ドラッカーが投げかける「問い」
来週末に、ドラッカー学会の大会が
開かれる。
私はいまだ会員になっていないものの、
学会に所属する方々から時折学ばせて
いただいており、今回もオンラインで
参加させていただく予定だ。
そのドラッカー学会の理事にして、
気鋭のドラッカー研究者、
井坂康志さんが最近出版されたのが、
冒頭の写真にある本。
一度簡単にご紹介したが、何度紹介しても
したりないほど中身の充実した本なので、
改めて触れてみたい。
繰り返しになるが、この本のタイトルは、
ドラッカー・フォー・サバイバル
未来を大きく変えるドラッカーの問い
である。
「問い」がテーマなのだ。
ドラッカーは、度々鋭い「問い」を
発した。
コンサルティングのクライアントに。
相談にやって来た同僚たちに。
そして教室にいる学生たちに。
「問い」には、オープンクエスチョンと
クローズドクエスチョンがある。
ご承知の通り、どんな答えもあり得る、
開かれた「問い」と、Yes or Noのような
答えの選択肢が決まっている「問い」だ。
ドラッカーが多用したのは、当然ながら
オープンクエスチョンだったろう。
「問い」を投げかけられたら、自ずと
考えざるを得ないから、問題を解決する
にも時間がかかる。
「答え」を教えてくれる方が、すぐに
問題を解決できるから手っ取り早い、
そんなことを思う人もいるだろう。
しかし、「Easy come, easy go」という
ことわざの通り、容易に手に入るものは
容易に手放すことになる。
「答え」だけもらっても、あっという間に
忘れてしまう。
これに対し、鋭い「問い」をもらって
うんうん唸って自ら解を導きだしたなら、
記憶にしっかり粘りついて離れない
「答え」を得るだろう。
そして、この「問い」の質が問題である。
オープンクエスチョンだから良いとは
限らないし、「愚問」という言葉もある
くらいだから、古今東西「問い」にも
良し悪しがあったわけである。
この点、ドラッカーの「問い」は、
当然と言えば当然だが、どれもこれも
「珠玉」と言って良いものばかり。
そして、それら珠玉の「問い」の数々を
一冊の中にギュギュっと凝縮している
この本は、常に本棚の一番良い場所に
キープしておきたい「実用の書」に
仕上がっていると感じる。
本文の中にたくさんの「問い」が出て
くるのは勿論だが、ページをめくって
いくと、そのページの端にも、独立して
「問い」が埋め込まれている。
例えば、こんな感じ。
しかも、平均して2、3めくりあたり
1つはあるのではないか。
だから、パラパラとめくって、適当に
手を止めたときに当たった「問い」に
取り組んでみる、なんていう洒落た(?)
使い方も可能である。
ドラッカーの本は、言い回しが格調高く、
とっつきにくいと思っている人も多く
いらっしゃるだろう。
だからこそ、あの『もしドラ』が爆発的に
売れたことへとつながったのは間違いない。
この『ドラサバ』も、『もしドラ』ほどの
ユルさはないものの、ドラッカー思想の
すそ野を広げる意味で、非常に有効な一冊
であることは疑いない。
ドラッカーの著作にあたるのはちょっと
重いなぁ、というときに、きっと何度となく
重宝するであろう一冊。
長いお付き合いになりそうな予感、いや
確信をする一冊である。