成功と失敗のジレンマ
昨日から、ドラッカーの名著、
『プロフェッショナルの条件』を
読書勉強会で改めて学び始めた。
主催者の友人が創ってくれている
場の魅力に加え、取り上げた本の
魅力も相まってか、直近までの
およそ2倍、20名もの参加者が集い、
自己紹介だけで1時間近くを要した。
だが、その自己紹介がまた面白く、
正に多様性の宝庫。
普通に暮らしているだけでは、なかなか
お互いに出会えないメンバー同士が、
このように交流を開始できるというのは、
オンライン時代の恩恵である。
昨日は、日本の読者に向けた冒頭の
メッセージ部分、3ページほど進むに
とどまった。
様々な意見交換が活発になされ、
あれやこれやと頭を活性化するネタが
もらえて有り難い限り。
私がふと気になって発言したのは、
1934年にドラッカーがロンドンで
日本画に出会った際のエピソード。
当時のことを、
と記述していたのだが、そこに違和感を
感じたのだ。
これより少し前の時代なのだろうが、
ヨーロッパでは「日本ブーム」が
起きていたはずだからである。
江戸時代後期、葛飾北斎に代表される
ような浮世絵が、パリに輸出されて
ブームをもたらし、印象派の画風にも
影響を与えていたのはご存知の方も
多いのではないか。
私は、神山典士さんの『知られざる北斎』
で諸々知ったのだが、原田マハさんの
『たゆたえども沈まず』の方が一般的には
有名であろう。
これらの本に出て来る、林忠正という
画商の活躍により、浮世絵の価値が
パリからヨーロッパを中心に広がった
のである。
他の人の発言から話が広がって、
非常に面白い議論になったのは、
「成功と失敗」に関するドラッカーの
記述について。
この本が出版された2000年前後を、
日本が大転換期にあるとし、
それが失敗からもたらされたものでは
なく、成功からもたらされている点で
過去の転換期とは異なるとした上で、
との指摘がなされている。
手痛い失敗というのは、可能ならば
したくない、避けたいものだ。
しかし、失敗するからこそ、次から
用心に用心を重ねたり、失敗しない
ポイント、コツを会得して、
それを活用できたりする。
逆に、成功してしまうと、ついつい
現状維持バイアスが発動されがちで、
それが失敗への道しるべになりがち
だったりする。
正に、成功のジレンマだ。
名著『イノベーションのジレンマ』
でも、成功法則通りに正しく活動する
が故に、イノベーションに敗れる、
という状況が描かれていたが、
このジレンマを克服するのは
相当に困難を極めるはず。
日本人は、「自分たちは特別」だと
言われて心地よくなりたい、そんな
傾向があるのではないかとの指摘が
参加者からあり、なかなか深く鋭い
コメントに舌を巻いた。
確かに、昨今の状況を見るに、
日本人にそのような幼稚さを感じる
ことがなきにしもあらず。
これも戦後のGHQによる徹底的な
日本解体工作が未だに尾を引いている
からだろうか、などと言ってしまえば
単なる思考停止のそしりを免れない。
この、成功と失敗を巡るジレンマの
話は、答えのない問いのようなもの。
引き続き、折に触れて考えていきたい
テーマである。