「前進あるのみ」という生き様
NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』
9月30日放映は、伝説の焼肉店で腕を振るう
プロに焦点を当てた回であった。
「マコさん」と呼ばれることもある
豊島雅信さんは、63歳。
今もバリバリ現場で仕事に邁進する。
足立区鹿浜という、決して地の利が良い
とは言えない場所にあって、
連日大行列の焼肉店・スタミナ苑を
切り盛りしている。
実は、私の実家からは徒歩で10分程度。
小学生の時分には、自転車で公園に行く
途中に何度か通った記憶がある。
しかし、焼肉屋はもっと近所にいくつも
あったし、大ブレイクしてからは
「わざわざ行列してまで・・・」
という気持ちが拭えず、行かず仕舞い。
ただ、たまたまスタミナ苑をよく知る
友人関係に恵まれ、是非行こうという
話が盛り上がり、数ヶ月前にようやく
初訪問を果たすことが出来た。
冒頭の写真はその時のもので、
のれんの下に丁度「マコさん」を
捉えている。
彼の伝説的な話は、その友人からも
色々伝え聞いていたし、その他の情報
ソースからも耳に入ってきていた。
最近では著書も出版されており、
その「哲学」と呼ぶにふさわしい考え方と、
それに基づいた行動を存分に知ることが
できる。
そんな「マコさん」にフォーカスした
『プロフェッショナル』が放映されると
聞き、リアル視聴ができなかったので
NHKプラスで後追い視聴をさせてもらった。
何度か見聞きした話ではあるものの、
やはり映像のプロが制作したものを
観ると、改めて心が震える。
2歳の時に、実家の挽肉製造機に右手を
誤って突っ込んでしまった悲劇。
それに伴い、人生の様々な場面で彼を
襲う理不尽と無念。
ある時、精肉市場でホルモンが売れ残る
様を見て感じたシンパシー。
ホルモンは「放るもん」が語源である
通り、元々捨てられてきた部位だが、
自分も世の中に捨てられたようなもの。
これにかけてみよう、そう決心してから
日々続けた飽くなき努力。
創意工夫を繰り返し、ただひたすら
お客様が食べたときに喜んでもらえる
ものを生み出す、それだけを追求して
目の前の課題を乗り越え続けた。
いつしか、地元客以外の人がポツポツ
増え始め、やがて圧倒的な人気店に。
お弟子さんを教え導く様子も、
カメラに多く収まっていた。
厳しい中にも、何とか成長を願う親の
ような温かい視線があふれている。
最後に、「プロフェッショナルとは?」
という問いに対して、
「前進あるのみ」と返していたのが
とても印象的だ。
過労がたたって、満身創痍であるにも
かかわらず、厨房に立ち続ける。
世界一美味しい食べ物を、
一人でも多くのお客さんに食べさせて、
満足してもらう。
それが生きがいであり、
それを止めることなど考えられない。
オレは止まらない、前進あるのみ。
そんな魂の叫びであった。
こんな風に、自分が取り組んでいる
ことに、全身全霊、命を懸けているか?
懸けられるか?
そう問われたような気がする。
カッコよすぎる。
正真正銘のプロ魂を見た。