本家の後継 16 悪夢
夜は怖い
眠るのが怖い
良い夢なんて一度も覚えていない
毎日
毎日
うなされるような夢ばかり
この話は、自分自身の人生を振り返って、その苦悩の中を生き抜いてきた話です。実在する人物が登場するため各所に仮名を使わせていただいています。
隆子は毎日のように、怖い夢しか見なかった
何の変哲もない夢さえほとんど見た覚えがない
戦場
建物は全て壊されていて あたり一面転がっている人々
場所によっては高く積まれてさえいる
家の外には恐ろしい生き物が徘徊している
人を食う
息を潜めて 気配を消さなくてはいけない
お墓
なぜかとっても怖い
近寄りたくないのに気になって仕方ない
お墓の方から恐ろしい声とも気配ともつかないものが隆子に迫ってくる
古くてボロボロの家
自分の家のはずなのに廃墟のように崩れている
しかも誰もいない
寒い雪の中
雪が割れてマグマが吹き出す
危ない!飲み込まれる
浅い川
なのに対岸は遥か遠く
川の流れは恐ろしく荒れ狂っている
渡ることのできない激流なのだ
湖
深い 怖い 沢山の霊が沈んでいる
恐ろしい気配が私を引き摺り込もうとしている
小学校高学年の頃
なぜこんなにも毎日、恐ろしい夢ばかりみるのだろうかと悩んでいた
毎晩、布団に入り眠ることに怯えていた
夢の中で自分が殺されてしまう
死への恐怖だと子供ながらに思った
どうしたら良いのかわからなかった
「死んだらどうなるんだろう?」
誰も教えてはくれない
せいぜい「悪いことをしたら地獄に行くよ」と躾のために教え込まれていたが、自分の見る夢とは結びつかなかった
毎夜見る、恐ろしい夢から逃れる方法はないのか?
死 への恐怖
そう思った
そして隆子は結論した
死んだら何もなくなる
どんな恐ろしい目に遭っても、死ぬまでの話
だから死んでも怖くない
そう言い聞かせ
眠ることへの恐怖心を消した
自分の感情の一部を封印してしまったのだ
それからも実家に住んでいる間はずっと、毎晩のように悪夢を見続けた
でも隆子はもう怖くなかった
だって死んだら何も無くなるから
心のどこかで本当は違うと言っていたが、自分を守るために自分に嘘をつき続けた
隆子は中学校を卒業して、集団就職で家を出るまでずっと変わりなく悪夢を見続けた
家を出て、寮生活をするようになり始めて悪夢を見ない夜を迎えた
環境が変わって何故、悪夢を見なくなったのだろう
その時は、父・真一に対する隆子の嫌悪感や恐怖心がそんな夢を見させていたのだと思った
もちろんそれも理由の一つだったに違いない
しかし姉たちに聞いても同じようなことを話していた
もしかしたら実家の波動や磁場がそれらを引き寄せていたのかもしれないと後々に思った
父もそんな磁場の中で知らず知らずに悪影響を受け、そのせいでお酒に溺れていたのかもしれない
反対に、酒乱で乱暴な父が原因で、淀んだ波動を生み出したせいでよからぬモノを呼び寄せていた可能性もある
隆子は子供の頃から少しだけ感受性が強く、不思議なところがあったから
そう言った波動が悪夢につながってしまったのだろう
隆子はずっと「死んだら何も無くなる」と思っていたのだろうか?
そんなことはない
だって、隆子は霊魂を信じていた
近所のお爺さんが亡くなった時にも お爺さん(の霊)が自分のところに訪れた感覚があった
そのおじいさんが亡くなった知らせを受ける前のことだったし、不思議な夢を見ておじいさんの死を知らせるかのような内容の夢を見たりしていた
そんなお爺さんの死を別に「怖い」とは思ってはいなかった
だって死んでも私のところに来れるなら「霊(お爺さん)は存在している」と思った
ただ「死後の世界」がどんななのかはわからなかったので、知りたいとはいつも思っていた
夢で見ていたのは「悪夢」であって「死後の世界」ではないことくらい感じていたからだった
悪夢を見なくなった隆子
実家から離れて、開放感を感じていた
そして「怖くない夢」も見るようになった
隆子は大人になっても時々「父・真一」が夢に出てきてうなされることがあった
父に追いかけられる
見つかるのが怖い
そんな夢だった
そんな夢を見なくなるまで、どれほど沢山のトラウマを解消する必要があったのか
インターネットの時代になって、隆子意外にも同じような体験をしてきた人が、意外にもたくさんいることがわかった
同じような体験をした人が自分以外にも居ることを知り、心を軽くしてくれることを願います
心の世界を変えるには、環境を変えることも一つです
大人になった今、決断次第で実は選べます
私の体験してきた人生
誰かの役に立てるような形で、最後まで書き連ねることができるか、今はわからないですけどね
続きはまた次回に
今回も本家の後継をお読みいただき、ありがとうございました