「タカラヅカ」の見事な経営戦略
かつて、一度だけ「タカラヅカ」を観劇
したことがある。
確認したら、早や7年も経っている。
家族で関西に旅行し、ユニバーサル・スタジオ
訪問をメインイベントとして楽しみつつ、
宝塚大劇場での観劇も旅程に組み込んだ。
妻と娘が以前からファンであり、
私も一度はどういうものか観てみたい
という好奇心もあって、折角だからと
「聖地」にまで足を延ばしたのだ。
百聞は一見に如かず。
ショーのクオリティは素晴らしく、
決して良い席ではなかったものの
「これがタカラヅカか!」
という感動と余韻が残ったのを
今でも記憶している。
とはいえ、私自身は継続的なファンに
なるほどのめり込むには至らず、
妻や娘がハマる理由の一端をある程度
理解したというレベルに過ぎない。
そんなタカラヅカを成功させるために、
裏でどんな仕掛けが動いているのかを
教えてくれる、非常に興味深い本が
ある。
奇しくも、私が「タカラヅカ」を観劇
した2015年に発行されている。
その分、内容的にはちょっと古さを
感じる部分があるが、100年以上続く
「タカラヅカ」の長寿の秘密を理論的に
解き明かそうとしており、とても面白い。
マーケティングの観点から
特に興味をそそられた部分が、
その独特のポジショニングに関する
分析である。
黎明期には、阪急電鉄の本業=鉄道事業を
補完する「気楽な立ち位置」として、
万年赤字体質でも許されていた。
あくまでも、鉄道の利用客を継続的に
誘致し続けるためのアトラクションの
一部という位置付けであり、
実質的に阪急本社の広告宣伝費扱いに
過ぎなかったのだ。
そのような環境下で、
「女が男を演じる」という、
世界でも唯一無二の超ニッチな市場を
徐々に開拓し、徐々にコアファンを獲得
していった。
このような「超ニッチ」市場は、
外部環境が激変すればあっという間に
吹き飛んでしまうリスクがあったはず。
しかし、幸運にも「気楽な立ち位置」を
継続できる中で、ひたすらファンの方々の
コミュニティ作りを追求することができ、
それが今となっては競争優位の源泉として
機能しているというのである。
これ以外にも、ファンコミュニティとの
関わり合いの中で、「シロウトの神格化」
プロセスを回していくというノウハウを
「ブルーオーシャン戦略」を体現するもの
と評価していたり、
マイケル・ポーターが説く「垂直統合」
システムを宝塚歌劇が採用しており、
それが効率的で無駄のないプロセスを
生み出しているとの分析内容を披露して
いたりと、なかなか読み応えのある話を
展開してくれている。
「タカラヅカ」に興味のない人でも、
興味深く読めること請け合いである。
Kindle Unlimitedを契約していれば、
無料で読める。
気になる舞台裏、ちょっと覗いてみては
いかが?