【あと580日】東京都港区に開園するプリスクールが取り入れる選択保育が面白い話。
こんにちは。2025年春、東京都港区にピッカス インターナショナル プリスクールを開園するナカガワです。当園では、子どもたちが自分で選択するちからを養う選択保育を取り入れていきます。聞きなれない言葉かもしれませんが、選択保育は選択制保育とも言われていて、私自身がアドラー心理学をベースにしたドイツにあるインターナショナルスクールで保育士をしていた際に実際に実践されていた手法なのですが、日本でも取り入れるメリットは大いにあると感じています。
選択保育とはどんな保育?
選択保育とは、子どもたち自身が今から何をして遊ぶかを選択する保育の手法です。保育者は保育室内をコーナーに分け、子どもたちにとって分かりやすく、遊びに集中しやすい環境を整えます。例えばブロック。おままごと。お絵描き。工作。各コーナーごとに定員を決めます。すでにある選択肢のなかから選ぶのではなく、新しい遊びを考えることもあります。
チェアサークルなどで子ども達が集まったあとに一人ずつ自分の遊びを決めていきます。決める順番は毎日変えるのがポイントです。定員を超えていたら子どもたちは違う遊びを選択します。定員を超えてしまったけれど遊びたい場合にはルールを決めて順番交代。違う遊びがしたくなったら片付けて別の遊びを選択します。
自由遊びや自由保育と言われる保育の手法と似ていると感じられると思いますが、選択すること、そして子どもたち自身が今の時間、誰と、何をしているかを自覚する、というプロセスをより大切にすることで、子どもたちの『自分でできた!』の経験を積む機会を増やし、判断力や自信につなげていくことを目指します。
先日、娘の保育園にお迎えに行ったときのことです。担任の先生が、娘と製作した絵具を半面に塗り半分に折って描くデカルコマニーで作った可愛いチョウチョの絵を見せてくださいました。『わ、かわいい絵を描いたんだね!』と娘に話しかけたときの返事が『ちがうよ、これしぇんしぇえが作ったやつだよ』で、一瞬その場に沈黙が流れました・・。
私も昔、同じような経験をさせてしまったことがあります。せっかく先生が時間をかけて準備をしてくださって、娘の手を取りながら、娘の意思を取り入れながら製作して下さった彼女の作品に違いないはずなのに、娘の達成感や実感が伴っていない。とてももったいないことです。実際の製作時の様子はわかりませんが、娘にとって自分でつくったと感じるために足りなかったものは何だったのでしょうか。
選択をすることが苦手な子どももいます。最初のうちはなかなか選べず、お友達が遊んでいる様子をじっと見ていたり先生のそばから離れない子どもも少しずつ選ぶという達成感を経験していきます。また3歳ではなかなかまだ難しかった子どもたちも、4歳になるにつれ徐々に”選んで遊ぶ”のリズムが整ってくるようになります。
選択保育はアドラー心理学を実践するドイツのインターナショナルスクールで取り入れられていた手法なのですが、保育でのアドラー心理学は一言で言うと『自立のために自分でできた!を大切にする考え方』と言えると思います。なので、子ども達自身が宣言して行動する、そして保育者が見守るという選択保育ととても相性が良いのだと思います。
ピッカスではアドラー心理学を始めとする様々な海外の教育哲学における保育手法を日本の環境に合うように組み合わせ、質の良い環境で子ども達を見守り育んでいきます。これからも海外の教育手法をどのように保育に取り入れていくのかをお伝えしていきたいと思います。
選択保育の注意点
子どもの判断を尊重するため、同じ製作物を必ず一人ひとつずつ完成させるのは難しい、という点には注意しておく必要があるかもしれません。
日本の幼稚園で働いていたとき、製作物は必ず一人ずつ完成させなければいけませんでした。そのため、製作が苦手でゆっくりな子どもは時には外遊びを諦め、給食を切り上げ、他のお友達が自由に遊んでいる横で時間をかけてひとり作品を完成させなければならず、本人はもちろんのこと保育者である私も心を痛めていました。彼が本当に好きな遊びはお外遊びだったのに。
製作物を必ず完成させなければいけない理由は子どものためではないのではないでしょうか。その子どもは違う遊びに没頭したいのかもしれません。違う遊びに没頭しているその姿を捉えることのほうがよほど意味のある保育だと考えています。
なんでも子どもの選択を尊重すれば良い?
それからもうひとつ、選択保育を実践するにあたって、ただ子ども達の選択に任せていれば良いというわけではありません。日々の子ども達の観察が重要になります。
例えばいつも漫然と同じ遊びを選択する子どもがいたとしたら、なぜその子どもがその遊びを選択しているのかに配慮する必要があるかもしれません。他の遊びは苦手だから、本当はあの遊びが良いけれどお友達が苦手だから、など、もしかしたら前向きではない理由なのかもしれません。その遊びを楽しめているのか、遊びこむことが出来ているのかを観察したり、遊びを発展させる働きかけを行ったり、そのほかの遊びにも興味を持つように声をかけることもあります。また、季節ごとの製作などを行う際には、一斉保育のように『今日はこれを作りますよ。』ではなく、『これを作りたい人?』から会話が始まっていきます。
自分のことを自分で決めて、自分が今何をしているのかを自覚する。選択する力だったり時間を管理する力、大人になって社会に出たときに大切な武器となる能力の基礎を培っていきます。