本家の後継 9 泣き虫
人と同じように出来るようになるのは、いつからなんだろう。
普通って、何が出来るのがふつうなんだろう。
みんな同じように笑ったり、怒ったり、泣いたりしているのに。
行動を分けていくものは、一体何なのだろう。
この話は、自分自身の人生を振り返って、その苦悩の中を生き抜いてきた話です。実在する人物が登場するため各所に仮名を使わせて頂いています。
上の三人の姉妹はそれぞれ小・中学校に通っていた。
平日の日中は、隆子の世話をする人がいない。
それにもう少ししたら小学校にあがる。
「お金が少しかかるが仕方ない。」
真一は隆子を保育園に預けることにした。
(田舎の少人数のところで、保育園と幼稚園の合わさった運営だったとか)
保育園には、
ブランコやシーソー、ジャングルジム、砂場、他にもあった。
たくさんあって、楽しかった。
先生がいて、いろいろやるように教えてくれた。
隆子が入園したとき、珍しがって他の子達が隆子に寄ってきた。
「ひっこししてきたの?」「てんこうせい?」
隆子には何のことかわからなかった。
隆子は、自分以外の子同士が、初めから名前を知っていて仲良しなのを不思議に思った。
自分だけその輪に入れない。
隆子以外の子は、三歳の年少組からここにいるので、まるで兄弟のような関係が出来ていたのを、隆子が知るはずもない。
隆子は生まれたのが2月だったので、同学年の中でも小さい。
しかも、もともとトロイ。
入ったばかりで何もかも初めてのことだったので、何をどうやったら良いのかわからなくてオドオドしていると、おしゃまな先輩園児の格好の標的になってしまった。
あれこれと横から口や手を出してくる。
それでも少しは隆子も、自分のことを自分でやろうとするが、「ままごと」でもするように勝手に隆子の世話をすすめてしまう。
子供がやることだから、完成度は低いし、先生の目にも止まる。
隆子は「自分でやりなさい」と叱られた。
それでも、勝手に世話を焼いてくる手が止まらなかったので、どうして良いのかわからなかったので、とりあえず泣いた。
遊具で遊ぶ時にも、隆子が遊ぼうとすると、団体さま優先になってしまって遊ぶことが出来ない。ここでも泣いた。
保育園にはちょっと意地悪な女の子がいた。
名前は幸子と言った。
いつも隣の席に座っていて、隆子に嫌なことをしてくる。
給食の時には、自分の嫌いなものを隆子の器に放り込んでくる。隆子は少食で自分の分もやっと食べていたので、他の子が入れたものまでは食べない。
すると、幸子は「せんせい。隆子がのこしてる。」と告げ口をした。
母の日に、お母さんの似顔絵を描くという時間があった。
幸子が隣に座って絵を描いている。絵の人物は、薄いピンク色の顔と赤い口、目とまゆは黒だ。
隆子は母の顔がぼんやりとしか思い浮かばない。
顔の輪郭だけ肌の色で丸を描き、手を止めて考えていると、横から幸子の手が伸びてきた。
隆子の画用紙に、黒いクレヨンで変な形の大きい丸を重ねて描いてきた。
先生のスキを狙って、隆子の画用紙に手を出して、黒いクレヨンで線だけの口と鼻、そして目を三つ描いた。
そして幸子は「隆子がへんな絵を描いている」と先生に告げ口した。
幸子は笑っていた。
無邪気な笑いでは無かった。
その目の奥に、意地の悪い輝きがあった。
他の時にも、幸子はなぜか私だけを標的にしてきました。
横からツネッてくることも度々で、私はその度に痛くて泣き、幸子は「たかこがかってにないている」と嘘をつくので、私が先生に「幸子にやられた」いうと、また幸子にツネられるということが繰り返されました。
次第に保育園に行くのが嫌になって、親を困らせることになりました。
今思い出しても、本当に私はしょっちゅう泣いていました。
なぜそんなに泣いてばかりいたのか、今考えると、やはり情緒が幼かったのだと思います。
私は、自分の感情を誰かに伝えるのが上手では有りませんでした。
親のせいにするわけでは有りませんが
理由の一つに、父親や姉達が怖くて、発言や行動をしないことを覚えてしまっていたのだろうと言うことと、こんなときにはこういう行動をしたらいいということを教えてくれる人が居なかったこともあるのでは無いかと思います。
相手は自分と同じ年齢の子供であるにもかかわらず、とくに「恐怖心」に対しては萎縮してしまい、思考停止してしまう自分に、社会人になっても、結婚しても悩まされることになりました。
結果的に、自分の選択で行動を変えていけるところを、誰かのせいにすることで、被害者という立場にどっぷりと浸かって不幸感覚に人生の大半を過ごすことになって行ったのです。
正直に言いますと
大人になった私は、不幸自慢な女 になっていました。
引き寄せの法則的に言うなら
常に弱虫体質を漂わせているので、強者を引き寄せて自分が弱者であることを証明していたと言うことです。
まだまだ幼少期から話が続きますが
この続きは、また次回に。
続けて読んで頂いて、ありがとうございます。