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『海渡る北斎』前編

2000年生まれの子どもを
「ミレニアムベビー」
と呼ぶのはご存知の通り。

この「ミレニアム」という言葉には、
「千年紀」という訳語が充てられる。

イエス・キリストの誕生した年から、
西暦1000年までがミレニアム第一期、
西暦2000年までがミレニアム第二期、
なので、我々は今ミレニアム第三期を
生きている
ということになる。

ミレニアム第二期において、
人類史に最も貢献した100人を選ぶ。
そんな企画が、米国のライフスタイル誌
『LIFE』で行われた。

日本人として唯一、栄誉ある100人に
選ばれたのは、葛飾北斎である。

北斎については、彼が80代で4度も逗留
した長野県小布施町にある「北斎館」
2年前に見学した際の記録も含め、
このnoteで何度か取り上げて来た。

その北斎が、先のミレニアルにおいて
人類史に最も貢献した人物として
名を残している理由
は何なのか?

その疑問を出発点にして、
北斎がここまで高く評価される理由
追い求めていった結果、
出来上がった一冊の本がこちら。

著者の神山典士さんは、
実力派ノンフィクションライター。
2015年には、
「現代のヴェートーベン佐村河内報道」
によって、大宅壮一ノンフィクション賞
(雑誌部門)と雑誌ジャーナリズム大賞
共に受賞。

既に数冊読ませてもらっているが、
どれも読み始めるとページを繰る手が
止まらなくなる
こと請け合いだ。

今回の著書『海渡る北斎』は、
2018年に上梓された神山さんの著書
『知られざる北斎』の続編的な要素
持ちつつ、主な読者として未来を担う
中高生を想定
している。

前半の主人公である「波の伊八」は、
現在のいすみ市で活躍した彫り師、
武志伊八郎信由の通称。
その「波の伊八」が欄間に彫った
『波に宝珠』なる作品が、
北斎の通称「Great Wave」
あの『神奈川県沖浪裏』に見られる
ダイナミックな波に瓜二つなのだ。

この話、実は神山さんの前著である
『トカイナカに生きる』において
既に触れられている。

ただ、この本はあくまで、都会と田舎の
中間たる「トカイナカ」に暮らす人々に
フォーカス
したもの。
「波の伊八」に魅せられ、いすみ市で
「一般社団法人ツーリズムいすみ」を
経営する山内氏
を取り上げた中で、
北斎もおまけ的に紹介されているのだ。

ちなみに、「ツーリズムいすみ」では
いすみの見どころを紹介しており、
以下のように「波の伊八」が彫ったと
される彫り物
の写真も見ることができる。
『神奈川県沖浪裏』と瓜二つという意味が
分かっていただけるのではなかろうか。

この、「波の伊八」と北斎が、
当時出会っていたのか否か

北斎が伊八にインスパイアされたと
いうのは真実か否か

あくまで仮説でしかないが、
状況証拠を丹念に集めて、
その可能性に迫っていく筆致が
興奮を誘う
一冊。

後半は、一転国内から海外へ。
北斎がなぜヨーロッパでこれほど
までに評価されたのか。

『知られざる北斎』で既に触れられた
内容から、更に一歩進んで、
北斎を見事にプロデュースした
思しき人物・林忠正のことを取り
上げて論じている。

長くなってきたので、別記事に続く。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。