「死」が「生」を意識させる
齢50も過ぎると、周囲で病気の話が増え、
親戚縁者のお通夜や葬儀に出席する機会も
増えて来る。
突然母から電話がかかってくると、
よもや父に何かあったか?と
一瞬ドキッとして身構えてしまう。
先週末に電話がかかってきたときも、
ご多分に漏れずドキッとしたのだが、
今回は別の悲しいお知らせであった。
伯母の訃報をそこで知ったのである。
父母の兄弟姉妹は、アラウンド80以上。
既に鬼籍に入られた伯父、伯母らも多い。
日本人の平均寿命は、直近の調査によると
男性が81.05歳、女性が87.09歳。
十分長いが、これらはいずれも2年連続で
前年を下回った数字。
新型コロナの影響も尾を引きずっている
ようだ。
存命中の皆さんには、日々元気に暮らして
もらいたいところだが、どこかしら悪い
ところを抱えている方も多い。
闘病しながら、半ば無理矢理生かされて
いるような状況に陥ったり、
そんな状況が続いてしまったりすると、
人間らしさ、尊厳が十分に満たされない
事態も十分にあり得る。
それを思うと、寿命の長さが世界の中で
一、二を争うレベルであることが虚しく
感じられるのだ。
健康寿命の長さを実現しないことには、
本人にとっても、周囲にとっても、
厳しい現実が待ち受けていることになる。
生を享けた以上、死は免れない。
不老不死を夢見て、古来様々な賢者たちが
あれこれ試してきたものの、
死を超越した人はいないはずだ。
いるとしても、それは宗教やオカルトの
世界であり、残念ながら現時点で科学的に
立証できる範囲を超えている。
そんな「死」を日々身近に感じるならば、
よりビビッドに「生」を自分の生活の中で
感じることになるだろう。
生きていることが、何と有り難いことか、
身に沁みて感じるようになるだろう。
昔は、どんな家にも神棚があり、
あるいは仏壇があり、
神様やご先祖様に手を合わせるという
ことが、より日常的に行われていた。
公益財団法人・庭野平和財団による
2019年の調査データでは、
神棚の保有率は約35%ほど、
仏壇の保有率は50%となっている。
特に、都市部に行く程、神棚や仏壇を
持たない生活者の割合が増加する。
東京23区では、神棚の保有率が、
全体の約半分に近い20%にまで低下
しているのだ。
自宅に神棚も仏壇も持たない我が家を
棚に上げて、どうこう言える立場では
ないのだが、日本人の強さの源泉を
戦後史の中で徐々に捨て去って来て
しまったような気がしてならない。
誰か一人を神聖視、絶対視せず、
八百万に神を見い出して崇敬する。
自然を「征服の対象」とするのではなく、
むしろ敬って畏れる。
そして、親を含むご先祖様を大切にし、
日々感謝を捧げる。
既に死んでしまった人たちを、
毎日意識しながら生きていれば、
今日という日の「生」を充実させねば、
そんな気持ちが自ずと生じやすくなる。
今後、益々「死」を意識する機会が
増えて来るであろうお年頃。
その都度、関係者への「感謝」を忘れず、
充実した「生」を全うしたい。