ていねいにコツコツと線を描いた先に生まれるマンガ
ぼくの妻は成人マンガを書いている漫画家のniko先生(@nikonikopun17)。
最近、ぼくは思うんだ。
実はぼくって成人マンガに興味がないんじゃなくて、ほとんどのマンガに興味がないんじゃないかって。
だって、年に数冊しかマンガを読んでない。しかもそのほとんどは数年前から読んでいる連載物だけ。新作を読むことも滅多になくなった。
成人マンガに至っては一冊も読んだことはない。妻のnikoさんが描いたマンガでさえ、読み切ったことはないんじゃないかな。
描いている途中で覗き見たりすることはある。あとはプロットの段階でセリフの言い回しを求められた時に見るくらい。
なのでぼくはいつもnikoさんにはかなり無責任なセリフを提示している。セリフを求められるところの前後の文脈はぼくの想像でしかないから。
しかしエライいもので、無茶振りのようなセリフの嵐をぶつけてみても、niko先生はマンガに取り入れる。ぼくは大したもんだなぁと思う。無責任極まりなく。
マンガというのは、ぼくが考えてたよりもずっと工程が多い。マンガを描いたことがない人のほとんどはみんな似たようなものじゃないかな。
恥ずかしながら、ぼくはnikoさんがマンガを描いて説明してくれるまで「トーン」というものが何なのかも知らなかった。
そもそもトーンて一般的なのかな?
ぼくが知らなかっただけ?
一応、トーンが何かを説明しておくと、モノクロマンガで現すための「色」みたいなもの。服の色や影など。モノクロマンガで髪の毛や服をよーく見てみるとトーンが貼ってあって、細かいドットが見られる。
たしかにこの「トーン」があるのとないのとでは印象はガラリと変わる。
だけどぼくはトーンがないマンガを見てもそれに気がつけるかどうか自信がない。もしかしたら違和感を覚えるということはあるかもしれない。
そのくらいにマンガ音痴。
そんなぼくが、妻であるniko先生の自称「専属プロデューサー」を名乗っているというのはここだけの話。
ウソ!twitterのプロフィールにもちゃんと書いてある。
そういった細かい作業がいくつもあってマンガが出来上がっていく。でも、マンガに限らずぼくが仕事でやっているプログラミングとか、音楽とか、絵画とか、そのほかの創作物もきっとそういう素人が見ても気がつかないような地味な作業の上に成り立っている。
あなたがお仕事や趣味でやっていることも、お客さんやユーザーに気づかれないにしても大事なことってあるんだと思う。
作っている本人にとってはとても大事な作業で、それがないと成り立たないこと。
そういう地味で丁寧な作業があるからこそ高いクオリティのものが出来上がる。
見ている側は気が付かなくとも、あるのとないのとではやっぱり違うこと。これが作品の良し悪しを決めていて、そういうところがプロとアマチュアの違いなんだろう。
ぼくは、妻のnikoさんが素人の同人作家をしていた時代からずっと見てきた。最初にデジタルマンガを描き始めた時は、それはそれはお世辞にもうまいとは思えないような線を描いていた。
nikoさんは、見た目からは想像もつかないような負けん気の強さの持ち主だ。自分がうまくマンガを描けないことに納得しない。それと同時に、割と不器用でもあるのでなかなか効率の良い描き方というのも見つかるまでに時間がかかり、最初の頃は随分と自己流を貫いて手間をかけていたみたい。
同業の方からも「そんなに大変なことをしているんですか?」と驚かれることも多々あった。ぼくは逆にそれが彼女の価値になっていたような気もするけれど。
みんなとは違うことをやっているからこそ個性が出る。
すべて効率よくできればマンガだってもっとスラスラと描けるのかもしれないけれど、不器用で手間をかけてしまっているのもnikoさんのいいところだと、無責任のド素人は思うわけだ。
ここでもう一度自己紹介。
niko専属のプロデューサーのぴこつです。
nikoさんがアマチュア時代から下手な線で描いてきたマンガは、最初はちゃんとしたマンガにはなっていなかったんだろう。だけどnikoさんは手を抜かなかった。
下手だろうが何だろうが、丁寧に、コツコツと続けていた。
途中で挫折しそうになったことはある。それでも好きで描いていたマンガなので、何度も思い出したかのように描いて、自分のマンガを世に出せるようにまでになった。
すごいことだよ、本当に。
今はプロの漫画家として、お仕事としてマンガを描いているnikoさんだけど、マンガを作り上げる時の意欲というのは同人誌を描いている時と同じなんじゃないかな。
たしかにお仕事で描いているから、自分だけで思うように描くことはできないかもしれない。だけどその中にも随所にnikoさんの良さは入っているはず。
不器用で、おおらかで、それでも丁寧な仕事。
毎日コツコツと描いている姿というのは、たくましくもある。
手首の痛みはある。足のむくみもある。肩こり、腰痛もある。
それでも、誰がなんと言おうと彼女はたくましいのだ。
ぼくの無茶振りのようなセリフの提示はこれからも続くだろう。
正直、ぼくは「よくこんなのでマンガをかけるな」と思うんだけど、それがちゃんとマンガになるのが不思議だし、面白い。
マンガを描くための本質的な苦労というのは、ぼくにはわからない。
nikoさんが好きで描けている間は、ぼくはぼくで「できること」を彼女にする。
そのあとは、全力で応援するだけだ。
作業の手伝いはしない。
だってぼくも不器用だし。
以上、niko専属プロデューサーのぴこつがお届けしました!
じゃあ、またね。
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