って何を言っているんだ、という意見もあると思う。
それについてはその通りだと思うし、自分自身具体的にどうすればいいのかわからず、これから考えていくしか道はない。
だけど今村翔吾先生への想いに偽りはないし、何よりも嬉しかったのだ。
大袈裟な目標を掲げてはいるが、ただ単純に、大好きな今村翔吾先生について仲間と語り合える場が欲しかったのだ。
本家である会長さん率いるファン倶楽部のTwitterや、まつり旅のYoutubeを拝見すると、知り合い同士が繋がって会話をしていたり、大人数で先生を出迎えたり、講演会会場でお揃いの旗を振って盛大に盛り上げていたりする。
その光景がすごく眩しくて、ただただ羨ましかった。
私もそんな仲間が、ずっと欲しかった。
今村翔吾先生ファン倶楽部北海道支部は、Twitterを中心に情報発信をし、LINEグループでは日々今村翔吾先生に関するトークを繰り広げている。今後は今村翔吾先生を具体的に応援していく為、メンバー内で作戦を練っていく予定だ。
そしてつい先日、念願のオフ会も開催した。モノローグはその時の描写である。オフ会の様子については、また別途投稿したい。
仲間がいるとは素晴らしい。
今までも大好きだった今村翔吾先生だが、仲間がいることでより情報も知識も広がるし、なにより同じ”好き”を分かり合える楽しさを知った。
その楽しさを共有することで、応援することもより楽しくなる。
あぁ、これが世にいう”推し活”なのだろう。
それはアイドルやスポーツの世界に限った話ではない。
本の世界でも、”推し活”はある。
それを私は今、実体験として体感すると共に、日々”今村翔吾推し”に励んでいる。
本が好きだけど、語り合える仲間がいない。
そう思っている人はきっと他にも沢山いる。
でも必ず、仲間がいる。
私はこうして今村先生の『まつり旅』がきっかけで仲間ができた。
人生で初めて、好きなことについて語り合える仲間ができたのである。
この”縁”を繋げてくれた今村先生に、深く感謝したい。
仲間が欲しいけれど、一歩を踏み出す勇気がない人もいるかもしれない。
かつての自分もそうだった。
でも今村翔吾先生と出会い、本家のファン倶楽部率いる会長さんと出会ったことで世界が大きく広がった。
きっと他のファンの方々もそうだろう。
会長さんがいつでも暖かく迎えてくれて、常に今村先生に関する情報を発信し続けてくれる。会員にも優しく寄り添って、変わらない暖かな場所でいてくれる。
そしてまつり旅をきっかけに、自分が住む地で同じ想いを抱える仲間と出会うことができた。
再び今村翔吾先生が北海道を訪れてくれた時には、仲間と共に大いに盛り上げてお迎えしたい。
もしかしたらこの記事を読んで頂いてくれた方の中に、今村翔吾先生の作品を読んだことがない方もいらっしゃるかもしれない。そして同じような想いを、抱えていらっしゃるかもしれない。
もしあなたがそうであれば、今村翔吾先生の本を読んでみてはどうだろう?
熱く人情味溢れる最高のエンタメ小説であることは確実に保証するし、魅力的な登場人物達の”仲間”の絆に、きっと涙するに違いない。
そして何より、私達がいる。
北海道という場所に限らず、”今村翔吾”が好き。
それだけで、今の世の中どこにいたって繋がることができる。
そろそろ締めようと思うが、ここまで素人の駄文を読んで頂いたことに、最大限の感謝を。
語彙力と文才の無さはご容赦願いたいが、愛だけはたっぷりと込めてある。
もし少しでも興味があったら、北海道支部のTwitterを覗いてみて頂けると幸いだ。
その時は今村翔吾先生ご本人のアカウントや、公式の事務所アカウント、本家の羽州ぼろ鳶組(今村翔吾)ファン倶楽部の方へもぜひ。
そして願わくば、次は同じファン倶楽部のメンバーとしてお会いできたら、こんなにも幸せなことはない。
了
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