LTVのVは何を意味するか?
サブスクリプションが注目され始めて
早や数年。
サブスクや通販とセットで語られる
ことの多い概念に、LTVがある。
いや、今やマーケティングを語る際に
欠かせない概念だと言っても過言では
ないだろう。
LTVとは、Life Time Value の頭文字。
アメリカでは、Customer Lifetime Value
=CLV ということが多いようだ。
Life Time で、人の一生涯の時間を指す。
Value は、直訳すれば価値。
なので、LTVは「顧客生涯価値」と
訳されることが多い。
タイトルにある通り、この最後の
V(Value)は、何を意味するか?
「価値」とあるが、LTVを測る主体で
ある企業にとって「価値」があるという
ことは、要は「儲かる」ということ。
つまりは「儲け」、一般的な用語で
言えば「利益」のことを意味する。
なので、LTVが意味するところは、
1人のお客様が一生涯でいくらの利益を
その会社にもたらしてくれるか、
ということになる。
「利益」ということは、そのお客様への
「売上」から「経費」を差し引いた金額
ということ。
お客様を獲得するのに、それなりの額を
投資していることが一般的なので、
それらの金額を引いた部分に「価値」を
見い出すという考え方は、ごく自然な
考え方だろう。
この「Value」を、「利益」ではなく
「売上」と考えるところも僅かながら
あるようだ。
LTVを解説しているサイトをいくつか
斜め読みしてみたのだが、1割程度は
「利益」だとハッキリ認識せず、曖昧
なままに説明していたり、あるいは
「売上」だと明記していたりするのを
見つけた。
元々のこの概念の起源からすれば、
「利益」、しかも「純利益」を意味
するところは明らかである。
あくまでも、一顧客から獲得できる
純利益の予想額を求め、それらを更に
まとめることで、その企業の正味現在
価値を試算する際に使おうというのが
そもそもの目的だからである。
企業側の論理からすれば、もちろん
そういうことになるのだが、
お客様の立場になって考えたときに、
自分は結局「人」として扱われると
いうよりも、「利益」をもたらして
ナンボの存在なんだと断じられている
かのようで、少しばかり切ない気分に
させられた。
顧客獲得にかかったコストを売上から
引いた「利益」部分こそがLTVである
べきなのは百も承知しながら、あえて
「売上」をLTVのVであると定義する
企業があったなら、それはまたそれで
一つの立派な「見識」かもしれない、
そんなことを考えた。
「利益」が出たかどうかは、あくまで
企業側の施策のバランス次第。
無駄遣いのせいで利益を出せない、
そんな可能性も大いにある。
しかし、「売上」になったということ
は、少なくともお客様がその商品・
サービスを気に入って買ってくれて、
それをリピートしてくれたからこそ
「生涯価値」と言えるほどの大きな
売上が立ったわけだ。
お客様に「価値」あるものを届ける
ことで、その生活を、ひいては人生を
良い方向へと変えていくことこそ、
マーケティングの醍醐味。
「売上」という数字は、「利益」以上に
お客様がその商品・サービスをどれだけ
気に入ってくれたかを、直接示す指標。
そこまで考えた上で、
「我が社のLTVは、顧客生涯売上!」
と言えるのなら、そのユニークな
定義には、むしろ敬意を表したい、
そんなことを思ったのだった。