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世界をリードする中国のe-コマース市場

中国では「スーパーアプリ」が普及し、ネットショッピングの利便性がますます高まっています。その一方で昨年12月、中国の巨大ショッピングサイトであるアリババの創立者ジャック・マーが、中国政府から独占禁止法違反の取り締まりにあいました。

エコノミスト2020年12月26日号の記事 "The future of global e-commerce"には、欧米の電子商取引市場は中国を見習うべきだ! と書かれています。中国の電子商取引市場のどのような点が優れているのでしょうか。(以下、引用部分は上記リンク先のエコノミストの記事からです。)

「ここ数年のうちに、美団、拼多多(ピンドゥオドゥオ)といった新たなライバルが活発なビジネスモデルで成長を遂げてきた。競争激化のひとつの兆候として、中国の電子商取引業界におけるアリババの占有率が、上場時は81%だったものが今は55%に下がっている。」
"In the past few years new competitors, including Meituan and Pinduoduo, have come of age with effervescent business models. One sign of fierce competition is that Alibaba’s share of the market capitalisation of the Chinese e-commerce industry has dropped from 81% when it listed to 55% today. "

中国では、資本主義の競争原理が今のところうまく働いているようですね。

「欧米の企業はぬるま湯につかったような、変りばえのしないなわばりに長年おさまりかえってきた。したがってVisaは金銭支払い業務に、アマゾンは電子商取引に、フェイスブックはソーシャルメディアに、グーグルは検索に、それぞれ特化しているといったありさまだ。」
"And Western firms have long been organised in cosy, predictable silos. So Visa specialises in payments, Amazon in e-commerce, Facebook in social media, Google in search, and so on. "

中国では、異なるサービス間の壁を取り払う仕組みがすでにできています。サービスの種類ごとに違うサイトやアプリにアクセスするのではなく、ひとつのアプリを開くだけであらゆるサービスが受けられる「スーパーアプリ」がすでに普及しつつあります。

中国市場のやり方を見習ったり、中国企業とつながる欧米企業も続々と現れています。

「フェイスブックは、いまやそのソーシャルネットワーク上でショッピングサービスを促進していて、ライブ配信や、メッセンジャーサービスのWhatsAppを利用して、売り手と買い手を直接つなぐ「ソーシャル・コマース」に着手している。昨年12月、米ウォルマートは、中国製の動画投稿アプリTikTokを使って初のライブ販売イベントを開催した(ウォルマートはTikTok株の取得を目指しているがまだ果たせていない)。フランスでは、電子商取引アプリ「Vova」が前四半期のダウンロード数第6位となったが、Vovaは中国のピンドゥオドゥオの設立者とつながりを持っている。」
"Facebook is now promoting shopping services on its social networks, and engaging in “social commerce”, including in live-streaming and the use of WhatsApp, for messaging between merchants and shoppers. In December Walmart hosted its first live shopping event within TikTok, a Chinese-owned video app in which it hopes to buy a stake. In France in the past quarter the sixth-most-downloaded e-commerce app was Vova, linked to Pinduoduo’s founder. "

絶好調の中国市場ですが、懸念事項もあります。

「反トラストにあう心配がある。ジャック・マー氏に対して当局の風当たりが強くなったのは、冷酷な中国共産党がただその権力を見せつけたいためではないかと考えたくもなる。」
"And there are those antitrust concerns. It is tempting to see the crackdown on Mr Ma as just another display of brutal Communist Party power."

国家資本主義の中国では、順調に成長を遂げている企業に政府からの横やりが入る可能性も否定できません。またスーパーアプリがあっと言う間に普及したのも、中国国家にプライバシーの鍵を握られている市民にとっては、複数のサイトやアプリで個人情報を共有されても抵抗感がない(抵抗しても意味がない)から、という事情もあります。

「今のところ欧米の独禁法取締官は、昨年末の時点で訴訟や策定すべき法案が山積しているにもかかわらず、大企業をコントロールできかねている。彼らもまた、業界の行く末とその対応について中国から学ぶべきだろう。」
"So far American and European trustbusters have been ineffectual at controlling big tech, despite a flurry of lawsuits and draft laws at the end of 2020. They, too, should study China, for a sense of where the industry is heading and how to respond."

民主的自由主義的な資本主義は競争原理でうまく回るはずなのに、結局は数社の超巨大企業が市場を独占して新規参入者に不利となり、市場の流動性が弱まってしまうのはどうしてなんでしょう。中国の国家資本主義対、欧米の自由主義的資本主義、一体どちらに軍配が上がるのか、個人的にちょっと興味を持ちながら見守っている今日この頃です。

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