今どき?の顧客名簿の集め方
江戸時代、商いをする者にとって、
命の次に大切なのは、大福帳だった。
そんな話がよくネタとして語られる。
江戸は火事が多く、大福帳が燃えない
ように井戸に投げ込んだ、なんていう
話もまことしやかに言われる。
大福帳とは、今でいう顧客名簿。
顧客リスト、顧客台帳と呼んでも
同じこと。
火事で、仕事場や商品が焼けてしまった
としても、お客様の情報さえあれば、
また商売をやり直すことができる。
それ位、顧客名簿は大切だという
教訓である。
現代においても、顧客名簿が大切な
ことに変わりはない。
住所と名前さえあれば、DMが打てる。
メールアドレスと名前があれば、
メルマガでのDM(E-DM)が打てる。
限られた資源を有効活用するためには、
見込客の名簿に基づいて商売する方が
圧倒的に効率的となる可能性が高い。
今日の午後、文藝春秋の主催で、
「D2Cカンファレンス」という
オンラインのイベントが行われた。
「両利きの経営」という言葉が浸透し、
今や早稲田の看板(?)経営学者の
入山章栄教授、今をときめくメディア
アーティストの落合陽一氏らが登壇
するとのことで興味を持ち、
仕事の合間を見計らいながら
聴講させてもらった。
その申し込みの際に、
プライベートのメールアドレスで
登録しようと思っていたところ、
会社のメールアドレスでないと
登録できないというトラップが
あり、少々面食らった。
仕方なく、入力し直して事なきを
得たのだが、フリーランスの人で
メールアドレスはGメール使って
います、なんて人もザラにいる
ことを考えると、少々門が狭いと
感じさせられたのは事実。
主催の文藝春秋側に立って考えて
みると、このようなオンライン
カンファレンスは、かつてはリアル
イベントとして行われていた類の
ものであり、その場合は受付で
「お名刺を頂戴しております」
という台詞と共にコンパニオンが
せっせと個人情報集めをしていた
のがデフォルト。
これが、オンラインになった途端に、
GメールやYahoo!メールといった
フリーの「怪しい」アドレスばかりが
大半を占めるようでは、イベントを
主催することによる見返りが激減する
のであろう。
主催者のうまみは、今回であれば
協賛しているセールスフォース社、
KDDIエボルバ社、アマゾンジャパン社
らから企画料をしっかりいただくこと。
そして、協賛社がわざわざ大金を投じる
理由は、新たな見込客を獲得できること、
これに尽きると推測するところ。
そして、これら協賛社はいずれも
かなり大規模にDX絡みのB2Bサービスを
提供する事業者である。
彼らとしてみれば、それなりの規模の
企業に勤めていて、見込客として魅力の
ある参加者の個人情報が、できるだけ
大量に欲しいのだ。
最後にアンケートで、彼らの事業領域、
サービス領域にどの程度興味があるか、
更には決裁権をどの程度持っているか
というストレートな質問も並んでいた。
実際にそういうサービスの導入を検討
していて、話を聞くのに丁度都合が
良かった、なんて人も中にはいるだろう
が、私などはあまりの露骨さに少々
胸やけ気味である。
とはいえ、入山さんや落合さんらの
大変ためになる話も聞けたので、
その代償として個人情報を渡さざるを
得ない点は一応納得済み。
展示会ビジネスと似たような仕組み
ともいえる、カンファレンスビジネス。
文藝春秋も、出版だけではなかなか
厳しいであろう昨今、新たなビジネス
ないしは収益源へとつながる可能性を
求めて、力を入れているのだろう。