マーケティングとは、ラーメン作りのようなものである
大学生の頃、駅と大学を結ぶ、細く
長い商店街の入り口近くに、営業
時間中は巨大な骨をぶら下げている
ラーメン屋があった。
スープに納得がいかなければ、その
日は店を開けない。
納得のいく出来となったら、看板
代わりのその巨大な骨を軒先に吊り
下げて、営業を開始する。
一条流がんこラーメンというのが
そのお店の名前だったと記憶して
いるが、当然みんな
「骨」
と呼んでいた。
この「骨」に限らず、ラーメン屋が
スープを作る際には、やたらと骨を
使う。
豚の骨はトンコツ。
鶏の骨は鶏ガラ。
牛の骨はあまり見かけないが、
一応牛骨スープを売りにしている
お店もチラホラとある。
我が家のそばに、件の「骨」の
のれん分けがある。
ただ、いつ通りかかっても、黒い
シャッターに白で骨の絵が描かれて
いるのが確認できるだけで、営業
しているところになかなか遭遇
できない。
今日も近くを通ったが、やはり営業
はしていなかった。
まぁ、今日に関しては「Stay Home」
が叫ばれている週末ということも
あり、当然かもしれない。
しかし、ラーメン屋のことを考えて
いると、何だか無性に麺をすすりたく
なる、スープを味わいたくなる。
スープづくりをカウンターから覗き見
するのは楽しい。
トンコツや鶏ガラの入った巨大な
スープ鍋が、ぐつぐつと音を立てて
煮えたぎっている。
その鍋から、丁寧に丁寧にアクを
すくい、スープから雑味を少しずつ
取り除いていく。
そんなスープづくりの工程に思いを
馳せながら、これってマーケティング
と同じだよな、などと妄想が暴走し
始めた。
マーケティングとは何か、色々な
説明の仕方が考えられるが、一つの
考え方として、お客様との間の
バリアを一つひとつ丁寧に取り除いて、
最終的に商品やサービスを買って
いただくこと、という説明もアリだと
考える。
お客様が実際に商品やサービスを買う
までには、色々なハードルがあるわけ
で、それをバリアと呼ぼうがハードル
と呼ぼうが、とにかくそれらを一つ
ひとつ取り除いてやらねばならない。
「見た目が気に入らない!」
と言われたならば、もっとステキな
見た目にできるよう試みる。
「量が多すぎる!」
と言われたならば、どのくらいの量に
減らせば良いのかを検討して調整する。
「自分が買い物するエリアに
売っている店がない!」
と言われたならば、そのエリアの
お店に置いてもらえるよう営業が
走り回る。
これらすべてが、マーケティングに向けた
努力である。
そしてそれは、ラーメン屋の店主が丁寧に
アクをすくってスープを仕上げていく
ことで、お客様が喜ぶ味に近づいていく
ことと本質の部分で同じだと言えるの
ではないだろうか。
少々大げさ、若干無理のある比喩だった
かもしれないが、こうやって、比喩表現
のレパートリーを増やすのも、なかなか
良いトレーニングになるのではないか
と思うので、あれこれ試してみたい。