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ヘルシンキ🇫🇮トレランレースに出よう!🏔Road of the Helsinki Trail Running Race

前回はヘルシンキでマラソン(ハーフ)レース参加についてレポートしましたが、今回はトレイルランニングレース出場についてお届けします。
フィンランドでトレランをする場合の参考になると嬉しいです。

フィンランド最大トレランイベントNUTS

フィンランド国内で最も規模の大きなトレランレースNUTSは、北部のラップランドでレースを行うことが多いです。
南部に比べて地形の高低差も大きく、多様な自然環境と起伏に富んだ広大な自然の中を駆け抜けられます。

まだわたしは土地勘も無いし遠いし、難しいなと思っていましたが、今回は首都ヘルシンキにある森林中央公園でのレース開催ということでアクセスも良く、参加を決めました。
レースの距離は24k、14k、6kがあり、わたしは24kに参加しました。

わたしはトレラン自体はスパルタンレースのトレーニングを機に2年前からしていて、中級者というと気が引けますが、ビギナーという時期は去ったかなというレベルです。

以前のマラソン大会はまともなトレーニングもせず一週間前にエントリーを決めて準備の時間が少なかったので、今回は余裕(?)を持って一ヶ月前にエントリー出来ました!
マラソン大会でハーフを走ってから1.5ヶ月後です。
このままの調子でちょこちょこと走っておけば完走はできそうです。

ヘルシンキ中央公園

レースコースのあるヘルシンキ中央公園はヘルシンキの北ボーダーから南はヘルシンキの中心街近くまで縦長に広がる全長約20kmの森林公園。
よく整備された道は大きな高低差はなくウォーキングやジョギングに適しています。

公園内の道は自然を感じながらウォーキングやジョギングに適した遊歩道が通っている

その道の左右に広がる森の中には山や大きな岩群、小川があり、マウンテンバイク用のオフロードやケモノ道が張り巡らされており、トレランの主なコースはそこにできるようです。
日本の山のように標高は高くありませんが、常にアップダウンや蔓延る木の根やゴツゴツした岩があり、テクニックが少しは必要かなという印象です。

遊歩道から森に一歩はいるとそこは岩と樹々のジャングル
中央公園の案内看板。ある程度の道は案内されている
オフロードルートをしめすマーク。

レースコースを試走する

公式ガイドにレースコースが出ており、Trail Connectアプリでルートを追いながら走ることができます。
GPXデータがダウンロードできる(有料登録必要)のでスマートウォッチにインストールもできます。
わたしはApple watchしかなくて、非対応のはずなのでそのままアプリを見ながらスマホ片手に走ります。
片手が塞がるのがちょい不安です。

Trail connectの画面。24km設定なのに実際は25kmあります!

試走した時の様子はYamapからも見ていただけます。

走ってみた感想がヤバい(悪い意味で)

レースコースを試走してみた感想は「泣きそう」でした。
標高は累積で700m程度と大したことはありません。
ただ、ルートを追おうとすると、どこをどう走ったら良いのか全然わからない場所が多いのです。
パッと見、道がないのです。

日本の山は登山道があって、分岐は頻繁にありません。
自然いっぱいでチャレンジングな地形であっても、目の前にだいたいわかりやすく道が示されています。
道を外れると危険なので、道以外を走ることを考えていません。
基本的に登山ルートは分岐だけ気をつければ良いのです。

道などない岩場のジャングル
一度通り過ぎてしまい、戻ってきたけどすぐに分からなかった道。真ん中に道があるの見えますか?看板も何もない。
ただ森が広がるばかりで道がない!でもルートはこの中のどこかを突っ切れとある。
だから、こんな道は走りながらパッと見わかんないって!

それが、コースを走ってみると、目の前は広く一面に広がる森で、道がないかケモノ道が網の目のように張り巡らされているところが多いです。
アプリの示すルート上に自己位置が乗るように走っているのですが、GPSはその日の気分で数メートルおきにズレるので、そのズレが道迷いに繋がるのです。
草や木が茂ってケモノ道があるかどうかもわからない場所もあります。

そして私は圧倒的に方向音痴なのです。
Google mapと登山アプリのおかげで生き抜いてきたゆとりランナーです。
アプリを見ていないといけない時間がここまで多いと走るのは難しいし、アプリ無しでは当然切り抜けられません。
道なき道を迷いに迷って、ストレスで気持ちが持っていかれると身体も思うように動かず、試走初日は半分程度の距離で切り上げました。

フィンランドでは地図とコンパスで山の中を目標物に向かっていくオリエンテーリングという競技が盛んです。
そういう自然の中の方向感覚を養う必要があるのかな、と不安に。

スマホを見ながら何度か試走して、おおよそレースと同等の距離を走ると25kで4時間程度かかりました。

試走の記録(Yamap)はこちら。

走ってみた感想がヤバい(良い意味で)

走ってよかったなと思ったのはその自然の美しさです。
やはり風景が日本とは違い、新鮮で楽しいです。

標高が低く都会からシームレスに続く自然は、数キロ先にビルが建ち鉄道が敷かれている場所と思えない豊かな美しさに満ち溢れています。
野生のシカや、リス、ウサギ、小鳥たちに出会え、季節により一面に広がるブルーベリーやきのこを見ることもできます。
乗馬中の馬にも会えますよ。

空気も澄んで気持ちいい!
鹿がこちらを見つめていて幻想的な景色
夏は足元にベリーがいっぱい。これはリンゴンベリーで食べられます
ゆったり歩く馬
高台から広がる景色。ある程度高いところもあります。

日本の連なる山々は高低差が大きく、道を外れるのは危険ですが、この森は高い場所は少ないので、整備された林道から深い森の中へ気軽にアクセスできます。
何度か同じ場所に立ち入って地形を把握してくると、その日の気分で好きなように道なき道を縦横無尽に駆け巡ることができます。
アプリに翻弄されなければこんな素敵なところはありません。

日本では用意された道の上を方向を気にせず楽に走らさせていただいていたので、いざ自由に走れとなった時に戸惑うことも多く、どれだけ自分が記憶力がなくて方向音痴か思い知ります。
本当に自然のまま!本能が目覚めそうです?!

突然現れる身長よりデカい巨石
割れた岩の谷
戦争時代の壕があちこちに残っており、朽ちかけた感じにラピュタ感があります
森の中に潜むウォールアート

パッと見で奥深い森に見える場所でも、子供達がオリエンテーリングをしていたり、おばあちゃんがベリーを摘んでいたり、カップルが寝そべっていたりします。

オリエンテーリング中のキッズ

コースの総評

コースの標高的な難易度は少ないのですが、時おり苔の生した岩山を上らされたり、湿った木の根の続く道があったり、ぶかぶかの湿地や藪の中を走ったりするので、ロードに比べたら細かなテクニックは必要になります。
パワーウォークのようなトレイルの登り降りに必要なテクニックはあまり要りません。

コースとしては初級なのでレースはスピード重視です。
マラソンが強くて、トレランやってみたいなという方はエントリーに良くて結構上位に行けそうに思いました!
マラソンのように常に一定以上のスピードで走る心拍や持久力と、さまざまな形状や状態の接地面に対するバランスと細かな足捌きが必要です。

レース前日イベントへ!

会場となるエラインタルハ競技場で、レース前日にゼッケンの受け取りや、スポンサーによるトレーニングイベントが開催されていました。

わたしはランニングスクールによるランテクニックのワークショップと、実際のレースコースの一部を使ってトレランのテクニックを学ぶグループランに参加しました。

トラックを使ってランフォームなどを教えてもらいます
HOKAやDynafitのシューズを試し履きできます

グループランで明日のレースコースに入ってみるとオレンジ色の目印が細かく立っていたり、木にリボンが付けられていたので、これなら当日は地図を見なくても走れそうで安心しました!

グループランの中でトレイルの足運びなどをレクチャーしてくれます
レースコースを示す、ところどころオレンジの印のついたスティックが立っています
コーチのRiikka Tulppoさん。今回のレースでは女子総合6位でした!すごい

レース当日がやってきた

2024年10月12日、天候は朝は晴れで気温は8度程度だったかと思います。
午後に雨の予報です。
雨が降る前に帰ってこれると良いのですが。

出走時間は以下です。
10:00 エリートランナー向け
10:05 全てのランナー向け
〜10:15 リラックスしたペースで走りたい人向け


わたしはエリートではないのですが、道が狭いと人が詰まってなかなか前が進まない経験があり、最初の組に入って少しでも前を空けたいと思います。

会場に到着

眩しい朝日の中、トラック上でストレッチやアップをします

朝9時にエラインタルハ競技場に到着し、アップをはじめます。
実は女性特有の"毎月の恒例行事?"のため、朝から軽く貧血のような状態に。
しかも通常よりズレてわざわざこの日に当たるなんてひどい。

トラックを軽く何本か走ったのですが進む力が伸びる感じがしない。
とりあえず出来るだけストレッチやドリルで身体を柔らかく暖めて、気楽に臨むことにしました。

スタート前でパチリ

出走時間直前、ダンナに荷物を預けて「試走のタイムだとゴールは4時間くらいかなぁ。方向指示あるからマップ見るより早く帰ってこれると思うけど。」とわたしは不安そうに言います。
ダンナは「3時間後にくるよ!」と言いますが、そんな早くはないよ、と苦笑し手を振ってスタート前へ。

スタート前でもろもろちょっと不安になってる

MCのカウントダウンでレースがスタート!
どうなるわたし?!

行ってきます!

スタート直後

最初のスタートはまずまずで、周りを走っているレーサーのかたまりについて行っていましたが、森に入ってからだんだんと抜かれていきます。

過去の経験だと走り出してエンジンがかかってこれば、調子よければ4kくらいから、そこそこでも8kくらいから、グンっとパワーが出せています。
それまでは抜かれてもマイペースでと気楽に考えていようかなと思っていましたが、この日はそんなことが出来るアイテムがわたしの中に出てこなかったみたいで、なかなか力は出せません。

PRESS画像に映っていたわたし

同じようなことはプライベートの山ランでは過去にあって、そんな時は焦ったり無理せず、ゴールまでの距離や時間をイメージしつつ、今の走れてるペースを崩さず、前に進むのみです。
いつもならこうなのに、とか、前はあんなこともできたのに、と考えだすと進めなくなってしまいます。

わたしは、苦しんで何としてもタイムを上げたいとは思えなくて、「楽しい」が原動力の大半
楽しければ夢中になって、身体が走りたいと思えば無意識に体が動き、自然にぐんぐん走っているので、走らなきゃ、と思う時点で無理をしていることになります。
無意識にエネルギーを乗せて走らせて、意識は注意センサーに使っているので、推進力を意識にさせても長く続かず転倒したり道に迷ったり、うっかりエネルギーを枯渇するきっかけになります。

それを踏まえて現実的な体力のリソースでできることをする。
グッと出力を下げても、今の自分でも残りの距離を「夢中」でいけるかな、と思うところで安定させる。

その時は自分の理想の走りではないと思うかもしれないけど、そのほうが苦しみもがいてするゴールより効率よいベストな結果が出せることが実は多いのです。
いや、それでゴールできるならまだ上等。
無理して足攣ったり倒れたりして動けなくなってDNF(棄権)するレーサーをたくさん見てきました。
その辺のメンタルは高尾の山に育ててもらいました!

PRESS画像から。上空から見たレースコース

突然の雨

走り出して1時間ほど経ち、雨が降ってきました。
かなりの大雨です。
午後からって言ってたのに、ヨーロッパの天気は当てになりません!
フィンランドは岩が多く、表面の凹凸が細かいので雨が降ると小さな窪みに水が溜まり滑りやすくなります。
前日のグループランの時も雨の後で、その傾向は分かっていたので、何人かがツルツル滑る中、滑りにくい場所を選んで順調に足を進めることができました。

途中で1枚だけ撮ったきのこ(あれ?レース中なのに余裕だね!)

実際のレースコース

レースコースは事前に公開されていたのですが、試走したものと実際かなり違いました。
同じところは多いのですが、往路であるところが復路になっていたりバラバラにつぎはぎされています。
戸惑いましたが、何度か見た景色が記憶に残っていたので、ゴールまでの距離感が分かっていてメンタル的には楽でした。

ゴール間近

そんなこんなで走っていると、残り5〜6km程度かなというところまできました。
思ったより早いペースです。
そう思ってくると少し気持ちが急かされたのか雨のせいか、ついに転倒してしまい、前を走っていたランナーに心配そうに声をかけられます。

少し足が痛んだので歩いていると、後ろから来たランナーに、何か声をかけられます。
フィンランド語なのでよくわかりませんでしたが、後ちょっとだからがんばろうぜ、みたいな雰囲気でした。

こういう時、レースっていいな、1人で走ってるんじゃないな、と感じます。

さて、もう少し、気持ちを奮い立たせてノロノロ走ります。
うちのダンナは3時間で来るって言ってたけど、それでもあんまり待たせなくて良さそうです。

ゴール!

最後の岩山を登り切っては下り、スタジアムに戻ってきました!
ゴールです!

ゴール!

3時間13分です!4時間かからなかった!
距離は26kmありましたよ?!

おい、ダンナ!どこだ!
いないじゃんよ?!

スマホをザックから取り出してメッセージします。
「いまゴールにいるよ?!」

ダンナから来た「入り口にいるからすぐいく!」というメッセージを見て顔を上げると顔を(><)にした男性が走ってきます。
「思ったより早かったね!」
ゴールを見てもらえなかったけど、家族の顔をみたら、終わったな、とホッとします。

ほんと思ったより早くて、最低でも3時間半くらいはかかると思っていました。
試走はよっぽど走れてなかったみたいです。
リザルトで女子総合で60位/160人なら市民ランナーとして良い方では無いでしょうか?

完走記念のペンダントを得意げに見せるわたし
記念の応援用ベルと木の完走ペンダントです。

レースの記録(Yamap)はこちら。

公式Facebookから雰囲気がわかるダイジェストムービーもあります。(私は映っていません)

フィンランドのトレランで気をつけること

今回の走ったヘルシンキ中央公園だけでなく、ヌークシオやコリなどの国立公園に共通して見られる地面の状態は岩床であったり、土から木の根が多く出ていることです。

岩床の続く道

基本的にフィンランドの国土の多くは岩で構成されていて、エリアによってはずっと岩場が続き自然のアスファルトロードにいるような感じです。
岩面の上を走ったりジャンプしたりするので、グリップや衝撃を考慮したシューズ選びをすると良いかと思いました。

ふたつともサロモン。日本では左のSENSE RIDE5のほうが軽くてソールも若干薄く小回りが効いて気に入っていたけど、フィンランドの岩の多い場所ではグリップが強くてクッション性もあるTHUNDER CROSSが走りやすい(個人の感想です)

また、その岩床の上に薄い土の層があり木の根が直下に伸びにくく横に成長して土上にはみ出るので、思わぬところに木の根の罠がありますので足元に注意してください。

表面に蔓延る木の根。この上に草が鬱蒼とカバーしていることも多い。

また、夏の森ではイラクサ科の植物が膝下程度の高さまで伸びて群れになっていることがあり、この葉や茎の表面の棘に素足を刺されると腫れや痛みが残りしばらく取れません。
ロングレギンスを履いたり、カーフスリーブやソックスで膝下を隠したりすると良いです。

ギザギザしている緑の葉がイラクサ。足首が見えていて少し葉が当たっていたのかしばらくチクチクしました。何日か症状は取れません。
余談ですがイラクサ(nettle)は火を通して無毒化し、ヨーロッパでは食品に使われています。こちらはイラクササワー!体に良さそうな味がしました笑

おわりに

首都ヘルシンキにいながら自然いっぱいのトレランレースを体験できて、とても楽しかったです。

自分が高尾や八王子に行っていた時は、ある程度急なドッケを踏みしめながら登っていって、息を戻しながら駆け降りるというのを何回か繰り返すようなコースが好きで、比較的平坦な尾根沿いを永遠にトラバースするのが苦手でした。

八王子の山で沢を駆け降りるわたし

今回のレースはそうした標高差の少なくずっと走り続けないといけない苦手なコースで、自分が逃げていた地形をたくさん走ったので(そのまま逃げ続けたかった)、経験値が上がったのではないでしょうか?!

北部のラップランドまで行けば地形の選択肢も広がるので新たな挑戦ができそうです。
フィンランドに移住して生活のスタイルが変わり、日本にいた時ほど練習が出来ていなくて、無理のない心地よいバランスで取り組んでいけたらなと思っています。

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