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言い得て妙な「エビフライの尻尾」理論

「おしりだって、洗ってほしい。」

TOTOのウォシュレットが発売された
ときの、一世を風靡したコピーです。

CMの映像表現も巧みでしたが、
何よりこのコピーの巧みさには
感心させられた人が多かったのでは
ないでしょうか。

このコピーを書いた人は、
日本を代表するコピーライター
お一人、仲畑貴志さん

ウォシュレット以外にも、
数多くの名作コピーをつくって来た
名人の中の名人と言える方。
レジェンドといった方が良いかも
しれません。

そんな仲畑さんが書いたコピーの
一つに、「新潮文庫」のために書いた、
こちらがあります。

知性の差が顔に出るらしいよ……困ったね。

1979年ですから、私もまだ小学生。
広告には、桃井かおりさんが起用
されていたそうです。

キャッチコピーは、短ければ短いほど
いいと考える向きも多い中で、
最後の「……困ったね。」がちょっと
余計なのではないか?

そんな意見がクライアント側から
出た様子。

その時に、仲畑さんが反論した根拠と
して持ち出したのが、
「エビフライの尻尾」理論

仲畑さんのコメントを要約すると、
こんな感じです。

コピーは、企業からの「押しつけ」になるより、受け手に「参加する余地」を持たせた方が届きやすい
最後の「…困ったね。」で、「そう思わない?」という感じを伝えたかった。
確かに、コピーは短いほうがいい場合が多い。しかし、その言葉に込めた意図は、短くすると伝わらなくなる場合もある。
それを、「エビフライの尻尾」理論と名付けた。エビフライの尻尾は、ほとんどの人が食べないが、だからと言って最初から尻尾が取られたエビフライが出てきたら、どんなにおいしかったとしても、それはもうエビフライとしての個性を失っている。
このコピーで言えば「知性の差が顔に出る」はエビフライの身「困ったね。」が尻尾。「エビフライの尻尾」こそが、多くを伝えてくれる。

上記Advertimesの記事中にある仲畑さんの発言を私なりに要約してみました。

さすがはレジェンドの面目躍如
見事なメタファーの選び方だと言える
のではないでしょうか。

たった一行のコピーの裏側には、
このように、様々な思い、試行錯誤、
議論、物語などが詰まっているとも
言えるでしょう。

それだからこそ、
たった一行でありながらも
人の心を打ち、
受け手に強烈な印象を抱かせ、
彼らの行動変容を促す
ことがある
わけです。

これまでにもこのnoteで色々取り上げて
来ましたが、やはりキャッチコピーは
奥が深い
ですね。


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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。