ドラッカーを研究する人たちの共通点
昨晩、ドラッカー学会主催の
オンラインセミナーに参加した。
タイトルは、
「渋沢栄一とドラッカー ――未来創造の方法論」
というもの。
新札の肖像として、そして
NHK大河ドラマの主人公として、
圧倒的な注目を浴びている
渋沢栄一。
ドラッカーが、栄一を高く評価して
いたという話はつとに有名である。
スピーカーは、國貞克則さん。
どこかで聞いた名前だと思ったら、
あの名著『財務3表一体理解法』の
著者その人であった。
この本が出た当初、凡そ15年ほど前、
財務会計に苦手意識をずっと持って
いたので、話題になったタイミングで
すぐに飛びついた記憶がある。
未だに得意分野とはとても言えないが、
それでもこの本のお陰で大分理解が
促されたように思う。
そこで出て来た疑問が、財務会計
本の著者がなぜドラッカー?
というもの。
もちろんドラッカーは数字に強く
財務にも明るかったのだろうが、
一般的なイメージはあくまでも
「経営学の神様」であって、
「財務会計の神様」ではない。
その疑問は、著者の来歴ですぐに
氷解した。
なんと、クレアモント大学のMBA、
通称ドラッカースクールを修了
されていらっしゃるのだ。
しかも最近、正にタイトルそのもの
ズバリな本も出されたばかり。
ということで、早速この本の
Kindle版を事前に買い求め、
予習をするつもりであったが、
ついぞ「Kindle内積読」となって
しまっていたことを当日思い出す
という失策。
慌てて目次にパラパラと目を通し、
講演が始まってからは「全集中」を
意識して耳を傾けた。
タイトルこそ、この著書と同じだった
ものの、実際には生の講演でないと
聴けないであろうエピソードを
テンコ盛りで話してくださり、
注意力を切らす暇がない。
國貞さんご自身は、ドラッカーとは
25年来の長い付き合いの歴史があるが、
渋沢栄一のことはこの1年位でようやく
深く学ぶようになったとのこと。
それゆえ、持っている知識量に差が
ありすぎて、どうしてもドラッカーに
関わることに内容が偏りがちだとの
ホンネを吐露してくださった。
それゆえ、渋沢栄一に詳しい読者から
すると、その比重のアンバランスさに
違和感を感じるらしいというのだ。
そんなことも踏まえて、國貞さんが
同書の「裏タイトル」を教えてくれた。
「日本の賢者たちと、日本に惚れたドラッカー」
栄一に加え、石田梅岩や山鹿素行と
いった、日本で過去に実績をあげた
「賢者オールスター」とでも言うべき
先達の思想に、ドラッカーとの共通
点を見い出しているのである。
また、國貞さんの話で興味深かった
のが、ドラッカー経営学の現場での
威力、切れ味の鋭さである。
それこそ、MBAに通っていた頃は、
ドラッカー経営学を真剣に学んで
来なかったという國貞さんは、
日本に帰ってきて、経営の現場で
その威力をまざまざと見せつけられた
そうだ。
特に、「人の強みを活かす」という
ドラッカーの有名な言説に関して、
当初は「そんな理想論を言うなんて、
机上の空論に過ぎない」という
印象を持っていたらしい。
しかし、ドラッカーが意味するところ
の理解が進むにつれ、自分の間違いに
気付いたという。
そして、この「強みを活かす」という
指針を自分の家族にも適用して、
子どもたちとの関係が大いに改善した
というエピソードまで披露してくれた。
縁あって、渋沢ドラッカー研究会に
お世話になり始めて約1年。
様々な方のお話を聞く機会に恵まれて
きた。
改めて、どの方からも感じること、
それは、皆さんの「真摯さ」である。
ドラッカーが高い価値を置いた
「Integrity」、これを日本語に訳すと
「真摯さ」となる。
非常に説明しにくい概念だが、
真面目さ、誠実さ、高潔さ、正直さ
などをミックスしたような意味合い。
ちょっとお堅い、あるいは冷たい
印象を持たれるかもしれないが、
決してそんなことはなく、
人としての温かみにあふれている
ニュアンスを含んでいる。
ドラッカーに関わっている人たち
だからこそ、なのだろう。
ドラッカーに学ぶ者は、その言霊に
影響を受けて、知らずしらず真摯さが
身に付いていくものなのかもしれない。
國貞さんのご講演、コーディネーター
役をお務めだった井坂康志さんとの
トーク、そして最後の質疑応答、
全てにおいて「真摯さ」を感じる
貴重な時間となった。
自分自身も、ドラッカーからの
学びをより一層深めることで、
「真摯さ」がにじみ出てくるように
なりたいもの。
そんなことを感じる、貴重な時間を
頂戴したことに感謝だ。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。