お腹が痛いのは何が病気?<下腹部編> 開業医のひとりごと 秋山一誠 月刊ピンドラーマ2024年11月号
先々月からの腹痛のひとりごと第三弾です。今月焦点をあてる下腹部の特徴は生殖器の存在です。現在の世の中では生殖器イコール性別ではないとすることになってきています。生物学的性差(セックス、sex、sexo)は社会的・文化的性差(ジェンダー、gender、gênero)とは関係ないのだと(註1)。しかし手術して全摘出でもしない限り臓器としての生殖器はお腹の中にありますので好むと好まぬに係わらず、それらの臓器が故障して病気になる可能性はあります。この点、ややこしい医療現場になってきています。つまり自称女であっても前立腺があったり、自称男であっても子宮があったりでこのような事情にどう対応するかが最先端医療のテーマの一つになってます。
『なので、今回は男性と女性の腹痛は異なるという話。』
上腹部と下腹部の定義はわかりやすく言うと、おへそが境でその上が上腹部、その下が下腹部になります。下腹部に収まっている臓器は「大腸」、「尿路」、「膀胱」、「子宮」、「卵巣・卵管」、「前立腺」です。尿路は泌尿器の一部ですが、ここが痛むと三大疼痛の一つと言われるくらい痛みますので特別に記載します。また、狭義では臓器ではありませんが、痛むと命に関わるので大動脈も記載します。次に、腹痛の種類のおさらいをすると「内臓痛」、「体性痛」と「関連痛」の3種類の分類です。下腹部の腹痛はこれらの臓器と3種類の痛みという要素間の関連になるわけです。それぞれ見ていきましょう(下のPDFファイル参照)。
臓器ではないのですが腹痛になる原因として記載を忘れてはならないのが、腹壁です。大きく分けて内側と外側の問題が挙げられます。内側は腹腔内全体に「腹膜」と呼ばれる膜があり、これが損傷したり炎症をおこしたりするとかなり痛いです。腹膜が単独で病気になるのはまれで、普通はお腹の中のどれかの臓腑が故障して付近の腹膜部分も巻き込まれるパターンです。外側には筋肉・皮下脂肪・皮膚があります。腹痛の原因としては比較的頻繁に「腹壁ヘルニア」が認められます。筋肉が弱くなり、腹部内の内容物(たいがい腸と脂肪(大網・小網))が飛び出る疾病です。なりやすい場所は臍と鼠径部で、普通ひどく痛みませんが、腸が突出して脱腸状態になり、ねじれたり詰まったりする嵌頓(かんとん)になると緊急手術が必要になります。
腹部の癌に関する話は先月のひとりごとをご覧下さい。今月記載した臓器・器官のいずれも癌になる可能性はあります。発病率が高い部位は男性は前立腺、大腸、腎臓、前立腺、膀胱の順、女性は大腸、子宮、卵巣、腎臓の順です。
命に関わる腹痛はすぐに処置する必要があります。次のように発症してあまり時間が経っていない(1週間以内)、「急性腹症」と呼ばれる状況は外科的措置が必要な場合が多いのでガマンしてないですぐに受診する必要があります:
・突然発症した腹痛
・これまでに経験したことがない腹痛
・とても痛く、耐えがたい腹痛
・時間が経つにつれて増してきた腹痛
・安静にしても6時間以上続く腹痛
・嘔吐、発熱、胸痛、下血、呼吸困難、意識低下が伴う腹痛
『ヤバい状態は個人差がある耐性に左右されるので、どうもおかしいなとか、ちょっとわからんなとか疑問がある場合は念のため診察を受けたほうがよいと考える。かかりつけ医がいる方は相談事項です。』
月刊ピンドラーマ2024年11月号表紙
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