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潜在価値開発

マーケティングの用語で頻繁に
使われる「ニーズ」という言葉。
日本語にすると「需要」になるの
だろうが、表現が硬くなってしまい
逆に耳になじまない気がする。
「ニーズ」そのままの方が通りが
良いかもしれない。
 
「ニーズ」には、
・顕在的なもの
・潜在的なもの
の二種類ある、というのは良く
言われるところ。
 
「顕在的ニーズ」とは、
既にその存在が明らかで、誰もが
分かっているニーズ。
消費者やユーザーが、何かモノや
サービスを買うときに、何のため
にそれを買うのかがハッキリして
いるパターン。
 
「潜在的ニーズ」とは、
言葉通りではあるが、その存在を
消費者やユーザー自身が分かって
いないニーズである。
「こんなモノが欲しいのでは?」
「あんな使い方もできますよ!」
といった質問や提案をされて、
初めてそんなニーズがあったのだ、
と気付かされるパターン。
 
後者の「潜在的ニーズ」に関する
知見を深掘りし、独自の理論化を
図ったという書物をこの度読了した。
しばらく「積読」状態だったが、
年末年始の休みを利用して読み
進めたものだ。
 
『潜在価値マーケティング』
 平野 淳 著
 幻冬舎メディアコンサルティング

がそれである。
 
著者は、ヤクルトで広告部長まで
務めた方で、自らが開発した理論を
ベースに素晴らしい実績を上げ、
その後独立。
ビモクリという会社を立ち上げて、
自らの理論を更に精緻に練り上げた
末、様々な企業にコンサルティング
サービスをしている。
 
著者独特の言い回し、言葉に対する
定義の与え方などに慣れないと、
読み解く際に少々誤解が生じそう
なところが散見されるが、マーケ
ティングに携わったことのある人
であれば理解は出来るだろう。
 
マーケティングとは、
消費者・ユーザーが抱えている
問題・課題に対して、
事業者の側が解決策を提示して、
市場を形成する活動である。
 
ここに出てくる
「問題・課題」と「解決策」を
それぞれ
・顕在する(目に見えている)もの
・潜在的な(目に見えない)もの
・創造的な(元々存在しない)もの
に分けてマトリックス化し、
それぞれの象限/領域において
戦略を決めていくのだという。
 
従来のマスマーケティング理論は、
顕在問題に対して顕在する解決策を
当てはめるに過ぎず、大切な部分を
見逃しているという趣旨を著者は
述べている。
 
この辺の指摘は、少々誇張が
過ぎると個人的に思うが、
潜在的な問題、潜在的な解決策に
的を絞って、新しいカテゴリーを
創出することにこそ大きな意義を
見出すことができるという主張は
100%の賛意を表したい。
 
 
マーケティングとは、別の言い方
をすれば、いかに
「ギャップフィリング」するか、
つまり現状と目標の間にある差
(=ギャップ)をいかに埋めるか
を考え、実行することだ。
 
このギャップを、著者は二つに分け、
「標準」に対して
・プラスのギャップ=快の充足
・マイナスのギャップ=不快の解消
があると表現している。
 
重要なのは、「標準」を設定する
からこそ「ギャップ」が生まれる、
というところだ。
ここでいう「標準」は、
「目標」と読み替えて良い。
「目標」がなければ、そもそも
「ギャップ」が生まれず、何を
目指すべきかが分からない。
 
裏を返せば、
「目標」=「標準」
を新しく作り、提示すれば、
そこに新たな「ギャップ」が
生まれ、それを解決するための
新しいビジネスを創造すること
ができるのだ。
 
 
他に琴線に響いたポイントと
して、以下を備忘的に挙げて
おく。
 
149ページ
「顧客は、自分の抱える問題や
欲求に該当するカテゴリーの
プロフェッショナルを潜在的に
探していて、そこにぴったりと
当てはまる存在が見つかれば
「すべて任せて自分では考え
たくない、悩みたくない」と
思っている。」
  
187ページ
図15
潜在価値開発の7ステップ
開発のメソッド
 
まず社員研修からスタートし、
社員インタビューを経てから
顧客にアプローチするという
順番が、これまでの常識とは
異なり、かつ重要なポイント。
 
 
帯にある
「従来の理論・手法はもはや
 通用しない」
「21世紀のあらゆるマーケティング
 戦略のベースとなる理論書」
は大げさ過ぎると思うが、
丁寧に中身を読み解いて活用
すれば、実務上とても有用と
なるであろう。

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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。