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インテグリティとハラスメント

先日、高校のバスケットボール部の
OB会で、ZOOM忘年会を実施した。
監督をしてくださっている先輩や、
現役高校生を指導してくれている
大学生トレーナーも参加してくれて、
最近出場した大会での話や、年明け
に参加する大会の見通しなど、色々
聞くことができた。

その中で非常に興味深い話が出た。
それが、タイトルにある
「インテグリティ」
についてである。
最近、試合でこの「インテグリティ」
に違反しているという理由で、
審判の笛が鳴る機会が増えている
というのだ。

研究社『新英和中辞典』では、

【Integrity】
1.高潔,誠実,清廉.
a person of integrity 高潔な人, 人格者.
2.完全な状態,無傷.
relics in their integrity 完全な姿の遺物.
【語源】
ラテン語「健全,完全」の意; ⇒INTEGER

とある。

過去の転職時の面接(英語)で、
「あなたの強みは?」
「あなたが心がけていることは?」
という類の質問に、この「Integrity」を
挙げたことが何度もある。
真面目に、誠実に仕事をこなします、
というようなニュアンスで、響き、
印象がとても良い言葉である。

なぜ、バスケットボールに
この概念が持ち込まれているのか?
きっかけは、2018年頃に色々発覚した
不祥事のようで、それを受けて
JBA日本バスケットボール協会が
以下の宣言を発表している。

ここにあるように、
「暴力や暴言を根絶しよう!」
ということで、それに近しい行為が
あると「インテグリティ違反!」
となり、割と頻繁に(簡単に)審判の
笛が鳴るというのである。

監督/コーチが、選手に対して
ビシッと厳しい言葉を投げかける。
それが例えば、
「しっかりしろ!」
「何やってんだ!」
というようなものでも、声の大きさや
トーンにもよるのだろうが、暴言と
されて笛が鳴ることがある様子。

あるいは、審判に対して、
「それがファウル?!」
「ディフェンス押してるよ!」
のように、審判が反則の笛を吹くか
吹かないかの判断に文句を言っている
とみなされると、かなり笛が鳴りやすい
ということもありそうだ。

私が現役だったのはもう30年も前、
さすがに暴力はなかったが、
それなりに激しい言葉の応酬は
あったし、本気で頑張っている以上
激しい言葉が出るのは当たり前、
という空気もあった。
審判の笛に対しても、結構文句を付けて
いたように記憶している。
逆に目を付けられると、こちらに不利な
ジャッジが増えるため、実利的な理由で
控えていた気もするが、そうやって目を
付けられないようにと警戒していた位
には文句を付けていたわけだ。

しかし、時代は変わったのだろう。
ちょっとしたことで、すぐにこの
「インテグリティ」
という言葉が金科玉条のように登場し、
それに反しているからという理由で
テクニカルファウルを宣告されると
いうのである。

この話を聞いて、即座に頭に去来した
ことは、
「ハラスメントと同じ構造だな」
ということであった。
本人がどう自覚しているかどうかは
どうでもよくて、受け手がどのように
とらえたか、認識したかが重要。
セクハラにせよパワハラにせよ、
被害を受けた方が「ハラスメントだ!」
と感じればハラスメントが成立する
というのと同じではないか。

この手の、「言ったもの勝ち」的な
風潮は、決して好ましいとは思わない。
とはいえ、社会を生きていく上で
事実上のルールと化していることに
チャレンジするのは、あまりにも
コスト(時間と労力)がかかり過ぎる。

この社会で生きていく以上、
インテグリティにせよハラスメントにせよ、
ルールから逸脱しているとみなされない
ように自衛していくしかない。

だからといって、必要以上に身構える
必要もまたないだろう。

「相手の立場に立って考える」

この一点を常に意識してさえいれば、
インテグリティ違反だと責められたり、
ハラスメントだと訴えられたりする
ことはないはずだ。

それにしても、インテグリティという
言葉は割と難しい概念で、日本語訳が
あまり浸透してこなかったため、まさか
こんなところから広がりを見せるとは、
と驚いている。
先行する他のカタカナ英語たちと
肩を並べる存在になれるのだろうか、
少し注目しておきたい。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。