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素材メーカーの展示会にお邪魔してみた

10月末から11月頭にかけて、
表参道のとある場所で開かれた
展示会にお邪魔しました。

「MATSURI」(祭)
「MATERIAL」(素材)をかけて
「MATSURIAL」というテーマの
下に開かれた、三井化学主催
「MOLp Cafe 2024」です。

もう1ヶ月近く経ってしまい、
今更なご紹介になってしまった
ことを反省しつつ、
折角なので記録として残して
おくことにします。

この展示会の趣旨は、上記のサイト
「そざいの魅力ラボ」に詳しく
説明されていますが、かいつまんで
ご紹介しておきましょう。

そもそも「MOLp」とは、
MITSUI CHEMICALS MATERIAL
O
RIENTED
L
ABORATORY
の頭文字を取った「MOL」に、
product
project
philosophy
person
などを意味する「p」を重ね合わせた
言葉だそうです。

三井化学という素材メーカー
母体となっているわけですが、
その三井化学で2015年に有志が集まって
始まった「プロダクトの発信活動」

「MOLp」ということですね。

いわゆるメーカー的なモノ起点の研究開発
から一線を画して、自由な発想で素材を
開発する場
のようです。

私自身の現在の仕事とは、
ほぼ関連性のない展示会だったのですが、
友人のFacebook投稿で見かけたその内容が
非常に興味深く感じられたため、
スキマ時間で行ってみようと決めた
というのがお邪魔した経緯です。

会場となったライトボックススタジオ青山の外観。
Cafeっぽいボードに、MOLpの名前と「祭・MATSURIAL」という
テーマがビシッと決まってます。

中に入ると、二階建ての会場の中に
所狭しと様々な展示物が目白押し
でした。

それぞれのテーブルに、説明要員が
しっかり張り付いて、来場者の方々に
熱心に説明
をしてくださっていたのが
非常に印象的。


まず最初に現れたのが、こちらの
「SHIRANUI® CAGALIVI」
不知火六本組木篝火しらぬいろっぽんくみきかがりび

というもの。

神社仏閣で活用されてきた伝統的木工技術
最先端素材との邂逅です。

伝統的な木工技術である六本組木
透明プラスチックをつなぎ合わせ、
篝火を表現していました。

光の当たり方によって、
このプラスチック部分が
燃えているような色に見える
という、
幽玄な美を追求したオブジェです。

後にもいくつか出てくる
「SHIRANUI®」というのが、
光を受けて淡く色づく
三井化学の商標登録済プラスチック素材
なのですね。


続いて登場したのは、
「SHIRANUI® CONCON」
三囲神社祈祷不知火護符みめぐりじんじゃきとうしらぬいごふ

なる名前の付いた「御守」です。

普段は透明で何も見えないのに、
紫外線が当たると文字が浮かび上がる
という特殊素材
を活用。

六角形の透明素材が5つありますが、
下2つは割とハッキリと文字が見え、
上の2つは無色透明、ちょうど真ん中は
うっすら文字が消えかかっているのが
分かりますよね。

健康長寿交通安全必勝祈願などの言葉が
御守の護符に書かれています。

三井家の守り神である三囲みめぐり神社
祀られているキツネが御守に描かれており、
名前も「CONCON」と洒落込んでいて、
こういうセンスは嫌いじゃないです。


御守の隣には、風鈴が沢山あらわれました。
「KODAMA TAMANE」
木霊風鈴玉音こだまふうりんたまね

という名前がついている風鈴は、
金属ではなくこれまたプラスチック製。
「APEL」という多機能透明樹脂が、
叩くほどに響くという、
従来のプラスチックの概念を覆す性質を
見せたところから作られました。

木をふんだんに使って組み上げた梁に吊り下がった
風鈴たちが、風流な音を奏でていました。


続きましては、
「SEXY MATERIALS SEXY321」
(摩擦上等仏恥義理ぶっちぎり飛車レース)

と銘打ち、「スーパーカー消しゴム」
似せたプラスチック素材の車。

名前に「SEXY」と付けたくて、
ボディのデザインを4種に分け、
STRINGER
EPIC
XENO
YARE
とそれぞれ命名する凝りよう。

更に凄いのが、このカーレースに使う
ノック式ペンを「BOXY」一択にすると
いうこだわり。
「カー消し」で散々遊び倒した、
あの頃のノスタルジーに浸りたい人が
推進した企画
に間違いありません。

素材によって滑りが異なり、どこまで遠くへ行けるかに差が出ます。
そして当然、ノック式ペンの使い方にも練度が問われます。


すぐお隣で大きな存在感を放っていたのが
「WILD MATERIALS ORACLE BALL」
(弾性上等喝斗美かっとび玉)

「スマートボール」と言われる
昭和レトロなゲーム機です。

用いるボールの素材を変えて、
よく弾むタイプのものと、
弾み方が鈍いもの、
見た目は一緒なのに弾み方が異なる
仕様のポリウレタンエラストマー

使ってみたそうです。

何度かやってみましたが、なかなか下までたどり着かず、
黒い狐の上にある穴に大抵吸い込まれてしまいました・・・

案内のお姉さんに勧められて、
素材の違うボールを床の上に弾ませて
違いを体感させてもらいました。

昔懐かしの「スーパーボール」という
やたら弾むボールがありましたが、
今回の素材違いのボールはいずれも
「弾まないスーパーボール」たちが
どんぐりの背比べをしているような
感じ
になってしまっていたので、
個人的には若干「残念」な仕上がりに
思われたところです。


一階の展示を一通り見終えて、
二階へと上がったところに現れたのが
このチェア。
「GoTouch® THE ZEN™」
(夜須礼乃坐)

という名前が付いています。

木製の枠に、まるで皮素材に見える座面が嵌まっている「シェルチェア」。
この座面が、実はポリプロピレン製

使い込んだ皮素材のような質感を表現
している座面は、リサイクル性の高い
ポリプロピレン製

未活用資源である木粉や廃棄衣類等を
混ぜる
ことで、この風合いを引き出す
ことに成功したそうです。

実際に触ってみましたが、とても
プラスチックとは思えない柔らかさ
実現していて、チェアとして問題なく
機能する実用性もきっちり確保
されて
いました。

ちなみに、「GoTouch®」というのは
「ゴトウチ」と読みます。
「ご当地」に「Touch」(触感)を
掛けた造語
でしょう。
商標登録も取っている素材シリーズ名に
なります。


続いての展示は、
「STABiO® SLOW VASE TECH」
という商品。

2019年、「スローグリーン」を提唱する
株式会社グリーン・ワイズで当時代表を
務めていらっしゃった田丸雄一氏考案の
茎道くきどうというコンセプトがあります。

花の美しさとともに、
「茎(Stem)」の美しさに着目したという
ユニークな視点に驚かされます。

透明なフラワーベースに茎を生ける、
そんなアイデアが形になったこの作品、
なんとミラノデザインウィーク2019に
実際に出展され、今も変色・劣化せずに
保たれている*
とのこと!

*変色・劣化していないのは、全作品では
なく、一部の作品だと思われます。

植物を原料とするバイオマスプラスチック製ウレタン新素材
透明性耐久性に優れ、成形の自由度も高いとのこと

「茎道」なる言葉は初めて聞きましたが、
もっと流行っても良さそうなコンセプト
ではないでしょうか。
「華道」に比べると、最初のハードルが
とても低そう
です。


二階の展示もあと半分。
まずは
「HUMOFIT® OLIOK」
(涼結折桶)

というプラスチックシートの紹介が
ありました。

写真にある、ワインクーラーとして
使われているものが、何とその
プラスチック製のシートを折り紙の
ように立体にしたもの
だそうです。

この「HUMOFIT®」という名前の
素材の特性が、人の体温付近では
柔らかくなり
冷やすと硬くなるそう。
柔らかいうちに折ってしまい、そこで氷を
入れると形が決まる(涼結)ため、
このような形で提案をしていました。

素材の特性をうまく使って、持ち運び可能なワインクーラーを提案
「折桶」=OLIOK という言葉遊びのようですね


すぐ隣には、
「SHIRANUI® TAMADUSA」
(晴天白日玉梓)

という展示がありました。

「ハレの日に届けたい
 色づくメッセージ」

というコピーが見えますが、
この展示をパッと見ただけでは
一体何のことやら?ですよね。

「フォトクロミック技術」というものを使っているそうです
カードやしおりといったものに応用することを想定

プロダクト名に「晴天白日」とある通り、
晴れている天気の下に行くと、鮮やかな色が
浮かび上がってくる(白日の下に晒される)

という仕掛けなのです。

光を当ててみて、初めてどんな模様かが
分かる
という「玉手箱」のような楽しさ
伝えたい、そんな思いが「玉梓」という
部分に込められているのでしょう。

紫外線を当てると色が変わる系の商品は
既に世の中にある
ところ、今回展示されて
いた素材は他とどう違うのか、そこが
私自身今一つ理解しきれなかったのが
残念だったところです。


最終コーナーへやってきました。
「GoTouch® MAGMA GETTER」
(御当地駒下駄桜島火山)

名前と見た目から、どんな素材が使われて
いるのか、容易に推測できそうですよね。

そうです、桜島火山の噴火に伴う火山灰
これを「未利用資源」と見立て直して、
新しい「地域素材」として活用
しようと
いう動きなのです。

火山灰成分で作った下駄、頑丈そうです
ここにあるのは茶碗なのかなのか不明
実際に商品化するにはデザインコンセプトをきっちり決める必要がありそうです

「持続可能な循環型社会の実現」という
SDG'sど真ん中の課題解決に向けて、
一つの解として三井化学が提案している
ものの一つが、このシリーズのようです。

今までは「邪魔者」でしかなかった
火山灰が、「未利用資源」として
新しい商品素材となってくれたら、
一石二鳥、いや三鳥や四鳥が狙える
かもしれませんよね。


さて、いかがだったでしょうか?
できるだけ分かり易く、簡潔な記述を
心掛けたつもりですが、
文字数にして普段書いている量の
約四倍ほどあり、写真も満載なので、
それなりに読み応えある内容に
なったのではないでしょうか。

三井化学は、普段は消費者と直接接点を
持つことは少ない素材メーカー

今回の展示会も、一般消費者が覗きに
いけたとはいえ、恐らくはほとんどの
来場者が取引先顧客や見込み客
だろうと
思われます。

その顧客に対し、ただ素材を右から左へ
と売るのではなく、日頃からその素材の
可能性を研究し、どんな価値提案ができ
そうかを消費者の目線を意識しながら
追求している
ことが伺えました。

取引先や見込み客の側も、
このような具体的な提案があると、
自社の商品開発にあたって非常に
参考になる
に違いありません。

素材メーカーのPRとして、
とても有効なアプローチ
なのでは
ないかと感じた次第です。

但し、費用的にはかなりの金額が
かかっているはずなので、
費用対効果をどのように考えて運営
されているのか、実際ペイしていると
見ているのか否かは興味津々
ですね。


今回展示されていたものを含め、
オンラインストアで消費者に直接販売
しているものが多数あるので、
ご興味を持たれた方は
是非覗いてみてください。


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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。