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【信じられない驚愕の未来】『2030年 すべてが加速する世界に備えよ』を読んだ感想
未来予測の本って、マイナスな内容が多いですよね。
特に日本については世界でも類をみない超高齢化社会に向かっているので、そういう論調が大きくなるのは仕方ないのかもしれません。
危機感を煽って対策を促すのはいいですが、警鐘を鳴らす系の本が個人的にはあまり好きではありません。
それよりも「未来はこんなふうに変わっていくから、今からこういう準備をしておくといいんだ」と前向きに捉えられる本のほうが楽しいので好きです。
今回紹介する『2030年 すべてが加速する世界に備えよ』はまさに後者で、ワクワクする未来に期待が持てます。ということで、くわしくレビューしていきます。
想像を超える未来が、わずか数年後に訪れる
この本では技術革新やテクノロジーの進歩によって買い物、広告、エンターテイメント、教育、医療、保険・金融・不動産、食料といったあらゆるジャンルの未来がどのように変わっていくのか、非常に細かく書かれています。
特定のジャンルに特化していない分、いろいろなジャンルのいろいろな未来が包括的に感じられるのが本書の特徴と言えるかもしれません(未来予測の本はだいたいそうかもですが)。
読後感としては「内容はわりとむずかしいけど、ワクワクする未来が待っているんだな」という感じ。そして、その未来は僕たちが想像するよりも遥かに速く訪れるということです。
10年後には車を運転することもなくなるし、移動手段の高度化によって”立地の良さ”という価値観もなくなるし、培養肉のおかげで牛を殺さずにステーキが食べられるようになる。
こういう未来が本当にスグそこまで来ているんだなというのをすごく実感しました。
一方で、そういった未来を裏付けるための根拠としてかなり具体的な説明が専門用語で書かれているので、内容はわりと難しいです。
そして、翻訳書ということもあってカタカナが多いので多少の読みにくさはあります。
さらにいうと、日本の事例も出てくるには出てくるけど、数が少ないのでちょっぴり悲しくなります(これから台頭してくる中国やインドの事例が多いのは仕方ないですが)。
とはいえ、未来予測の本としては非常に精度が高いだろうと思いますし、数十年後の将来に期待感を持ちたい人にとっては十分楽しめる内容になっていると思います。
体内のホコリが健康維持に役立つ?
本書の中から「これは…!」と感じたものをいくつかピックアップしていきたいと思います。
まず1つ目は【スマートダスト】です。
たとえばデータを知覚し、保持し、送信できるホコリのサイズのシステム「スマートダスト」だ。(中略)それが近い将来には、ナノスケールのホコリが血流の中を移動し、データを収集するようになり、人体という最後に残された未知の分野を開拓していくのだ。
ホコリというのはあくまでも比喩表現であって、実際には「血流の中を巡れるくらい小さなセンサーが開発される」ということです。
現在のところ、健康診断をするには血液検査をしたり、細胞の一部を採取して調べるなど、大小の苦痛が伴います。
しかし、検査に必要な器具や装置が小さくなっていくことで、患者に負担がかかることもありません。
このへんはまだまだ普及段階にはないようですが、こうした可能性を提示してくれるだけでも個人的にはありがたいです(年齢を重ねるにつれ、どうしても悲観的な事ばかり考えてしまうので。笑)
土地に対する価値観が激変する
一般的に、土地というのは「駅チカ」とか「学校に近い」といった利便性が価格に大きく影響を与えます。
「値下がりする土地がいやなら、駅チカを買うべし」みたいな感覚って、多くの人が持っていると思うんですよね。
ただ、移動手段が発達して、移動に時間がかからない未来がやってきたらどうでしょうか?きっと、「駅チカに住む」とか「職場の近くが良い」という価値観はなくなるはずです。
あなたの自宅の価値は、さまざまな場所への近接性に左右される部分もある。(中略)だがこれからの10年で交通手段が様変わりすれば、A地点とB地点の関係も変わる。自動運転車、空飛ぶ車、ハイパーループによってあらゆる場所が「近場」になると、何が起こるだろうか。
リモートワークが増えたことで、土地に対する価値観が変わってきています。「そもそも職場に行かないんだったら、もっと郊外でいいんじゃないか?」という人が増えてきたことで、人の流れがガラッと変わったわけです。
それに似たことが、交通手段の発達によってさらに大きな潮流となって起こることは容易に想像できます。
たとえば、完全な自動運転車が実用化されるようになれば、移動時間に車内で仮眠したり仕事したりゲームができるようになります。そうなると「駅や職場からから近くなくても良い」という価値観がより醸成されやすくなるでしょう。
空飛ぶ車はなおさらで、移動時間が劇的に短くなるわけだから、郊外に住んでいたって不便を感じることがなくなるわけです。
つまり、交通手段の発達が不動産市場にも大きな影響を与えるということなんですね。
僕たちの実生活で考えてみると、持ち家を買うときの判断基準も変わってきます。
これまでは「購入後も値下がりしにくい立地に家を買ったほうがいい」という理由で、駅チカの狭い土地に狭い家を建てるみたいな価値観がありました。しかし、交通手段が発達すればそういった基準で家を選ぶ必要がなくなります。郊外に100坪の庭付き一戸建てを買う人が激増することも考えられます。
こんな感じで、この本には「未来に期待してもいいかもしれない」と思わせてくれる内容が詰まっています。悲観的な予測ばかりのメディアに嫌気がさしている人は、一読の価値アリです。