第83回 実録エッセー『マグロステーキの缶詰130g×2』 カメロー万歳 白洲太郎 月刊ピンドラーマ2023年2月号
ブラジル在住の皆さん、Feliz ano novo!
というわけで、ついに2023年が始まってしまった。2022年を振り返ると、個人的にはあまりイケてない1年だったように思う。帯状疱疹になったり、車をインロックしたり、スマホの画面を割ってしまったり…。と、改めて羅列してみると、命に関わるような事態には陥っていないだけ、実は平和な1年だったのかもしれない。
今年はその平和にプラスアルファーをして、自身の出世にもつなげていきたいものだ。などとソファーに横たわりながら祈る今日この頃であるが、いきなりバッドなニュースが飛び込んできてしまった。
なんと、昨年の9月に日本から送ってもらった荷物がブラジルの税関で差止めを食らい、『Importação não autorizada (輸入不許可)』の烙印を押されてしまったのである!
もはや日課となっていた郵便局のサイトチェックにより発覚したのであるが、原因となったのは『マグロステーキの缶詰130g×2』であり、動物由来の成分が含まれていることが問題らしい。このような類の商品を輸入するには特別な書類が必要らしく、税関はその不備をついてきたのである。
我々の顔は青ざめた。特にちゃむ(ちゃぎの)の。なぜなら今回の輸入事業の音頭を取っていたのはちゃむであり、発送人は彼女のお姉さんである『あねっし』だったからである。
日本からブラジルへの郵便は新型コロナウイルスの影響で長らく停止されていたが、去年ようやく解禁された。早速、日本食材や雑貨などがパンパンに詰まった宝箱をあねっしに発送してもらったというわけなのだが、その重量はなんと25キロ。これがヘロインやコカインなどの違法薬物であれば末端価格は何億にも何十億円にもなることだろう。もちろんそのようないかがわしいアイテムは一切入っていないが、まさか『マグロステーキの缶詰130g×2』が麻薬G面ならぬ税関係員の目に止まってしまったというのは何という不運であろうか。そしてわずか260gの缶詰のせいで、25キロの宝箱がすべてパアになってしまうのだとしたら?
これを不条理と呼ばずして何を不条理と呼べというのだろう?
『わかったよ。マグロステーキはアンタらにくれてやるから、それ以外は通関してくれ』
そういうわけにはいかないのだろうか?
どうもいかないらしいんだな、これが。
自由の国とも大雑把な国とも表現することのできるブラジルであるが、こういったお役所仕事に関しては変なところで厳しいというか、細かいというか、融通がきかないのである。とにかく問答無用でダメ!ということらしく、一応抗議することもできるようではあるが、事実上、お上の決定に従うしかないという状況だ。2022年の9月末に日本を出港し、ブラジルに到着したのが11月の末。そこからさらに税関検査で待たされること約1か月、ようやくステータスが変わったと思ったら、まさかの
『Importação não autorizada (輸入不許可)』
である。
今回の輸入事業にかなりの情熱を燃やしていたちゃむは真っ白な灰となり、さすがのボクも大いに落ち込んだ。宝石のような日本食材の数々に、仕事で使う用のポーチや新調した普段着、その他もろもろのアイテムがすべてパアなのである。発送から到着、通関手続きに要した時間は約4か月。ちゃむとあねっしによる一大プロジェクトがまさかこのような結末を迎えるとは予想だにしていなかった。明けましておめでとう!のお祭りムードが一気に吹っ飛んでしまった瞬間である。
それでもまだ希望はある。時間はかかるが、荷物は日本に送り返されるはずだ。次回は禁製品をしっかりとチェックした上で、再度送ってもらえばいい。そう言ってちゃむを慰めるボクであったが、彼女の顔は青ざめたままである。
『どうした?まだ不安要素があるのかい?』
と、事情をきくと、日本から荷物を発送する際に郵便局に提出しなければならない書類があるらしいのだが、その中の項目のひとつに、
『万が一配送できなかった場合』
というのがあり、根がおっちょこちょいなちゃむは何も考えずに『放棄』を選択してしまったというのだ。
当時の我々に『輸入不許可になるかもしれない』などという発想は微塵もなく、いくらかかるかわからない関税の心配ばかりをしていたのである。少し冷静に考えれば、多少のオプション料金を払ってでも『返送』を選択するべきであった。しかしそれももう後の祭りである。
新型コロナウイルスの影響で長らくストップ状態だった郵便がようやく再開されたというのに、なんという不運であろうか。
ガックリと肩を落とすボクらであるが、この失敗を糧に前に進んでいくしかない。
というわけでブラジル在住の皆さん、国際郵便にはくれぐれもご注意を!
我々のような事態に陥らぬよう、我々の間抜け具合をここに記し、注意喚起とさせて頂く。
それではまた次号!
月刊ピンドラーマ2023年2月号
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