2021年 読書体験
2021年は78冊を読了し、3冊が読書中、1冊を中止したという読書体験の仕上がりだった。
■感想
今年の選書は、社会学と心理学が大きな軸になっていた。
■社会学
Eテレの「100分de名著」でブルデューの「ディスタンクシオン」を知ったが、番組の内容以上に、指南役の社会学者 岸政彦氏の語る言葉に強くひかれた。「断片的なものの社会学」は買ったその日のうちに読み切り、今は1400ページを超える「東京の生活史」を毎夜ちびちび読んでいる。なにも評価せずに、生きてきた道を思い出すままに紡ぎされた言葉は、ひとつひとつの生を実感できる。そして、その生が東京のどこかでいまも続いていると思うと、不思議とあたたかい気持ちにしてくれる。来年も、「東京の生活史」をゆっくり味わいたい。
■心理学
2月ころからヒーリングのため、ありのままに、いまこのときに集中するマインドフルネスを始めた。でも、始めてみたものの疑問に思うこともあったので、オンラインサービスを利用したり、宗教色を排して考え方を丁寧に整理した古典「マインドフルネスストレス低減法」を読むことで、かなり整理された。その後、ACT関連を読み進めた。理解するのと実践するのは大きな隔たりがあるので、生活の一部になるまで(なったあとも)、ときどき読み返すのだろう。
また、精神医療の現場を知りたくなって、日本最古の精神科病院の都立松沢病院 名誉院長(前院長)が執筆された「都立松沢病院の挑戦: 人生100年時代の精神医療」を手にとった。公的病院であっても、既得権益や保身のためだけに存在している人が少なからずいるし、一方で粉骨砕身して患者に接している方々がいる姿を目の当たりにして、無力感と多幸感をないまぜに覚えながら夢中で読み進めた。「仕事はやればやるだけ、増えていく」は重たい言葉だ。
■仕事関係
仕事関連では、知財業界で名著とされる、「インビジブル・エッジ」や「知的財産戦略(丸島 儀一著)」を遅ればせながら読み終えた。
前者は名訳もあって読みやすく、知的財産が産業革命以降、企業活動・社会活動にどれだけ影響を及ぼしてきたかを一気に読み解けた。知財の価値を再認識した。後者は言わずもがなの著者による書籍、特に契約に関しては再読しないと。勉強になる。
■研究
あとは、「「役に立たない」研究の未来」や「アカデミアを離れてみたら: 博士、道なき道をゆく」は良著だった。研究は面白い。
■2021年 とくに印象にのこった5冊
・インビジブル・エッジ (マーク・ブラキシル、ラルフ・エッカート著) 文藝春秋 2010
・都立松沢病院の挑戦: 人生100年時代の精神医療 (斎藤正彦著) 岩波書店 2020
・断片的なものの社会学 (岸政彦著) 朝日出版社 2015
・哀愁のサード 三宅秀史 (平岡 泰博著) 神戸新聞総合印刷 2009
・読む、打つ、書く (三中信宏著) 東京大学出版会 2021