【あと520日】東京都港区に開園するプリスクールは認可外の立場から働き方を改革したい、という話。
こんにちは!2025年、港区に開園するインターナショナルプリスクール、Pikkas international preschoolの設立者ナカガワです。10月下旬になると街なかではたくさんハロウィンイベントが開催されていて、可愛い仮装をした子ども達を見かけると一緒に楽しい気持ちになります。我が家の2歳のプリンセスはここ半年ほどシンデレラのドレスばかり着ているので、むしろ普段着がコスチュームの彼女にとってはやっと時代が追いついた感覚でしょうか。
認可保育園と認可外保育施設
保育所の種類で、”認可”と”認可外”という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。保育所には大きく分けて”認可保育園”と呼ばれる施設と、”認可外保育施設”と呼ばれる施設が存在しています。響きだけだと”認可”のほうが良さそうという印象をお持ちの方も多いかもしれまん。
今回、プリスクール設立にあたり私は認可保育園ではなく認可外保育施設をつくるという選択をしました。もちろん認可保育園は区の予算を使うものなので新規参入事業者にとって敷居が高いことは大きいですが、その他にも認可外保育施設だからこそ『こども、親、教職員の三方よし』というピッカスのこだわりを自由に実現できることが多くあり、妥協したくない私に合っていると感じています。
今回のnoteでは認可外保育施設だからこそ“教職員”の心地よさ、働きやすさを実現しやすいと考える理由について書きました。教職員の働きやすさを実現することは子ども達への教育の質に直結すると確信しています。この記事を読んで、認可外保育施設の良さを感じてもらえたらいいなと思っています。
認可外保育施設とは
まず、認可外保育施設(以下:認可外)について。
ご家庭にとっての認可保育園(以下:認可園)との最も大きな違いは“保育料”だと思います。認可園の保育料は各家庭の住民税額によって計算されたものが区から徴収されるのに対し、認可外では各園が定めた保育料を直接ご家庭から頂きます。
また3歳から認可園では無償化の対象になりますが、その代わりに、認可外では現状、各家庭に対して自治体から保育料への差額助成金が給付されています。そして認可外は運営にあたり事業者が自治体から経費を補助されることはないため保育料が高額になってしまう傾向がありますが、その分手厚いサポートや個性的な特色を打ち出すことに力を入れている園が多くあります。
次に、認可外のほうが配置基準が緩く設定されています。必要な職員の数は同じですが、職員の三分の1以上が保育士や看護師などの資格保持者であれば良いこととなっています。そのため、日本の保育士資格を持たない外国人教職員を採用する必要のあるインターナショナルプリスクールの多くが、『認可外保育施設』という事業形態を取っています。一方で、認可園と比較して認可外のほうが多数の職員を配置している園が多い印象です。
こちらからは港区のウェブサイトで公表されている認可外の一覧を確認することができます。インターナショナルプリスクールだけではなく、認証保育所や託児施設、企業主導型、運動や海外の教育哲学に力を入れた園など、様々なコンセプトを持って社会のニーズを支える園が存在していることが分かります。
認可外のなかには”証明書交付を受けた施設”と”証明書交付を受けていない施設”の二通りがあり、”証明書交付を受けた施設”であれば、区からの保育料の助成がある、というのが一般的な考え方になります。
施設が証明書の交付を受けるためには、職員の数、避難経路の確保、採光や換気、面積、資格保持者の割合など“設置基準”と呼ばれる様々な基準をクリアする必要があります。また、運営開始後には実際の運営の様子を確認するため、区による立ち入り調査があります。認可外への参入のハードルは高くないぶん、利用者による品質の見極めはとても重要になります。一概には言えませんが、証明書の交付を受けているか、交付を受ける準備をしているかどうか、というのは認可外の品質を確認する上でひとつの指標となると言えると思います。
職員が心地よく学びを得ながら働くために
私は、カリキュラムを整えるだけではなく、子どもだけではなく親、教職員がともに心地よく学びを得ることのできる心地よい環境こそが子ども達にとって最適な学びの土壌だと考えています。そのため保育者がしっかり働きしっかり休むこと、ワークライフバランスを整えることの優先度は非常に高く捉えています。
認可園では、どんな課題に対しても国を挙げて足並みを揃えて進める必要があるのでひとつひとつの改善が大きなインパクトを生む一方で大変な時間がかかりますが、課題にすぐに着手できるのはフットワークの軽い認可外の強みだと考えています。特に教職員のために力を入れたいことは以下の3つです。
①職員の配置基準を整える
近年、保育所の保育士配置基準に問題があるという声がより大きくなってきています。配置基準とは、子どもの年齢ごとに定められた必要最低限な保育者の人数のことを言います。私自身、現場にいた頃は担任として35名の子どもたちを見ていたのですが、多すぎました・・。仕事が大変というだけではなくて、なかなか目が行き届かず気になる子どもに話しかけられないまま一日が終わるといった、歯がゆい思いをしていたことを覚えています。
今まさに認可園での配置基準についてもこども家庭庁での議論が進んでいて、これまで3歳児20名に対し一人の職員だったところを15名にすることで運営委託費に加算する案などがたたき台として出されているようです。
認可園では運営委託費をもとに経営を行っていくためなかなか園の裁量で人員配置を調整することは難しいのですが、ピッカスでは現行の配置基準を超える職員の配置を原則としていきます。
2歳児:5名
3歳児:12名
4歳児:15名
5歳児:15名
という上限を設定し、上限を超えないことを前提に施設の保育面積に合わせて細かく設定していきます。
ですが、現場を見てきた経験を踏まえて職員が多ければ多いほど良いという考えでもありません。適切な人数の質の高い保育者が子どもたちを見守る環境を整えていきます。
②テクノロジーを活用した取り組み
ピッカスではタブレットPCを利用し、ツールを活用した業務改善を実施していきます。保育業界でシェアNo.1のCODMON(コドモン)さんというツールがあり、こちらを導入するお話を進めています。最近では多くの園で導入されているツールで、保護者として利用されていてご存知の方もいらっしゃるかもしれません。こちらのサービスでは職員向けのラーニングツールも盛り込まれているとのことで、ツールを活用した学びを取り入れられることも楽しみのひとつです。
認可園でもコドモンの導入は進んでいますが、全てのスタッフに機器を貸与することが難しいために使い切れていない機能が多く、その点事業者の裁量ですぐに取り入れられるのは認可外の大きな利点だと感じています。
また、オンライン会議の実施や録画配信、コミュニケーションツールなど、スタッフと話し合いながら必要に応じて新しいツールを積極的に導入していくことを楽しみにしています。
③職員一人一人のキャリア支援と評価制度
保育業界では、保育者たちが評価やキャリアについて考える機会がまだまだ少ないのが実情だと思います。現場のプロフェッショナルとして活躍していきたい人、リーダーとして若手を育てていきたい人、結婚や育児を考えたい人、保育事務へ転向したい人や別の業界に挑戦したい人。ピッカスでは、一人ひとりがどのようなキャリアを築いていきたいと考えているのかを丁寧にヒアリングし、成長を支援していくことに力を注ぎます。一人ひとりの成長意欲(Growth mindset)を重要視していたマイクロソフトの人事本部で学んだことを活かしていきたいと思っています。
私自身の夢はいつか職員と海外研修に行くこと!スタッフ一人ひとりにも目標や夢を持って毎日の業務に取り組んでもらいたいと願っています。
多角的な働きかけが大切
認可保育園と言う立場から配置基準の見直しや働き方改革に力を入れておられる保育園も全国各地にたくさんあり、認可保育園向けのセミナーなどでもたくさんのことを学ばせてもらっています。ですがやっぱり現行の決まりや制度のなかで三方よしの環境を作るのはとても難しく、制度自体が徐々に良くなっていくために声をあげ続けていく必要があります。
待機児童があふれていた頃は認可に入れなかったから認可外という考え方が主流でしたが、子どもの数が劇的に減り続け待機児童が減ってきている今、『認可外』の役割はより良い幼児教育を提供すること、『認可』で拾いきれないニーズに応えることだと思っています。だからこそ、『認可外保育施設』という事業形態のフットワークの軽さを武器に保育業界での課題を解決する取り組みを実践していく形で、認可外の立場から声を上げ続けていきたいと思っています。
大切なのは、みんなそれぞれの立場から子どもにとってより良い環境のために行動し、その輪を少しずつ大きくしていくこと。
微力ではありますが、子ども達の教育に選択肢を増やす存在として、520日後、社会に貢献できる日が始まるのを心待ちにしています。